アルフレッドの勉強会2
『弱小貴族に転生した俺は、大貴族に滅ぼされ無い様に必死に頑張る!』が、第2回ツギクル小説大賞、大賞を受賞しました!
お読み頂いている皆様のお陰です!本当にありがとうございます!
ありがたいことに書籍化の予定もあります!
活動報告もあげています。宜しければご覧下さい。
どうしよう。何も考えてなかった。
正直、今日やることはないんだよなあ。と言うか今日できることがない。そもそも、今日言われてその日にするなんて無茶ぶりにもほどがある。
そう内心で駄々をこねても仕方ないので、ミストの契約をするまでに考えていたことを実行することにした。
「えっと、今日は、キユウさんもユスクさんもどれだけ出来るかわかりませんので、テストの方をさせて頂きます」
「ええ〜?てすとぉ〜?」
ユスクがあからさまに嫌そうな顔をする。
「はい。どこが出来て、どこが出来ないのかわからないと手の打ちようがありませんので」
「うーん。まあ仕方ないか。俺のことをユスクって呼び捨てにしてくれれば、許す!」
何だそのとんでもな理論は。別にそんな要求を飲む必要はないが、これ以上色々面倒になるのも嫌なので素直に頷く。
「じゃあユスクって呼ばせてもらおうかな?」
「おう!」
ユスクは、人の良い笑みを浮かべた。隣のキユウを見ると何だか焦れている様子なので、さっさとテストを始めよう。
「じゃあ、テストを始めようと思う」
俺がそう言うと二人は、筆を持った。
「じゃあまず一問目から、この国の成り立ちは……」
「ちょっと待ってくれ」
問題を出そうとするとキユウが口を挟んだ。
「何? もう質問? とりあえず、今日のところはどこがわからないか知るだけだから質問はまた今度受け付けるよ」
「いや、そうではない」
「へ?」
そうじゃないとしたら一体なんだと言うのだ。テストの時に勉強以外の質問しようとするなんて、案外真面目ではないのか?
「問題を出すのはわかった。だが、それならば問題の原文はどうした? 歴史という暗記科目において、問題用紙も教科書もなしで行うのは、いささか信用性に欠けるのではないか?」
キユウの発言にユスクは、確かにと頷く。
それを追求されても困るんだけど。だって何も用意してないし……
まあでも今日やることは、ほぼほぼテストに出ないから適当でいいんだけど。でも、そのままのことを言うわけにはいかないし……
「うーん……。頭の中に全部誤りなく入っているというのではダメですか?」
俺が渋々と言うと、キユウは顔を曇らせ、ユスクは顔を輝かせる。
「すまないが、流石にそれは信用できん」
ですよね〜。そら、信用ないか……
俺がどうしたものかと考えこむとユスクは、いいことを思いついたと立ち上がった。
「じゃあさ。俺たちが質問するからさ。それに答えられたら信用するって事でどうだ?」
うえぇ。面倒くさい事言ってきやがる。
断ってしまおうかと考えたが、ここで断ってしまうと信用を失うし、伯爵家の2人にアピールするのにも良い機会なので受けることにした。
「わかりました。それでは問題お願いします」
俺がそう言うと、部屋の奥でソファーに踏ん反り返って座るアルフレッドがポツリと独り言を漏らした。
「無駄な事を」
うん。まあ、お前も入学してすぐに問題出してきたもんね。返り討ちにしてやったけど。
「まぁまぁ。俺たちもクリス君の実力知りたいからさ〜」
「アルフレッド様。私も……」
「知らん! 勝手にしろ!」
食い下がる2人に業を煮やしたのか、突然立ち上がり、荒々しくドアを開けて出て行ってしまった。
「あーあ。行っちゃった」
「い、良いんですかね?」
俺は心配になって尋ねた。
「クリス君は気にしなくていいよ。いつもの事だから〜」
そう言ってヘラヘラとユスクは笑った。キユウの方を見ると、性格的に取り乱しそうなものだが、全くそんなそぶりは見受けられない。
慣れているのだろう。
「じゃあ、クリス君行くよ〜第1問!」
「は、はい」
なんだかアルフレッドの扱いがぞんざいな気がして呆気にとられてるうちに問題が始まってしまった。
☆☆☆
「凄えな、クリス君!全問正解じゃないか!」
あれから、ひたすら問題を出され続けた。
余りにも俺が正解を続けるので、キユウとユスクはムキになって、教科書の範囲外や別の教科も問題を出し続けたのであった。
そのせいか、外は既に真っ暗だ。
全く、無駄な時間を過ごしてしまった。そもそも、地獄のようなユリスの教育を受けて来たのだ。
ユリスの教育さえ受ければ、猿や犬であってもこれくらいの事は出来るだろう。
「本当に凄いな。クリス殿は」
「いやいや」
凄くなりたくてなったわけじゃない。本当、マジで。
地獄のような日々を思い出して気分が悪くなる。
「やっぱアルフレッドが嫌っていても呼ぶだけあるなぁ」
「やっぱり、嫌ってますよね?」
疲れていたのか、ユスクの言葉に素直に尋ねてしまった。
「そりゃもう、めちゃくちゃ嫌ってるぜ!」
ユスクは明るく言ってのけたが、俺の気分は沈むばかりである。
はぁ。別に個人として嫌われてようとどうでもいいが、オラール家が優勢になる時に次期当主に嫌われてるのは致命的だよなぁ。
「なんで、嫌ってるかわかります?」
解決の糸口を見出す為に尋ねた。
「なんでだっけ?」
首を傾げてユスクがキユウに尋ねた。
自分で聞いておきながらなんだけど、俺がアルフレッドに舐めた行動したからだよなぁ。
「私も良くは知らないが、『あいつは、自領の民をむざむざ危険に晒したのだ。そんな、貴族の風上にも置けぬ奴なんか潰してやる』と言っていたのは耳にしたな」
「あぁ。アルフレッドらしいな。あいつ程、貴族の誇りが高い奴見た事ねえもんな」
予想外の理由に面食らった。
「さて、そろそろ時間だし行くか」
伸びをして立ち上がるユスク。
キユウも、そうだなと言って立ち上がる。
「じゃあクリスも出るよ〜」
俺はそんな2人慌てて付いて行き部屋から出た。
部屋の鍵を閉めるユスクをキユウとただ見つめて待っていると閉め終えたユスクは口を開いた。
「じゃあ、俺たちこっちだから!またよろしくね!クリス君!」
そうユスクが別れの言葉を告げ、指をさした方向は寮でも校門の方でもなかった。
「あれ?そっち?」
俺は純粋に尋ねた。
「ああ。さっきアルフレッド様に社交的になれと言われたからな」
「そうそう。俺も言われたから2人で書物でも探しに図書館へ行こうと思ってね!」
アルフレッドに2人がそう言われてから、俺はひと時も2人から離れていなかった。だから打ち合わせしていた訳ではない事がわかる。
そして、何気なく言った2人から、アルフレッドの為に努力することは当然だという雰囲気が伝わってくる。
そんなことを思わせてしまうほど、アルフレッドには人を惹きつける魅力があるのだろうか?
俺はアルフレッドという人間を誤解していたかもしれない。





