校舎裏への呼び出し
放課後、俺はアルフレッドの呼び出しに応え校舎裏へと到着した。
校舎裏はこの時間日が当たらないのか校舎の壁の赤い煉瓦を紫に染めている。そんな影の中でも赤いとわかる程怒りを顔に浮かべたアルフレッドが立っていた。
俺は周りに人が居ないかどうか確かめるとどうやらアルフレッドが1人の様である。
テンプレでは怖い先輩の校舎裏への呼び出しなんて新入生のいびりが目的で大概がリンチにあうと相場では決まっている。そのため、1人で立っている事に安堵した。
俺がゆっくりとアルフレッドの方へと歩み寄っていくと俺に気づいたようで、折角校舎裏を選んだにも関わらず他人に聞こえるのでは無いかという程の大きな声で叫んだ。
「遅い!!」
いや、校舎裏って言ってもどの校舎裏かわからないし時間も放課後としか聞いて無いんですけど
と反論しようとしたが焼け石に水なのでやめておいた。
「お待たせしてすいません。どう言った御用でしょうか?」
「貴様!!何故合格しているのだ!!」
「はぁ。努力の賜物でしょうか?」
俺の惚けた態度にアルフレッドは怒気を強めて言い放った。
「貴様の試験問題を配り間違えたという試験官が居るんだ!心当たりが無いとは言わせんぞ!」
「はて?心当たりが無いものは無いんですが」
「無いわけあるか!!どんな汚い手口で入学してきた!!さらに首席だとぅ?舐めた真似もいい加減にして貰おうか!!」
「はぁ。では、その時の問題用紙がここにあれば、私の実力であると認めて頂けますかね?」
「あるなら出してみろ。こちらでも試験問題は入手しているのだ。もし違ってたら即行退学にしてやる!」
俺はアルフレッドに呼び出された為、何かの役に立つかとわざわざ用意した問題用紙を鞄から取り出した。
「これで如何ですかね?」
アルフレッドは取り出された問題用紙を俺から強引にひったくり、まじまじと見ると更に顔を赤くして叫んだ。
「あの試験官は絶対に首にしてやる!!だが、こんな物が証拠になるか!俺ですら手に入れられるのだ!」
試験官が本当の首にならなければ良いんだけど……
それに、証拠にならないんなら元から見ようとするなよ……
「では、如何すれば私が自力で入学した事を認めて頂けるんですかねぇ?」
「あれ程愚かな貴様が不正をして入学したのは間違いない!認められるか!そんな物!!」
あら?無理な要求を突きつけてくるかと思ったけれどそんなことはないな。それに本当に俺に実力がないと思ってるみたいだ。
それなら、この状況利用してやろう。
「それではアルフレッド殿。今そこにある入学試験の問題から問題を出して頂いて一問でも間違えれば私は喜んで退学しましょう。その代わり全問正解すれば私が自力で入学したと認めて頂きましょう」
少しアルフレッドが考える素ぶりをしてから、口の端を上げた。
「あぁ!良いだろう!!一問でも間違えたら退学をしてもらおうか」
よし!乗ってきた!
「そんなに心配なら契約書でも交わしましょうか?私としても約束は守って欲しいんで」
「ふん!私を侮辱しているのか!この誉れ高いオラール公爵家嫡男の私が約束を守らないとでも?そちらこそ契約書を書いて貰おうか!愚かな振る舞いを平然とやってのける誇りも何もない子爵だ!約束を忘れられても困るのでな!!」
「ええ。それでは契約書には、この問答の前にした約束を敗者は守るという事で宜しいですか?」
「ああ!!」
よっしゃ釣れた!!俺の意図に気づかず乗ってくれたな!正直、試験問題の解答は発表されている為、それを見直ししてあるので、すでに勝ったも同然だ。
俺は鞄から紙を取り出し契約書を作り、ペンを走らせて、それをアルフレッドに確認させた。
するとアルフレッドはじっくりと読んだあと晴れやかな顔をして軽やかにペンを走らせた。
「これで契約は完了しましたね」
「あぁ!!早速だがドレスコード子爵。問題は何問かとは決めていなかったな?それでは今すぐ全問解いて貰おうか!」
アルフレッドがニヤニヤして言った。
これが、アルフレッドの狙いか。甘すぎるわ。全くもって甘すぎる。普通なら試験全問正解なんて不可能だろうが俺は入学しなければ未来がないので文字通り命懸けで勉強してきたのだ。初見ならまだしも答えまでみてあるのだから全問正解くらいお茶の子さいさいだ。
俺がスラスラと答えを書いていくにつれ、余裕のある顔をしていたアルフレッドの顔が引きつっていく。
「出来ました。それでは答え合わせに公開されている解答を見に行きましょうか?」
「……見なくともわかる。満点だ」
「ケアレスミスがあるかもしれませんよ?」
「ふん!この俺が入学試験ごとき見ればわかるわ!貴様を追い出す事が出来ずに残念だがな!」
アルフレッドが拗ねたような吐き捨てた。
意外だな。案外賢い上に勝負には公平だ。散々不正をしたりしてる癖に自分で言う通り誇りは高いのかもしれないな。
「それでは契約書通り約束を守って頂きましょうか?」
「ふん!貴様が実力で入ったのは認めてやる!これでいいだろ!もう貴様の顔を見てると腹が立つさっさと去れ!」
「いえ?別にそれ認めて頂かないで結構ですよ。約束を守って頂きたいだけで」
「はあ!?」
「確か入学試験の際に仰ってましたよね?入学したら仲良くして下さると」
「それは違うだろう!」
「いいえ、違いません。契約書には問答の前にした約束を守って頂くと書いてありますが?」
「くっ……」
アルフレッドは歯を中心に顔が縮まるんでは無いかと言うぐらい噛み締め悔しさを露わにした。
「まさか誇り高いアルフレッド様が契約書を破棄するなんてしませんよね?」
「クソッ!この俺に二言はない!ではな!」
アルフレッドはこれ以上耐えられないのか承諾の言葉を吐き捨て去っていった。
ふふん。これでアルフレッドの側に行く名分ができた。これで堂々とオラール公爵家の派閥を探ることができるな。ラッキーラッキー





