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42 空の旅

 明け方。まだ辺りに暗さが残る中、俺たちは町の北門の前にいた。


 少しずつ空が明るくなるのを眺めながら、パンプキンでの出来事を思い起こす。


 岩龍や龍人と戦うという事件はあったが、初めて来た人族の町がパンプキンで良かった。


 もっと色々なところを見て回りたいとも思うけど、龍帝国がどれほど侵攻しているのかわからない。


 今回の件を報告した時、長も言っていた。



 ――「龍帝国の侵攻は予想よりも早く始まっているのかもしれん。今回は逃したが、次こそは龍帝国の者を捕らえて情報を聞き出す必要がある」


「はい」


「それと、今回のことでお主たちの情報が奴らに伝わったのは間違いない。十分に警戒をするのじゃ」


「はい」――



 俺たちの情報は龍帝国に伝わっているのは確実。そう考えると、邪魔をする俺たちを排除しに来る可能性もある。


 もちろん、来る敵は返り討ちにして捕らえるつもりだ。しかし、一つの町に留まっていたら、その町まで危険に晒すことになる。


 そうなると、尚更のことパンプキンに留まってはいられない。


 すべてが終わったらまたここに寄ってみよう。


「もう出発するのかい?」


 そろそろ出発しようというタイミングで、見送りに来てくれたサンサイ支部長が俺たちに声をかける。


 他にもナータさんや、ガイドさんもいる。


「はい」


「支部長会議で君の活躍を聞けることを楽しみにしてるよ?」


「それはどういう意味ですかっ」


「そのままの意味さ」


 この人、俺が何かやらかすと思ってるよ!


 俺って問題行動よりも、いいことしかしてないと思うんだけど……。


「キャロットでも頑張ってよ」


 いつものように目を細め、ニコニコと笑ってサンサイ支部長が言う。


「はい!」


 視線を移すと、ガイドさんと目が合った。


「ユーリ! 達者でな!」


「はいっ、ガイドさんも!」


「おうっ」


 ガイドさんと握手を交わす。


 男の別れって感じがして、なんか新鮮だ。


 隣を見ると、リリーとナータさんが話していた。


「無理だけはしないのよ?」


「はい!」


「それと、危ないこともダメ」


「はい!」


「時々、お手紙をくれると嬉しいわ」


「はい?」


「気をつけて行ってらっしゃい」


「はいっ、行ってきます!」


 少し寂しそうなナータさんに別れを告げ、俺のもとへ来るリリー。


 そんな光景を見て、集落を出発したときのことを思い出した。


 待っていてくれる人がいるっていうのは幸せなことだよね。


「リリーくんのこと、よろしくお願いします」


「はい!」


 俺はナータさんの目を見てしっかり答える。


 一拍おいて、ナータさんは安心したように笑顔に変わった。


「それじゃ、そろそろ行きます」


「ありがとうございましたっ。 またお会いしましょう!」


「…………また」


「僕、頑張ります! 立派な魔術師になって必ずまた戻ってきますから!」


 俺の声かけの後、セレーナ、アカネ、リリーの順で挨拶をしていく。


「また来ます」


「はいはーい」


「おう!」


「いつでもお待ちしております」


 俺たちは北門を抜け、次の町へ向けて歩き始めた。


 ***


 次の目的地はキャロットという町だ。規模でいうと正確には『都市』に分類されるらしい。


 パンプキンも大きな町だったが、キャロットはその数倍の規模とナータさんが言っていた。


 キャロットまでは馬車で10日程度かかるらしく、転移魔法が使えれば一瞬なのだが、残念ながら転移魔法の欠点として一度訪れた場所でなければ長距離の転移はできない。


 そのため、今回は飛翔魔法などを使って空から高速で移動することになった。


「た、高いですぅぅううう!」


「慣れるよ」


 案の定、リリーはあまりの高さにビビりまくっていた。


 他の面々はというと。


「気持ちいいね! 久しぶりに飛んだかも〜」


「……」


 セレーナは伸び伸びとリラックスしている様子。はしゃいではいないが、アカネも楽しそうだ。


「わたしもユーリくんみたいに飛翔魔法を上手く使えるようになりたいな」


「セレーナは飛龍系の龍人だから、練習すればすぐに俺よりも上手くなるよ」


「そうかな?」


「そうだよ」


「うふふ、わたし頑張るね! 上手になったら……また一緒に飛んでくれる?」


 セレーナの上目遣いのこうげき!


 こうかはばつぐんだ!


 うはっ!


 そんなの、そんなの……


「痛っ!? アカネ……さん?」


「……ふん」


 なぜ殴るのでしょうか?


 いつもはわかるのに、今は相棒の気持ちがわかりません!


「うぅ……あっ……や、やっぱり怖い……」


 リリーは両手で目を隠し、時々下をチラチラ見てはまた隠すというのを繰り返していた。


「アカネちゃんっ、ユーリくんを殴っちゃダメだよ!」


「……関係ない」


「関係あるよ! わたしはユーリくんの妻だもん!」


「(イラッ)……私はユーリの相棒(パートナー)だけど?」


「ぱ、パートナーってどういう意味? ユーリくん!」


 えっ!? まさかの俺!?


 なんかアカネまで俺をジッと見てるよ……。


 これ、何を答えても大変なことになりそうだよね?


 助けて下さい、龍神様!


 龍帝国を止める前に、妻と相棒にボロボロにされてしまいます。


「も、もう無理……」


「リリー!?」


「リリーちゃん!?」


 近寄ると、リリーは気を失っていた。


 あまりの恐怖に耐えきれなくなったのだろう。


 やっぱり空の旅はまだリリーには早かったかな?


 気を失っても、飛翔魔法を使っているのは俺なので墜落する心配はないけど……。


「とりあえず一旦地上で休憩しよう」


「うん」


「……ん」


 リリーが気を失うというハプニングが起きたため、俺たちの空の旅はわずか数分で終了するのであった。

 読んで頂きありがとうございます!!


 今回はパンプキンから出発&空の旅でした。

 もう少しパンプキンで町イベントやりたい感じもありましたが、それは次の都市で行えたらなと思います!

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