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サイドストーリー9 茜色の乙女

「はぁ……はぁ……」


 走って逃げちゃったけど変に思われてないよね。


 私は修行期間の拠点としてユーリが建てた家まで走ってくると、お気に入りの場所である屋根の上まで登って座る。


 改めて今着ている服を見てユーリの言葉を思い出す。


『すごく可愛いよ』


 ユーリの声が頭の中を反響して目がぐるぐる回ってきてしまう。


 全身が暑くなって、顔はもう茹で上がっているようだ。


 私は顔を左右に振って頭の中からユーリの言葉を追い出す。


「本当に……可愛いのかな」


 私はポツリと呟く。


 ユーリに『可愛い』と言われると嬉しい。


 どんなに嫌なことがあっても元気になれる。


 もっと『可愛い』になりたいと思う。


 でも、ユーリの『可愛い』はどんな可愛いなのか気になる時もある。


 花を見る時と同じ可愛い?


 使い魔として可愛い?


 家族だから可愛い?


 それとも……。


 再び私は顔を横に振り浮ついた気持ちを追い出す。


 時々ユーリと話していると恥ずかしくなって、目が合わせられなくなる。


 でもユーリが側にいないと不安になって、うろうろ探してしまう。


 気がつけば私の中心にはユーリがいる。


 どんなに美味しいお肉よりも、どんなに楽しいことよりも、ユーリの側にいることが1番だと言える。


「それって家族だからなのかな……」


 最近の私はそんなことをよく考えてしまう。


 それもこれもユーリが可愛いってばかり言うからだ。


「きっとユーリは全然気にしてない……」


「何を?」


「きゃッ!」


 突然現れたユーリに驚いて私はバランスを崩す。


 倒れ落ちそうになった私をユーリが腕を掴んで引き寄せる。私がユーリに抱きついているような状態だ。


 ユーリの匂いに包み込まれていくような感覚と、状況を理解しようとすればするほど顔が暑くなってくる不思議な現象が私の身に起きている。


「大丈夫か?」


 大丈夫なわけない!


 私は素早くユーリから離れ屋根に座り直す。


 平常心を装って私は半ば強引に話を進める。


「ど、どうしたの?」


「あ、いや、アカネが準備できたか見に来たんだけど……まだ無理そうか?」


「……大丈夫」


 そう、いつも通り少し素っ気ないくらいで受け答えすれば何も問題ない。


 突然現れたくらいで動揺する必要はないんだ。


「よし、なら行くか……ん、髪がボサボサしてるぞ」


 ユーリは慣れた手つきで私の髪を直す。


 髪に伝わる優しい指の動きがこそばゆいのに、でも心地よく感じる。


 やっぱりユーリはずるい。


 私を変な気持ちにさせる。


 だから私も仕返し(・・・)してやる。


 とびっきりの笑顔でお礼をしなくちゃね。




『ありがとっ』




 ユーリは一瞬目を見開いてから視線をすぐに逸らすと、顔を赤くしてわかりやすいくらい動揺している。


「あ、当たり前だろ。マスターなんだから」


「んっ」


 私が笑顔を見せるとユーリは照れる。


 それがどんな理由でそうなるのかはわからないけど、これは私のとっておき。


 だから特別な時にしか使わない。


 今回は特別。


 ユーリがずるいから。


「ふふっ」


「なんだよ、アカネ」


「何でもない」




 読んで頂きありがとうございます!!


 すみません!

 3章はもう少し待って下さい!


 今回は2章エピローグの続きみたいな感じです。

 アカネさん視点で書きました。


 次回は最低でも2週間以内に更新できるように頑張ります……。

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