クレアとお勉強?
活動報告あります。
目の前が一瞬暗くなった気がした。
なんでクレアまで勉強誘って来るんだよ。もういいよ本当に......
勉強会参加のメリットが無さすぎる。まだアルフレッドの方は充分メリットがあったが今回は無い。本当の0だ。
よし!断ろう!絶対に無理!って言おうにもアルフレッドとの勉強会はOKしてしまってるんだよなぁ。
もし、クレアとの勉強会を断れば、何で私は断ったのにアルフレッドの勉強会はOKしてるの?っていうベタベタなわだかまりを残してしまう。
ただでさえ嫌われてるのに、こんな、しょうもない事で恨まれて、いざアルカーラ家のいる派閥につこうと思った時に酷い扱いを受けるなんて御免だ。あ〜めんどくさい!なんとか開催しない方向に持ってかないと!
子供の様に駄々をこねたくなる気持ちを表に出さず、逃げるように答えた。
「私なんかがアルカーラ様にお教えできる事なんて有りませんよ」
俺の言葉を聞いたクレアはムッとして少し目を細め口をへの字に曲げた。
「む、入学試験の成績は私より上だったはずだが?」
クレアが今までのどこかせわしない様子とは打って変わって落ち着いて言った。
「い、いや今回は運が良かっただけで......」
「そもそも、試験とは運の要素をいかに減らすかの勝負だ。だから、どんな問題が出てもいいように自分にできない問を無くすように勉強するんだ。そこで、試験に私が負けたということは、私が運の要素を減らし損ねたということだ。試験が私の負けには違いないよ」
「いや、でもその時の体調が悪かったとして実力が出せなかったり、偶々勉強したところが出て、その人より詳しくないし、知ってる範囲も狭いのにできちゃうっていうのはね?実力って言えないんじゃないかな?」
「私は今回体調は万全だったんだけど?それに、偶々勉強した所が出たとしたらそこを勉強せずに負けた自分に非があるわけで、勉強してできたなら偶々だろうがなんだろうが実力だよ。確かに、知識が深い広いが試験の点数を決める。だが、そんなものは学者の実力だ。いくら、知識が深かったとしても試験で求められること以上は全く持って意味がない。実際にその試験において私の予想し得ない問題を予想してできている力が、試験においての実力なんじゃないか?」
まあ、確かに……
どうしよう論破されちゃったよ。どう答えれば逃げ出せるんだ?迷宮過ぎて、逃げ出せる気がしない。
メリットも無い上に、アルフレッドとクレアの両方に構ってると時間が無くなるのも現実だし、乗り切っておきたい。
だけど、このまま食い下がって、俺が拒んでる事を悟られるのが一番まずいよな。悟られない自信ないし、仕方ないか。
「わかりました。私でよろしければ是非」
俺がどんよりと小声で伝えるとクレアの顔がパッと花が開いたように明るくなった。
普段美人で、クールな感じなのにギャップですごく可愛く見える。いや、ダメだ騙されるな俺。この笑顔もおそらく勉強会と称して、何か俺を陥れる策に嵌めることを想像して笑顔になっているのに違いないのだ。
「そうかそうか!うん!では明日の放課後に私のサロンで勉強しようじゃないか!」
「か、かしこまりました」
「じゃあ楽しみにしているよ!では!」
そう言ってクレアは踵を返し、さあ部屋をちゃんと準備しないと!とか呟いて鼻歌交じりに教室から出て行ってしまった。前にサロンに呼ばれた時は、何も無い内に去って行ってしまったけれど、今回は前回に俺を嵌め損ねた分楽しみなのだろう。
はあ。早いうちにこの嫌われている状況をなんとかしないと身がもたない。自業自得とはいえ、クレアの執念深さに辟易とする。
深いため息をはいて、これからどうしようかと悩んでいると声をかけられた。
「な、なあクリス君」
声の主を見ると、さっきアリスを担架で運んでいった男子生徒だった。
いつの間にか帰ってきていたようだ。このタイミングで声をかけるってことは、クレアとの話が終わるまで様子を伺い、話しかけるタイミングを計っていたのだろう。
クレアとアルフレッドの件で気分は落ち込んでいたが、俺は久しぶりの必要以上に気を使う相手では無くただのクラスメートの会話に心が躍った。今日は気持ちのアップダウンが激しいなあ。
「えっと、僕に何かよう!?」
俺は答える声が少し上ずってしまった。失敗した。久しぶりに話しかけられて嬉しがってるぼっちに思われてしまう。まあ、実際そうなのだが。しかし、そんな心配をよそに男子生徒は淡々と答える。
「いや俺が用があるんじゃないんだけれど、アメリシア様が今日早退される事になって、アメリシア様のところまで荷物を持って行かなきゃならないんだよ。それで、アメリシア様がクリス君に持ってきて欲しいって言っててさ」
君じゃ無いのかよ。せっかくこれから仲良くなって素敵な学園ライフの要素の1つ、気兼ねない男友達を得られると思ったのに……。
それに、アリスが?何で?
「え?何で僕が」
「いや、俺もよくわからないんだけど、なんか言い忘れてた事があるとか何とかって」
「ああ。なるほどあの件か。ありがとう。じゃあ早速行かせてもらうよ」
恐らく昨日、勉強会のことを話した結果できなくなったってことだろう。
「おう!じゃあな」
俺は手を振って去っていく男子生徒に手を振り返し、その余韻を惜しみながらも腰をあげた。そして、アリスの席まで足を運び、そこにある荷物を手にとって保健室へと向かった。
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