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61 中央塔

 昨日のリリーは男の子(衝撃的な事実)から一晩が経ち、現在俺たちは冒険者ギルド・キャロット支部の三階の応接室に来ていた。応接室は以前来たときと同じ場所だ。


「そうですか」


 受付業務係長のゴードンさんは俺の話を聞いて、落ち着いてはいるが深刻な表情をしていた。


 俺は昨日の「転移師」テーレとの一戦や、巨花竜(ギガフラワードラゴン)のこと(俺たちにとって不都合がない部分)を報告した。


 行方不明となった先発の冒険者2組はミイラとなっていた。巨花竜に襲われたのだろう。


 装備など遺留品を持って帰り、ゴードンさんに渡してある。


 ちなみに巨花竜についてはテーレが転移させ、天神様が倒したことになっている。


「テーレ一行についてですが、以前から数件ほどテーレ一行に関する被害報告を受けていました。しかし、決定的な証拠がなく、動向注意のままになっておりました。これは我々の落ち度でございます。ユーリ様方に多大なご迷惑をおかけしたこと誠に申し訳ございません」


 ゴードンさんは席から立ち上がると深く謝罪した。


「いえ、ゴードンさんが悪いわけではないですから、頭を上げてください」


「そう言っていただけると我々も救われます。未だテーレの足取りは掴めていませんが、ユーリ様方に捕縛していただいたテーレの同行者2名から情報を吐かせ(聞き出し)ているところです。事件の詳細についても明るみにできるかと」


「は、はい。よかったです」


 一瞬、ゴードンさんから黒いオーラを感じたけど気のせいか……?


 ギルドには下手に反抗しないよう肝に命じておこう。


「ユーリ様、ご無礼だと承知の上で一つお願いしたいことがございます。もちろん、先の調査も含め報酬は出来る限りのものをご用意いたします」


「えーと、ひとまず内容を聞かせてもらえますか?」


「失礼いたしました。説明させていただきます」


 ゴードンさんにしては少し焦っているような話のもって行き方だった。頭を下げ、それから説明を始める。


 係長という立場で、ゴードンさんも色々と大変なんだろな。


「ユーリ様にお願いしたいことは、テーレの捜索です。我々だけでは「転移の魔書(テレポート・グリモア)」を持つテーレの捜索は厳しいと思われます。そこで、あのパンプキン支部のサンサイ支部長から太鼓判を押されるほどの魔術師でいらっしゃるユーリ様ならと、我々も期待を持ってお願いしたいのです」


「そ、そうですか」


 ここでサンサイ支部長を出すとは……ゴードンさんも抜け目がない。


 まさか、これもサンサイ支部長が裏で手回しをしているのか!? いや、さすがに……何で、にこやかになるの、ゴードンさん!


「それから我々、キャロット支部の支部長から言伝を預かっておりまして、テーレの件を受けていただけるのであればノルマを一時的に免除するとのことだそうです」


 それは大きいぞ。


 10日に1度とは言え、ギルドに行って依頼を受けるのは面倒だ。


 うん、テーレの件は俺としても何か()がありそうだと思っていたし、それに逃してしまったのは俺の落ち度だ。


〈この依頼を受けようと思うけど、みんないいか?〉


〈うん!〉


〈はい!〉


〈ん〉


 思念魔法でみんなに確認をとる。問題なさそうだ。


「わかりました。その依頼、受けます。俺たちがテーレを捕まえてきます」


「ありがとうございます。支部長にもそのようにお伝えします。ユーリ様、そしてお仲間の皆様もどうぞよろしくお願いいたします」


 ゴードンさんが立ち上がり、頭を下げる。


 俺たちもそれに合わせて立ち上がる。


「はい。それでは俺たちはこれで……」


「あぁ、そうでした。ユーリ様へ、行政局から中央塔にお越し下さるようにとの連絡がありました。盗賊の件についてとのことでした」


 盗賊……あ、王族の馬車を助けたときのか。


 何だろう? 盗賊はちゃんと引き渡したし……まぁ行ってみればわかるか。


「わかりました。この後、行ってみます」


「はい、その方がよろしいかと」



 俺たちはギルドを出て、同じく中央区の丁度中心に建つ中央塔に向かって歩く。


 ギルドから中央塔はそれほど離れていないため、すぐに辿り着くだろう。


 それにしても中央塔は高い。


 この都市の、どの建物よりも一番高い。


 ギルドが5階建てだけど、その2倍はある。


 まぁ、実際は屋根が3分の1くらいを占めているから、中は7階くらいだと思う。


「人がたくさんいるね」


「そうだね」


 セレーナが周りをキョロキョロ見ている。


 その動きに頬が緩みつつ同意する。


「同じ服を着た人が多いですね」


「行政局の人かな? 昨日の騒ぎのときも避難誘導していたけど、忙しそうだね」


 リリーが行政局員に反応する。


 行政局員はいわゆる軍服のような形の服をもう少しラフにしたものだ。


 全員、同じ落ち着いた橙色なのでわかりやすく、目立ちやすい。というか人参カラーだな。それに日本でいう救助隊に少し似ている……。


 みんなで喋りながら歩いていると、予想よりも早く中央塔に到着した。


 中央塔の外観は全体的に黒い。


 その黒さが威風堂々とした印象を持たせる。


 中に入ると、外とは打って変わって全面、真っ白だった。


 1階は敷地の半分以上がロビーのようになっていて、残りの半分は様々な掲示板が置かれていた。


 近くにあった掲示板にはこの都市の地図が描かれている。その隣の掲示板には区の単位で拡大された地図があった。


 他にも雇用募集の張り紙がたくさんある掲示板だったり、新聞のようなものがたくさん貼られた掲示板だったりがある。


 1階(ここ)は都市の情報が集まっている場所らしい。


 2階以降の情報が案内されている掲示板があったため、それを確認してから上の階に上がる。


 俺たちは3階まで上がった。


 2階は市民税などの支払い関係の階で、3階が通常受付窓口になっていたからだ。


 階段からすぐ近くの窓口に向かう。


「こんにちは。どのようなご用件でいらっしゃいましたか?」


 窓口のお姉さんが丁寧に挨拶をしてくれた。


「初級冒険者のユーリと言います。盗賊の件で来て欲しいとギルドで聞いたので、来たのですが……」


「少々お待ち下さい」


 窓口のお姉さんが席を離れる。


 それから数分して、お姉さんが窓口側ではなく俺たちのもとに戻ってきた。


「お待たせいたしました。特例(・・)初級冒険者ユーリ様、そしてお連れの方もどうぞこちらへ。市長室(・・・)にご案内いたします」


 え? 市長室……?

 読んで頂きありがとうございます!!


 2週間があっという間だ……(驚愕

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