蒸留と楽市楽座
そうだ蒸留しよう!と思いついて、リバーシなどを売って作り上げた金を使って作らせた蒸留装置が子爵家の工房に届いた。
「クリス様の説明で理論は理解できました。物質の沸点の差を利用されるのですね?」
「そのとおりであるユリス君! まあ見たまえ!」
と俺は意気揚々と作業に取り掛かった。
蒸留装置を使う。
「蒸留酒を作る予定だったんですが、酒を手に入れられなかったので香水を作ります」
といい、摘んでおいたミントの香りがする草を潰し蒸留装置に入れ加熱し、出てきた液体の匂いをかがせる。
「すごいですね。匂いはキツイけどいい匂いがしますね。これだけ低コストで香水が作れるとは。これならば原料を隠して貴族に高値で売ることができますね」
中世ファンタジーの世界に良く似ており、あまり石鹸が浸透してなく風呂に入る文化がないので、香水は非常に厚遇されているのだ。
俺? そら、毎日沸かして入ってるよ。金はかかるけど貴族だからね。特権だよね。まあ、俺が沸かした風呂にはユリスが先に入ってて後に入ったことしか無いんだけどね……
ともかく、この工房の先祖代々働いてきている信頼できる職人に蒸留技術を秘匿するように金を握らせ蒸留酒と香水の製造を任せた。
その後、蒸留酒と香水はサザビー商会を通しての取引で莫大な利益を産んだ。
☆☆☆☆☆☆
人が足りねえ。金も足りねえ。
こういう時は楽市楽座と関所撤廃をしようとユリスに言った。
「なるほど。理論はわかりましたが、関所撤廃させるとしても売り上げから税を納めさせるには、売り上げが正確かどうか調べられる仕組みと判断できる人間が必要です。まあ、確かに人口は増えるでしょうが、その分治安が悪化してしまいます。この交易都市は3つの大貴族領の流通の場であるのに、大貴族の御用商会の不正を追求することができるでしょうか? また、治安が悪化して、ここでの交易を見つめ直す動きをされてしまえば、この子爵領はおしまいですよ」
た、たしかに……
「まあ、幸いなことに3つの大貴族の実力は拮抗してますので、不正をすれば他の2つの貴族が黙っていないでしょうから、治安の維持さえなんとかなれば実現可能かもしれませんね」
「なんだ、それなら簡単だよ! 我が家の私兵30人に治安の維持をさせよう。ユリス、従士長のマクベスを呼んできてくれないか!」
「そこまでいうのならばそうしますが、私はお止めしましたからね?」
「?、大丈夫大丈夫! 毎日ユリスの言った訓練をこなしてるうちの兵士達なら余裕っしょ」
ということで、ユリスが執務室から出て行くとすぐにノックの音がなった。
「入っていいよ!」
ドアが開き、金髪でロン毛のイケメンであるが顔に似合わず身体は筋肉で大きく、尚且つ傷が節々で目立った男がいた。
「従士長マクベス参りました! 今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ひとつ、頼みごとがあるんだ」
といって俺は楽市楽座と関所撤廃、そしてそれに伴う治安の維持を説明した。
「なるほど。かしこまりました。しかし、治安の維持をしていたらユリス様の訓練を続けることはできないのですが……」
「そうか、では訓練は治安維持の番と訓練の番で2つに分けて行ってくれ」
「ということは訓練はこれから今までの半分でいいと?」
どこか、期待したように見てくる。
「まあ、自然とそうなるな」
「よっしゃああああああああ!!!!」
お、おう。そんなに喜ぶなんて流石ユリスの訓練だな…俺もその気持ちすごくわかるよ。
「はっ!? 取り乱しました! それではこのことを伝えに行って参ります!」
とスキップしながら執務室から出て行った。