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アリスと勉強場所

 

 待ち合わせ場所の校舎裏は、校舎が夕陽を遮り、時間に先立って日暮れを告げている様に暗かった。

 その中にポツンと1人いる少女を見つける。少女は随分と待たされたのか、制服のスカートが汚れるのも気にせず体育座りで膝の間に顔を埋め座り込んでしまっていた。

 そんな、少女にのんびりと声をかける。


「来たぞ」


「遅い!」


「いや、アリスが早すぎるんだって……」


「そんな事無いわよ!」


 実際、そんな事あるのである。


 アリスは授業終了前から鞄に荷物を詰めはじめ、授業の終わりを告げる鐘が鳴ると飛び出す様にして教室から出て行ってしまったのだ。


「まぁ、後から来たのは俺だから悪かったよ」


「ふん!次はないからね!」


「それで、勉強は何を教えればいいんだ?」


「壊滅的なのは歴史と数学だから、その二つだけでいいわ!他の教科は余裕よ余裕!」


 アリスが小憎たらしい笑みを浮かべて答えた。アリスのドヤ顔に少しイラっときたものの極めて冷静に言葉を繋げた。


「なかなか優秀な様でよかったよ。それに歴史と数学なら、今回の範囲は少ないから今日、遅くとも明日中にはおわりそうだな」


「ええ!?ほんとに!?ちょっと早すぎない!?」


「いや、実際今回の範囲は数学なら問題のパターンは限られてるし、歴史は話の流れを覚えてしまえばどんな問題が来ても対応できるしな」


「ええ……」


 おかしいな……。

 普通勉強できないなら喜ぶべきところなのにアリスはどこか不満げな表情を見せている。


「どうかしたのか?」


「や、やっぱり他の教科も自信ないし教えて欲しいなぁ?」


「はあ?さっきまで余裕とかいってただろ!?」


「き、気のせいだったわ!実は全部苦手なの!見栄張ったの!」


「なんでそんな事で見栄張るんだよ!?大体、全部苦手は嘘にしても酷いだろ!授業中あてられてもしっかりと答えてる所、結構見るぞ!」


「嘘じゃないもん!ぜんぜん出来ないもん!だから、全部教えてよぉ~~~!」


「嫌だよ!全部教えるなんてめちゃくちゃ時間掛かるだろ!」


 嘘じゃないと固持して全教科教えてくれと縋り付いてくるアリスに俺はきっぱりと拒否した。

 しかし、それを聞いてアリスは余計にパーーッと表情を明るく輝かせ、口を開く。


「だったら尚更教えてよ!お願いだから!」


「だから嫌だって!俺に何の得も無いじゃないか!」


「いいじゃない!び、美姫と有名のこの私に勉強を教えることが出来るのよ!光栄に思いなさいよ!」


 アリスは顔を赤らめながらも高慢に告げた。


 照れるぐらいなら自分で美姫とかいうなよ。それに、その態度は反応に困る上に俺にとっては、アリスに勉強を教えるのは褒美どころか罰ゲームでしかないわ。


「それが褒美なら勉強教えなくて良いか?」


「な、なんでよ!?そこまで言うこと無いじゃない!」


 アリスが涙目で詰め寄ってきて俺の首もとの襟をつかみ前後に揺らしてくる。


「わ、わかったから!」


「おひるに教えてくれうってゆったのに~~~!」


 より強く揺すられる。

 だめだ気持ち悪い。うそでもいいから取り敢えずアリスの動きを止めないと吐く!


「ご、ごめんって!全部教えるからやめてくれ!」


「ほんとに?」


 アリスが上目遣いで目をうるうるさせて真っ直ぐに見つめてくる。

 何だこれ、某消費者金融のCMで見たことあるんだが。そんなに真っ直に見つめられると嘘だと言えない……


「ああ……」


「やた!」


 げっそりする俺とは反対に小さくガッツポーズをしてアリスは喜んでいる。


 何でこうなった?いや、こうなってしまったことをくよくよ考えていても仕方ない早く終わらしてしまおう。


「それじゃあ、早速勉強を教えたいと思うんだけど」


「どうしたのよ?急にやる気じゃない?」


「まあね。それより、どこで勉強するの?」


「もちろん、図書室よ!」


 きっぱりと言い放ったアリスの言葉に焦りを覚えた。 

 それは、やばい。王女に勉強を教えている姿を人に見られるのはまずいっ!なんとか人目のつかない場所で教えるとこまで持っていかないと。


「……アリス。たしか君は、勉強できないところを人に見られたくないって言ったよね?」


「え?たしかにそう言ったけど?」


「図書館っていう人の目のつくところで勉強を教えてもらっているのをみられるのはありなのか?」


「うっ。で、でもそこまで気にすることでもないんじゃないの?」


「いや、もしこの中間テストで、俺の付きっ切りの指導で苦手な数学と歴史をなんとか無難な点数をアリスが取れたとしよう」


「う、うん」


 アリスがこくりと頷き相槌を打つ。


「だが、入試1位の俺につきっきりで指導されておきながら無難な点数しか取れなかったら、周りはどう思う」


「そっか!あれだけ指導されておきながらそんな点数しかとれないなんて実は頭悪いんじゃないの?っておもっちゃうかも!」


「ということで人目のつくところはなしでいいか?」


「うん!」


 俺は、無垢な表情で頷くアリスを見て上手く丸め込むことが出来たと安堵した。


「じゃあ、どこでやる?」


「えっと……」


 思い浮かばない様で固まってしまっているアリスにやれやれと声をかけた。


「思いつかないようなら、俺が決めてもいいか?」


「ち、違うわよ!思いつきすぎてどこにしようか迷ってただけでよ!でも、クリスがそこまで言うのなら仕方が無いわね!選ばせてあげるわ!」


「……どうも」


「な、なによその目は……」


 俺がアリスの嘘を咎めるような冷たい視線にアリスがうろたえた。


 少しの間沈黙の間が流れ、俺のほうから口を開いた。


「俺が提案するのは、互いに変装して宿屋の部屋を借りてそこで勉強しましょう」


「や、宿屋!?」


 急激にアリスの顔が赤く染まっていく。


「ああ。宿屋だが?」


「勉強を教えてくれとは言ったけど、そんな勉強まで教えてくれとは言ってないわよ!」


 なに言ってるんだこいつ。


「何のことだよ」


「別にいやな訳じゃないの!私も興味が無いわけではないし、クリスとならむしろっていうか、でもね?私は仮にも王女じゃない?やっぱり、結婚するまで清い身体でいたいというか」


「本当に何のことだよ!?」


「も、もうえっちの事でしょ!王女の口から何言わせるのよ!」


「勝手に言ったんだろ!それに、俺にはそういうことをするつもりはない!」


「ええっ!?も、もしかしてクリスって男色なの!?」


「ちっがう!!俺は女の子が好きだ!」


「で、でも私の元執事が宿屋に男女で入るってそういうことだって教えてくれたし……」


「誰も彼もそういうわけじゃねえええ!」


 変な事を教えるよりも数学と歴史を教えといてくれ!




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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
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