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22 告白

 俺はある重大な問題に直面していた。


 結婚式。


 終わりなき森に入る前、あの夜月明かりの下で約束した。


『約束する。絶対帰ってきて、結婚しよう』



 というか婚約ってまだ有効だよね?


 先延ばしにし過ぎてそんな約束は忘れたわってならないよね?

 

 セレーナの態度が変わらないというか、自然な感じ過ぎてわからなくなる。


 いや、そうじゃない。


 結婚(カタチ)が大切なわけじゃない。


 セレーナを幸せにすることが1番だろ。


 何があっても守るって決めたんだ。



 だけどやっぱり結婚したいし、ずっと一緒にいたい。


 好きな人と結婚するって特別なことだと思うんだ。


 カタチじゃないってわかっていてもそれを求めてしまうのは、まだ俺は過去に囚われているのかもしれない。


 まぁ今はそんなことどうでもいいんだ。


 それよりもセレーナに伝えないといけないことがある。結婚するためにも。


 調査班のこと、そして――転生者であることを。


 ***


 試験から3日が経った。


 朝の鍛錬も終えて朝食を作り、母さんと俺とアカネの3人で食べる。そして、母さんは武龍団の仕事があるため先に家を出る。


 なんだか最近、この生活が当たり前のように感じるようになってきた。いや、別にそれでいいのか。


 まぁ森とのギャップがあるのは確かだけど。


 今日はセレーナの魔法の練習に付き合うことになっている。


 アカネはセレーナとの練習を聞くと決まって付いてくるのだが(まぁそれ以外でも大抵付いてくるが)今日は珍しく師匠に用があるらしい。


 あ、ちなみに師匠は集落を適当にぶらついている。


 俺の魔力を利用して人化しているため、魔力が届く範囲なら離れていても問題ない。まぁ集落全体なら余裕で範囲内なので、その点でも問題はない。


 ということで、アカネと師匠がいない今日がセレーナに俺のことを打ち明ける絶好のチャンスなんだ。


 俺は手早く支度を済ませる。と言っても空間魔法で着替えも一瞬なんだけどね。


 待ち合わせ場所である練習場へ行く。


 練習場と言っても集落近くの森の中にある少し開けた場所で、端から端が大股5、6歩ほどしかない。あとは大小の的が1つずつあるくらいだ。


 セレーナはまだ来てない、ね。


 俺は土魔法を使い適当なところにベンチをつくり、そこに腰掛ける。


 それから数分が経ちセレーナが練習場に来た。今日も片手には大きなカゴをぶら下げている。


 カゴを受け取り、新たに土魔法でテーブルをつくってから空間魔法で取り出した布をサッとかける。その上にカゴを置く。


「何でユーリくんは詠唱も無しに、いつもそんなに早く魔法が使えるの?」


 俺が使った一連の魔法に対し、セレーナは疑問でいっぱいっと言った表情だ。


「たくさん魔法を使うと体が魔法を覚えるようになる。つまりは無意識でも魔法を使えるようになるってことなんだけど」


「たくさんってどれくらい?」


「数百万、数千万とかかなぁ」


「……すうひゃくまん?」


「まぁ数えきれないくらいってことだよ」


 セレーナはクイズの正解を聞いても納得できない時のような不満な顔をしている。


「それと詠唱っていうのは魔法を使うための補助であって絶対に必要なものではないんだ」


「でも私は詠唱しないと魔法を使えないよ?」


「それはまだ魔法それぞれにある魔力の流れを掴みきれてないからだと思うよ」


 セレーナは頷いて続きを求める。


「前にも話したかもしれないけど、魔法は魔力・魔力の流れ・魔法陣の3つが揃って初めて魔法として成立するんだ。逆に言えばその3つだけで魔法は発動する」


 こうやって、と俺は実演する。


 掌を宙に向け、わかりやすく魔力の流れを強調しながら魔法陣を展開する。


 具現化した魔力の流れは水路を流れるように迷いなく魔法陣を描いていく。


 掌より少し大きい魔法陣が完成すると、そこからひんやりとした空気を感じる。


 直後、魔法陣から一輪の氷の薔薇が現れた。


 目をキラキラさせたセレーナに俺が視線で促すと、おずおずとその氷の薔薇をセレーナが掴む。


 より一層、目を輝かせたセレーナはしばらく見つめてうっとりとした表情していた。


「どう? 無詠唱の原理は理解できた?」


「この薔薇、すごく綺麗!」


「そ、そうだね」


 ずっこけそうになる気持ちを抑えて、俺は笑顔で答える。


 そっとしておいたら、このままずっと薔薇を見続けていそうなセレーナに内心、そんなに気に入ったのかと少し驚く。そして微笑ましい気持ちになる。


 ただ、このまま見ているだけでは今日の目的は果たせないのでセレーナに声をかける。


「それじゃ魔法の練習を始めようか」


「はい! ……あ、でも程々にね!!」


 釘を刺された俺は苦笑いで誤魔化すのであった……。


 ***


「よし、最後!」


「水よ!」『ウォーターアロー』


 セレーナがそう言って両手を突き出すように構えると、その目の前に魔法陣が描かれる。


 魔法陣を展開する時間は最初に比べ大幅に速くなった。これなら実戦でも使えると思えるくらいに……まぁセレーナを戦わせたくはないのだけど。


 蒼く輝く魔法陣から5本の水の矢が飛び出す。


 水の矢は大きい方の的に向かって真っ直ぐ進む。


 まず1本目の矢が的の右上に突き刺さり、続けて2本、3本とその下に突き刺さる。4本目は中心より少し上に刺さる。


 そして5本目。


「真ん中に刺さった! ユーリくん、真ん中に刺さったよ!」


「よくできたね」


 喜ぶセレーナの頭を軽く撫でる。


 空を一瞬見上げると太陽は頂点より少し落ちていた。


 だいたい3時間くらい練習していたのか。


 そう考えると、この短時間でセレーナはよく頑張った。


 詠唱短縮、魔法陣の展開速度の向上、魔法のコントロールなど、成果は予想以上だ。


 確かに水魔法はセレーナの最適性魔法だが、それでもこの成長はすごい。


 セレーナには魔術師の才がある。これからが楽しみだ。


「フフフフフ」


「ゆ、ユーリくん……? どうしたの?」


「セレーナの成長が俺も嬉しくて」


「へへ、そっかぁ」


 ますます嬉しそうに顔を緩ませるセレーナ。


 ヤバイ! 何だ、この笑顔!? 可愛いすぎる!!


 近距離で放たれた一撃必殺のスマイルに、俺は顔が熱くなっていることを悟られないために話題を変える。


「そ、そろそろお昼にしようか」


「そうだね!」


 愛らしくセレーナはにこやかに答えるのであった。


 ***


「ごちそうさまでした」


「はーい」


 大量にあったお弁当の殆どを食べた俺は、お腹をさすりながらくつろぐ。


 その姿を見てニコニコしながらセレーナはお弁当を片付けている。


 セレーナの料理の腕がまた一段と上手くなっている気がする。


 そんなことを考えまったりとした空気を楽しんでいると、急に何かを忘れているような気持ちに襲われる。


 何だっけ?


 俺は何気なくセレーナの顔を見る。


 目があったセレーナがどうしたの? という表情で首を傾げる。


 可愛い。


 いや、そうじゃないか。


 セレーナに………………あ。


 思い出しました。


 今日の重大な目的。


 セレーナに調査班、転生者のことを話すという重大な目的を――。


 魔法の練習、お弁当ですっかり頭の片隅に追いやられていた……。


 大丈夫だ! まだ間に合う。


 俺は気持ちを切り替える。

 読んで頂きありがとうござます!!


 何も報告なく更新を停止してしまい申し訳ありません!

 実はタチの悪い風邪にかかり、入院にまで至るという作者もびっくりなことがありました。そのため更新ができる状況ではなかったのです。

 今は元気です。

 気合いでなんとかしろよ、というご意見もあるかもしれませんが回復優先にさせて頂きました。


 これからまた執筆に勤しみたいと思います!

 お付き合い頂けたら幸いです。

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