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38 岩龍

 龍付近の上空にひとまず転移。


 すぐさま飛翔魔法を全員に使う。


「え、えぇえええ!? 浮いてる!?」


 リリーの叫び声をスルーして、龍を確認する。


 問題の龍は俺たちのすぐ下で暴れていた。


 鋼色のゴツゴツとした鎧のような大きな鱗を纏うその龍は――岩龍と呼ばれる龍だった。


 翼はないが、建物がオブジェのように見えるほど大きな体躯と、巨樹のような太い四肢と尻尾が印象的だ。


 岩龍は岩石地帯をナワバリにしていて、こちらから接触しなければ攻撃してこない比較的穏やかな龍種である。


 しかし、目前の岩龍は町の建物を破壊し、地形すら変えようとしていた。


 紅く光る眼がこちらを睨む。


「ウ゛ガァアアア!!!!」


 岩龍が重くのしかかるような咆哮を放つ。


 結界魔法を使って俺たちを中心に結界を1つ、これ以上被害を広げないために岩龍を中心に結界を1つ展開する。


 そして、結界内にいるまだ避難できていない人を転移魔法で結界外に転移させていく。


 ここまで数秒。


 岩龍がこちらへ大きく口を開く。


 龍種の種族魔法『ドラゴンブレス』だ。


 この魔法は高濃度の魔力を口内で圧縮し、それを前方に撃ち出すという言ってしまえば威力だけバカ高い脳筋魔法だ。


 俺も迷宮のゴーレム戦で、この威力を再現したくてオリジナルの『ドラゴンブレス』を使ったことがあるけど、アカネに怒られたな。


「ゆ、ユーリ様!? 攻撃してきそうですよ!?」


「大丈夫だよ、リリーちゃん。ユーリくんはすごく強いんだから!」


 セレーナの言葉に苦笑しつつ、俺は岩龍から目を逸らさない。


 期待に応えないとね。


 岩龍の口内から爆発寸前の魔力を感じる。そしてそれは次の瞬間、俺たちに向かって放たれた。


 高濃度の魔力を圧縮した青黒い光線は、一直線に加速しながら迫る。


 俺は右手を突き出し、3つの(・・・)魔法陣を展開する。


「そっくりそのままお返しするぞ」


 ドラゴンブレスが結界に届く直前に、片方の転移魔法陣がそれを遮り、残るもう片方の転移魔法陣が岩龍の眼前に現れる。


 岩龍は自ら放ったドラゴンブレスをゼロ距離で受けた。


 空気が震えるほどの爆発音が一帯に広がる。


 岩龍付近の建物が吹き飛び、地面以外何も残らない。


 結界を張ったことが功を奏し、被害は結界内のみで済んだ。


「やっぱりアレだけじゃダメか」


 舞い上がっていた砂塵が風で流れて視界が戻ると、そこには無傷とまではいかないがダメージを感じさせない岩龍が変わらずこちらを睨んでいた。


 さすがと言うべきか、龍種の中でもトップクラスの頑丈さだ。


 岩龍が再び口を開ける。


 またドラゴンブレスか?


 龍種は知性が高いと言われている。その龍種が通用しない攻撃を二度も繰り返すというのは考えにくい。


 それとも、それほど錯乱しているってことか?


 まぁ、そもそも攻撃させるつもりもないけど。


 念のために短縮詠唱をする。


「重力よ、押さえつけろ」


 岩龍の真下に展開された重力魔法の魔法陣が発動する。


 重力魔法によって岩龍の巨体が地面へと引き寄せられる。しかし、それでも岩龍は太い四肢で必死に抵抗する。


 だが、重力魔法の力はまだまだ止まらない。


 怒りから咆えようとするが、それすら岩龍にはままならない。


 地面が沈むほど重力は増し、ついに岩龍は崩れた。


 頭、腹、手足、尻尾、ほぼ全身を地面に張り付ける。


 ただ、紅く光る眼だけは未だ怒りを込めてこちらを睨んでいた。


 俺たちはまだ壊れていない近くの建物の上に降り立つ。


「セレーナたちはここで待機。アカネ、任せた」


「んっ」


「ユーリくん、気をつけてね」


「うん」


 戦闘中は緊張していたセレーナたちも今は余裕があるように見える。


 リリーは放心状態って感じだけど。


 セレーナたちの結界魔法の結界を強める。ついでに強化魔法を付与魔法で付与して、二重の意味で強化した。


 それから俺は問題の岩龍の頭付近へと近づく。


 改めて外見と魔力の両面を観察する。


 外見的なダメージは無いに等しい。本当に頑丈な鱗をしている。


 この鱗で装備とか作ったら中々の防御力になりそうだな。


 と、余計な思考はさっさと切り替えて、魔力的な面も見ていく。


 今回の岩龍の暴走について俺の中で1つの推測があった。


 そもそも誰にも気付かれず町へ侵入することが何故できたのか。岩龍は空を飛べない。つまり上空からの侵入はできない。


 それと、岩龍は転移、空間系統の魔法を使えない。


 そうなると、転移もしくは空間系統の魔法を使った第三者(・・・)がいる。


 岩龍と目が合う。紅く光る眼は凶暴的で狂気的だと感じる。


 それにこの凶暴性、闇魔法か幻惑魔法の類いで精神を操作されているかもしれない。軽く見たところ魔力の流れを微かに感じる。


 この岩龍の暴走は第三者によって意図的に起こされた、というのが俺の推測だ。


〈ユーリ〉


 アカネから思念魔法が届く。


 その声には緊張感があった。


〈うん、わかってる〉


 俺は落ち着いた声音で答える。


 アカネが伝えようとしていたのは、岩龍の真上に発生した巨大な魔力の流れだ。


 この魔力の流れ……空間魔法か。


〈アカネ、戦闘準備〉


〈……ん〉


 後方でアカネが獣化するのがわかる。


 それと同時に岩龍の真上に発生した魔法が発動。禍々しい黒色の渦が視覚化し、空間がつながる。


 黒色の渦から、二本の角と翼、(・・・・・・・)尻尾を生やした人間(・・・・・・・・・)が1人現れた。

 読んで頂きありがとうございます!!


 本日中に更新できました(吐血)

 また頑張って書くぞ……っ!

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