じゃがいも
村長が持ってきたのはじゃがいもだった。
「村長!こいつを村々で作ろう!」
「しかし、クリス様、このじゃがいも?とやらは毒があって食べられないんじゃ」
「いや、こいつは芽に毒があるだけで食べれるんだよ。火と油と塩を用意してくれ」
「はぁ。しかし、その芋をたべて腹を崩してしまえば、明日からの生活に支障をきたすかもしれませぬのじゃが…」
と村長は怪訝な顔をしながらもどこか期待するような目で見てくる
「わかったよ。腹痛をおこした人がいればお見舞金を弾むことにするよ」
「いやいや、決してそんなことはないと思うのじゃが、万が一とありますからねえ。それでは取りに行って参りますじゃ!」
と嬉々として道具を取りに向かった。
まったく現金なジジイだ。
すると数分後村長は両手に抱えた道具と共にたくさんの村民を連れてやってきた。
「いやー。とって参りましたぞ! たまたま村民が暇をしておりましたので皆連れて参りましたのじゃ」
ぜってーたまたまじゃねえだろ。人数分のお見舞金が目当てだろう。
しっかり全員にちょっとずつ行き渡るようにじゃがいもを用意してきていた。
「まあ、いいや。早速料理するよ。ユリス手伝ってくれないか?」
「仕方ないですね。クリス様との共同作業というのもやぶさかではありませんし、手を貸してあげましょう」
こうして、ユリスに手伝ってもらいながら蒸かし芋とポテトチップスを作った。
「どうぞ、食べてください」
と匂いにつられて群がってきた村民と村長に渡す。
「確かに、これは美味いのじゃ! ポテトチップスとやらはパリパリとして塩気が効いてて、蒸かし芋とやらはホクホクで美味いのじゃ!」
その他の村人たちも同じように美味そうに食べている。
「これでじゃがいもの有用性がわかりましたよね? これから、この村や他の村にじゃがいもを栽培することを広めて下さい。そして積極的にじゃがいもを栽培してください」
「わかりましたのじゃ! こんなによくできる作物がうまければバンバン育てていきましょうぞ!」
よし。ひとまずは農村部の改革はこれでいいかな。
「明日また様子を見に来ますので、それでは」
といってユリスと二人乗りで密着しながら帰っていった。
翌日、腹痛の振りをする大根役者が村で溢れたのはまた別の話。