75 情報収集
1時間をかけてようやくリーキ総合管理基地に辿り着く。
管理基地は予想より遥かに大きかった。
レンガや木造だと勝手に思い込んでいたが、実際はコンクリートのような硬い素材で建てられていた。
パンプキンやキャロットはレンガや木造の建物だけだったため、この世界ではそれが当たり前だと思っていたけど、そうではないようだ。
門の前に立ち止まりマジマジと見ていたからか、リーキの市長シュヴァインさんが自慢げに管理基地について語りだす。
「珍しいかね? これは、この国でも有数の建築物で、特殊な建築法で建てられているのだ。名のある一流の魔術師たちを集め、最高の土魔法と技術によって建てることができる最新の魔法建築ぞ」
「……そうなんですね」
確かに設計自体は立派だが、最高の土魔法と技術かと聞かれると首を傾げてしまう。
造形は荒い部分が目立っているし、そもそも魔法で創っている割に強度が甘く見える。
どうせ魔法で創るなら、強化魔法や結界魔法、あとは再生魔法なんかも使って強固で、一切敵の侵入を許さず、破壊されても勝手に修復する建物にすればいいのにと思ってしまう。
「ユーリ様、今絶対に無茶苦茶なことを考えてましたね」
リリーが少し呆れのこもった目で見てくる。
「無茶苦茶なこと?」
「誰もがユーリ様基準で魔法を使えるわけではないということです」
「そ、そっか」
何となくリリーの圧が強くて、対抗するのはやめておくことにした。
怒ってるわけではなさそうだけど。
最近、訓練を厳しくしすぎたかな。
でも魔力を限界まで使うのは、魔力量の向上につながることだし。
弟子に嫌われたとしても、弟子のためを思えばってやつだ。
「ユーリくん、行こ」
「あ、うん」
みんながぞろぞろと管理基地の中へと入っていく。
セレーナに手を引かれて、俺もそれに続いた。
管理基地の中は想像通りというか、やはり豪華だった。
一階は行政施設としての役割があるためか、市民や職員が忙しなく行き交っている。
この感じは日本の役所の雰囲気と似ている気がした。
中央の階段を使い、3階までやって来る。
ここは宿泊施設になっているようで、俺たちもここを利用して良いとのことだ。
職員の女性に部屋を案内される。
最初、俺1人で1部屋、セレーナ、アカネ、リリーの3人で1部屋を案内された。
慌ててリリーが「ユーリ様と同じ部屋でお願いします!」とお願いすると、職員の女性に暖かい視線で微笑まれた。
リリーが男であると説明して誤解を解き、リリーと俺は同じ部屋になったが、職員の女性は最後まで半信半疑の様子だった。
王女様たちは市長との会談があるため市長室へと向かったが、俺たちは市長と話す必要がないため、とりあえず情報を探しにギルドへ向かうことにする。
ギルドは管理基地から数分歩いた場所にあった。
3階建てのこれまた大きい建物だ。
管理基地よりも装飾が少ないためか、やや素朴な印象を受ける。
しかし、造りは管理基地に劣らずしっかりしていて存在感がある。
人の流れに乗って、ギルドの中に入るとすごいことになっていた。
ギルドの中はどこを見ても人、人、人だらけで、騒がしいという次元を軽く超えている。
よく見ると、ギルドの中は冒険者だけではなく半分は一般の人が利用しているようだ。
「すごい活気ですね」
人の多さに息を呑むリリー。
「そうだな。キャロット支部もすごかったけど、リーキ支部はそれ以上だ」
さすが王都の次に大きな都市にギルドを構えているだけはある。
……感心ばかりしている状況じゃなかったな。まずはテーレの情報を探すか。
俺たちは4人で手分けをしてテーレに関係しそうな情報を集めることにした。
ギルド職員や掲示板、それに冒険者や一般利用者の人にも話を聞いた。
「ご注文は以上でよろしいですか?」
「はーい」
店員の言葉にセレーナが明るく返事をする。
俺たちは情報収集を終えて、ギルド近くにあったカフェ的な店で休憩することにした。
軽くお辞儀をして、店員はキッチンの方へ戻っていく。
それを見届けて、俺たちは集めた情報の共有を始める。
結果から言うとテーレに関する情報はまったくなかったが、魔皇教団についての情報はいくつか手に入れることができた。
まず、魔皇教団がリーキを拠点にしているのは間違いなさそうだ。
定期的に街に現れては堂々と布教をしていると、人の良さそうなおっちゃんが教えてくれた。
ただし、その根城までは明らかではないそうだ。
リーキの兵士も魔皇教団を捕まえようと目を光らせているようだが、捕まえるまでには至っていない。
そんな魔皇教団の根城だが、見つけるのはそこまで難しくはないと思う。
転移魔法と広範囲探索魔法を使って魔力が多い人が集まる場所を探せば、半日もかからないで見つけることはできるだろう。
問題はそこにテーレがいるかどうかだ。
テーレの魔力は覚えているが、リーキに潜伏しているかはまだわからない。
万が一いなかったとしたら、他の魔皇教団員に片っ端から聞いていくしかなさそうだ。
あとは魔皇教団のトップである教祖について少しだけわかった。
「教祖は『知の賢者』イリーガル……か」
「知の賢者ってなに?」
「それはですね」
セレーナの質問にリリーが答える。
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