切り抜ける方法は学園生活で!
夜になり、子爵家緊急会議が開かれた。
会議といっても参加者は、ハル、ユリス、俺の3人だ。
あの後、政務に知識の無い子爵家の人間は、笑い転げ、知識のある人間は、蒼くなり、ハルなんかは、気を失っていたようだ。
「さて、どうするべきだと思う?」
「まずは、現状の確認からしましょうか」
ユリスが落ち着いて答えた。
「俺が大変不敬な言葉を言い放ち、3家の方々に敵視されました。てか、不敬罪とかで脅迫してこないよね?」
「まぁ、流石に身分はクリス様の方が上ですので、そういった言い掛かりはつけれないです」
「そう言えばそうか。いやぁ向こうが余りに不遜な態度を取るものだから忘れてたよ」
相手は、不敬罪を俺が公の場に出せば、それが不敬罪であるとか言って糾弾出来るのを知ってるからなぁ。
てか、むしろそれが狙いだったのかな。
「まぁ、それにしてもあれはないです。普通にセクハラですよ。この私ですら身の危険を感じました」
「はははは!何言ってんだよ。オッパイが無いユリスが危険なんて感じるはず無いじゃないか!」
俺が笑って言った刹那、俺の側頭部が凹み、地面に倒れ伏した。
「クリス様。私が何ですって?」
「こ、こひゅー」
痛すぎてまともに喋れない。
ユリスの足に俺の髪が付いている所を見るとハイキックを決められたのだろう。
まじで、覚えとけよこの女!
と俺は、義憤に駆られ睨みつけたが、ユリスに見下ろされると急激にその思いは萎え、目線を下に逸らしてしまった。
「すいませんでした」
ユリスは、はぁとため息を吐いて言った。
「話す言葉には気をつけてください」
「はい…」
次、 ユリスに貧乳系の話題をだしたら死ぬなこれ。
「はぁ、まぁ、クリス様の策の思惑通りにあの中で誰の派閥にもならなかった事は不幸中の幸いだな。だけど、これからが大変だぞ。まじで」
ため息を吐いてハルが口を開いた。
「そうだね……実際に、3家には俺を頭のおかしな子爵であると認識した訳だ。そんな、子爵に対して考えられる行動は、1つは武力的に制圧してしまうこと」
「まぁ、流石にこれは、名分がない以上してくる事は無いでしょうね」
ユリスが静かに答えた。
名分が無い以上である。何か適当な言い掛かりでもつけられたら速攻で攻めてくるだろう。
気をつけないといけないな。
「2つ目は、兄か父の後ろ盾になって継承争いを起こし、当主を据え変え、裏から操ろうとするだろうね」
「そうですね。これは、我が家がドレスコード家でよかったですね。先代様もクリス様の兄様方もやる気が無いですから。万一、3家の内、誰かに脅された時用に王都からの脱出経路の確保をしておきます」
「我が領までに公爵家を通らなければいけないが脱出経路なんて作れるの?」
「お任せ下さいクリス様。一つ誰も知らないような経路を知っています。これをしっかり確保しておきます」
流石、ユリスだな。略して、さすユリ。
「まぁ、何はともあれ、この状況を抜け出すには、王家が争い始める短い期間の間に再び、自らが有能であることを示し、尚且つ3家と友好関係を築く事が大切です」
「そうだな。案外、今日来たのが貴族の子息達でよかったかもしれないなぁ」
「学園か……」
ハルが呟いた。
「うん。自分の汚名を晴らして友好関係を結ぶのに近くで見てもらえる環境があるっていうのがまだ救いだよ」
「それでも、クリス様。近くにいるという事は、考えることも多く、敵視されている相手に友好関係を築く事はとてつもなく大変ですよ」
かなりの負担が強いられる事だろう。
けれど、自分のミスは取り返さなきゃならない。
「あぁ。百も承知だよ。学園生活の中で俺は他の家の情勢を探り、名声を高め、3家と友好を築いてみせる!」
「そうですか。クリス様。それでは私が学園に入学するまでに名声を高めるようみっちり指導させていただきます」
「……うっ」
ユリスの指導の嫌な記憶が思い出してしまう。
何回死んだと思ったか…
でも、やるしかないのだ。
「……よろしく頼む」
「ハイ。よろしくお願いしますね」
思い出し暗い顔になる俺とは、逆に、そう言うユリスは、楽しそうに明るい顔をしていた。





