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アリスと交渉3

 なにがそんなに嫌なんだよ。


「いや、本当に頼むよ」


「なんで私がクリス達のデートを命令しなきゃならないのよ!」


「はあ? なんでデート?」


 どこから出てきたそんな単語。何か盛大な誤解をしているようだ。


「なあ、アリス何か勘違いをしてないか?」


「してないわよ! あ、あのミストが相手だとしても私は絶対に負けないから!」


 あのミストってどのミストだよ。ミストの何に勝とうとしているんだよ。


 それに、絶対勘違いしてるよな。でも、なにを勘違いしているかわからない。

 とりあえず、ミストの助けがないと俺が危ないことを伝えよう。


「頼むよ、アリス本当にお願い。アリスにサインもらわないと滅びるんだよ」


「滅んじゃうほど好きなの⁉ 流石に大げさすぎない⁉」


「いや、好きじゃないけど、滅ぶのは有り得る話だ」


 むしろ、ミストは嫌いだ。だって怖いし。


「へ? 好きじゃないの?」


 アリスがさっきまでの熱はどこへ行ったやら惚けた声を出した。

 一体何に勘違いしていたのだろうか。アリスとミストが話しているところは見たことないが、一応口止めしておこう。


「まあな。言うなよ」


「あんなに可愛いのに?」


 アリスが上目遣いで訝しそうに見つめてきた。


 見た目だけはね。本当に見た目だけはね。ちなみに、それはお前も同じだアリス。王女やめて中身入れ替えて出直してきてくれ。割とマジで。


「ああ、全然。中身の方を重視する派だから」


「そ、そうなの?じ、じゃあ私は?」


 アリスがどこか期待するように尋ねてきた。


「俺、中身の方を重視する派だから」


「そうなんだ。えへへへ」


 アリスは赤くなった頬に手を当てて口をにへらとだらしなく開けた。


 おい、アリス。なんだその反応。自己評価どうなってるんだよ……。

 まあでも、機嫌が直ったのは良いことだ。もう一度サインをせびれば、くれるかもしれない。


「まあ、そう言うわけだからサインをください」


「仕方ないわね! でも条件があるわ!」


 アリスはさっきとは打って変わって快く引き受けたが、代わりに要求もしてきた。


「条件?」


「うん! ちょっと怖いけど、ミストが行くそのタイミングに私も混ぜなさい!」


「ええ……」


 俺はあまりにも面倒くさいアリスの提案に、不満げな声を上げてしまった


「なんでよ⁉」。


 いやだって、ミストだけでも面倒なのにアリスまで来るとなると怠くて仕方ない。それに、周りから王家と仲良くしていると思われても面倒だ。


「この条件じゃないと絶対にサイン書かないから!」


 アリスが腕を組んで外方を向いた。何が何でもこの条件でしか受け入れないという断固たる意思を感じる。

 アリスには来て欲しくないが、下手なことを言って気が変わられても嫌なので、仕方ないか。


「わかったよ。でも、王女が俺の領地に来るのは騒ぎになるからお忍びで変装してきてくれ」


「うん! クリスと旅行かぁ。ミスト怖いけど。楽しみだなあ。ミスト怖いけど」


 ミストをどんだけ怖がってるんだよ。そういや、まだクレアとミストが仲が悪いのはわかるが、アリスとも絡んでいる時を見たことない。王家につくつかないを別にして、ある程度は関わってもいいと思うんだけど…


 俺は自分の中に沸いた疑問が気になり、アリスに尋ねる。


「なあ、アリスはなんでそんなにミストを怖がってるんだ?」


「えーと、絶対にせめない?」


 アリスはバツが悪そうに伏し目がちに俺を見て、言葉を吐いた。


 そんなに悪いことをしたのだろうか。だが、ミストを怖がるのは普通だから、責めるほどのことでもないだろう。


「ああ。絶対に責めない」


「う、うん。じゃあ、昔はね、ミストやクレアとも話ししたりしてたんだけど……」


「へえ。意外にもあの二人と関わりあったんだな。でも、今は全然関わりないよな?」


「うん、昔はね私とクレアとミストはよく遊んだの。大貴族の同年代の女の子だからよく社交会でも一緒になったし。仲が良かったの」


 でも、とアリスは続ける。


「クレアは幼い時から剣の才能が凄くって、この国で一番強いって言われている騎士団長と互角の勝負を繰り広げたり、ミストは途中で噂を聞かなくなったけど、神童って呼ばれて物凄く賢かったの。でも私には、なにもないから……」


 なるほど。話が読めてきた。才能ある二人に比較されたアリスは居た堪れなくなって二人を遠ざけて距離を開けたとかだろう。


 なんだか、アリスに親近感が湧いてきた。その気持ちはわかるよ。現代日本の競争社会では何かにつけて人と比較して自己嫌悪に陥ったものだ。


「王女だからって王女ルールとか言って、自分に圧倒的有利なルールを作って、クレアには剣でミストにはチェスとかで、全戦全勝してきたの。そんな事してるうちに、二人の目が険しくなってきて……」


「それはお前が悪いわ!」


 100対0でアリスが悪いじゃねえかよ! 俺の同情を返せ!


「ひどい! 絶対にせめないって言ったのに〜!」


「ひどいのはアリスだろうが!」


「わ、わかってるわよ。だから、めちゃくちゃ反省してるわよ!」


 アリスがうう〜と唸り、泣き出しそうな顔になる。


「そんなんで、よくミストと一緒に旅行しようと思ったな」


「だって、クリスが……」


 アリスが顔を赤らめてごにょごにょと言う。


 何? 俺に何を期待しているの? 無理だよ。二人の仲を持つのは。

 自分から聞いといて何だが、下手にこいつらの関係に踏み込んで面倒なことになるのも嫌だし、聞かなかったことにしよう。


「まぁ。それは置いといて、サインだけくれ」


「雑すぎるわよ! それに、まだ内容修正してないでしょ!」


 ちっ。気づかれたか。


「わかったよ」


 それから俺は内容を修正し、無事アリスからサインを得たのであった。

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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
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