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試験終了

 さて、俺を女の子だけのグループに入れて、これからどうするつもりなんだろうか。それとも、自分が戦って怪我でも負ったと言って弱みに付け込んでくるのか……


俺は、試合開始の合図が掛かったのにも関わらず、動けないでいた。


動いてこない俺を見かねてクレアは、不意に口を開いた。


「何か邪推していないかドレスコード子爵?」


「本当に邪推なんですかねぇ?」


「あぁ、邪推だな。だって私の目的はお前と戦う事だからな!」


 言うと共にクレアが上段からの切りおろしをして来た。


 っ!?速いっ!?


 俺は寸手の所で腰を落とし左膝を地面に付け支点とし、両肘を引く事によって、クレアの剣を自分の剣で顎の前で受け止めた。


「よくもあんなに恥ずかしい事を言ってくれたな!ここで、ボコボコにする日を待ち侘びたぞ!」


 うっ。そこまで恨みを買ってたか……


「その件については……」


「うるさい!何も言うな!思い出すだろう!」


 クレアは、顔を赤くして剣で俺の剣を押し込んでくる。


 くっそ力の入れ方が上手い。不利な体制では、あるが押し込まれていくっ!


「こんなに、強いなんて聞いてませんよ……」


「この程度を私の実力だと思わないでくれ」


 そう言うとクレアは、さらに押し込んで来た。


 こんな、女の子にどっからこんな力があんだよ!


 押し込まれた俺の剣が顎に触れる。


 このままじゃ、押し負けるっ!


 俺は、右膝に力を入れ腰を捻りクレアの剣を受け流し、クレアの咄嗟の切り上げをバックステップで避けた。しかし、そう簡単に距離を取り、体勢を立て直させて貰える訳も無く、直ぐ様距離を詰めてくる。


 くそっ!バックステップじゃ流石に正面から向かって来られては追いつかれるっ!一か八かだ!


 俺は、向かってくるクレアに対して軽く右に跳ぶフェイクを入れ、左前方に跳ぶとクレアは架空の右に跳んだ俺に対して剣を振り下ろし、剣は空を切り、2人の位置は入れ替わった。


「チッ!」


 クレアは勝機を逃し、悔しそうな顔をする。


 あっぶねぇな。あのまま行ったら押し切られたかもな……


 恐らく、剣の技量ではクレアは俺より上だ。


 こう、体勢を整えた今でさえ、隙を伺っても見つからないので攻め入れないな。


 こんなに女の子が強いなんて流石は異世界だわ。こんな時ばかりは異世界であることを恨まざるを得ない。


 そんな事を考えていると不意にクレアが口を開いた。


「くそっ!私を舐めているのか!」


「いや、舐めてなんかいないさ」


 はあ?どこでそう思った?

 こっちは、かつかつだって言うのに。


「何故攻めて来ない!」


 いや、今まで攻めれる機会なかっただろうに。それに今も隙が無いから、このまま攻撃するとカウンターが怖いんだって。


 ってあれ?もしかしてこの状況美味しい?

 この機会、活かすしかない!


「それは、貴方がとても綺麗だからですよ!」


「なっ!?」


「ええ!この試験用の鎧ですらお洒落に見えるそのスタイルの良さ!それに全ての色を吸収して昇華した美しい黒髪!睫毛も長く少しツリ目気味でもハッキリとした目!スッとした鼻に口!そんな、全身が宝物の様な貴方を傷つけてしまうのが怖くて仕方ないよ!」


「バ、バカッ!そんな嘘を言って何が目的だ!」


 無論、時間稼ぎだ。


 まあ、それが分からないくらいには混乱してくれている様でなによりだ。


 俺の試合を観ている教官と女の子2人は、俺の意図が透けて見えているようで冷めた目で俺を見てくる。


 やめろ!そんな目で俺を見るな!


 これで変な噂が広がったら大変だし後で口止めしておこう。いや、冷たい目で見られた腹いせじゃないよ?


「嘘ではありません!俺の瞳を見て下さい!これが嘘をつく人の瞳ですか?」


「やめろっ!恥ずかしくて目を合わせられんから分かるはず無いだろ!」


「いえ、しっかりと見て下さい!さぁ!」


 クレアが顔を赤らめチラチラと見てくる。


 俺は、砂時計の方をチラチラと見る。


 よし、もう少しで時間だ。このまま行け!


「もういい!わからん!とりあえずお前を叩きのめしてやる!」


 クレアが叫びながら切りかかってくる。


 くそ!もう少しなのに!


 俺は、クレアの攻撃をギリギリで交わし続ける。


 すると、視界に先程、俺が左膝を支点にしてた時の凹みが目に入った。


 上手く行く可能性は0に近いが、冷静さを失っているお陰で0じゃない!何もしないよりましか!


 俺は、さっきの凹みの近くの所でクレアの攻撃を捌き続ける。


 クレアが俺に突きを繰り出そうとした時、クレアが凹みに足を取られ、突きが明後日の方向に逸れた。


 よし!行ける!俺はガラ空きのクレアに対して剣を振り下ろそうとしたその時、


「そこまで!!この勝負引き分けとする!」


 試験官が終わりの合図と試合の結果を告げた。


 俺は、剣を振り下ろすのを止め、クレアに手を差し出した。


「お手合わせありがとうございました」


「……」


 何かを考え込むようにしてからクレアは、俺の手を握り何も言わずに離れて行ってしまった。


 あれ?もっと怒るか、落ち込むかと思っていたのにな。怒らせた時と落ち込ませた時用には策を考えてたのに。この反応はなんだ?逆に怖いな……


 それから、俺は女の子2人に対してサラッと引き分けを勝ち取り入学試験を終え、激動の1日が終わった。


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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
― 新着の感想 ―
[一言] うむむ!?まさかとは思うが、恋の柵がくっついちゃったかな?
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