表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/197

サイドストーリー10 宣戦布告

 何、あの腑抜けたユーリの顔!


 アカネの心は荒れに荒れていた。


 ***


 目を覚ます。大量の陽の光が森を照らし、あまりの眩しさに目を再び閉じてしまう。


 ゆっくりと目を開き、眩しさに目が慣れてきたところで私は下で寝ているユーリを見る。


 ぐっすり寝てる。


 その姿を確認して何となく安堵する。


 それと同時にふと、あることを思い出す。


 ……ユーリ約束してた、よね。


 いくら好ましくないユーリの婚約者(おんな)と言えど、ユーリに約束を破らせるのは使い魔としてダメだと思いユーリを起こす。


 起きたら直ぐに転移すると予想できたため影に潜り込んでおく。


 転移後、わずか数秒で始まった2人の世界(イチャイチャ)に思わず魔法を撃ち込んでやろうかと思った。


 落ち着け、私。


 何故こんなにもイライラとするのか、そんなのはどうでもいいと2人のやり取りをただ影から見つめる。


 あ、手を繋いだ。


 2人の手がギュッと結ばれるほど私の胸もギュッと締め付けられるように感じる。


 何故? わからない。


 苦しさから逃れるため私は目を背けるしかなかった。




 しばらく私はぼーっと影から見える外の景色を眺めていた。


 私とユーリがいた森よりもずっと明るく穏やかな世界。


 この世界はきっと平和なのだろう。


 少なくとも私にはそう思える。


 それは悪いことではないはずなのに、喜ばしさよりも寂しさを感じた。


 ユーリならこの気持ちがわかる……?


 そんな問いを今はそっと閉まっておく。


 景色が一転して目を見張るほどの色鮮やかな花々で埋め尽くされた場所が映し出される。


 綺麗……。


 こんなにも綺麗な花畑は見たことがなかった。


 私が花畑に魅了されているとユーリが空間魔法を使って大きな布を取り出していた。


 そう言えば、お昼にするとか言ってたような。


 2人の会話を聞いていると突然、ユーリが私の名前を出した。


『アカネも一緒にいいかな?』


 驚いて思わず肩をビクッとさせてしまう。


 私の名前が出てくるなんて思ってなかった。


『もちろんっ』


 私は再び驚いた。


 そして何故、という疑問がすぐに浮かび上がる。


 私は邪魔なはず……。


 よくわからない気持ちのままユーリの顔を見てみると、さっきまでの感情はどこにいったのか怒りが急速に湧き上がる。


 何、あの腑抜けたユーリの顔!


 毛を逆立てながら私はいつの間にか影から飛び出ていた。


 しかし外に出てから急に冷静になった私はどんな顔をして行けばいいのかわからなくなり、ユーリの背にひとまず隠れる。


 そしてユーリの背を掴み、ゆっくりと目の前にいる要注意人物を覗き見る。


「アカネちゃん、こんにちは」


 悪意のカケラもない明るい笑顔を、確かセレーナとか言う人は私に向ける。


 これじゃ私が臆病者みたい……。


 それはすごく嫌な気がした。


「一緒にご飯食べよ?」


 セレーナが続けて言った。


 余裕ってこと?


 私は今までにないくらい激しく燃える感情の昂りを感じた。


 ここで逃げたら私の負け。ユーリの使い魔に負けは許されない。


 私の信条が新たな戦いへと駆り立てる。


「……ん」


 負けない。


 私は『隣は譲らない(せんせんふこく)』という意味を込めてユーリの真横に座る。


「じゃあ、改めて――いただきます!」


「いただきます」「……いただきます」




 今この時、女の戦いの火蓋が切られたことを幸か不幸かユーリは知らないのであった。

 読んで頂きありがとうございます!!


 物語には直接的な影響はないのですが、書きたくなってしまったので書いちゃいました!

 正ヒロインという名のラスbo……げふん、げふん。

 セレーナのお話もまた書きたいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ