決心
「さて、ドレスコード子爵。返事を聞かせて貰おうか!」
アルフレッドが厳しい視線を突きつけて言った。
すると、他の2人も厳しい視線を俺に突きつけて口を開く。
「ほう、傘下に加わるというのか?だそうだ。ピアゾンの三女」
「残念だね。私は君に身を捧げても良いっていうのに。逆に君が捧げられてしまうかもね」
俺の首かなぁ。あははは…
「い、いやぁ、なるとは言ってないし…」
「それでは、どの様な状況になろうと我が公爵家の盟友にはならんということだな?それは、それで結構!我が家としてはハッキリせぬのが一番困るのでな!」
王家に近い公爵家が、もっとも争いに参加しやすく優位であり、公爵家が味方につく方が勝ちやすい。
その、公爵家に敵視されれば一貫の終わりである。
「そんなぁ仲良くして下さいよ〜」
俺はニタニタとした笑みを浮かべ、手をこすりながら言った。
「ふん。気持ち悪い笑みを浮かべおって!」
くそっ!俺の全力の作り笑顔を馬鹿にしやがって!
「そうかい。それでは我が家とは仲良くしたく無いということかい?」
ミストが大きな瞳を細めて俺に尋ねた。
「いえいえ、仲良くしたいに決まってるじゃ無いですかぁ〜」
「それが許されるとでも思っているのか!!」
「ひっひぃぃー」
怒気を強めたアルフレッドの言葉に、縮こまり情け無い声を出してしまった。
すると、青くなった俺にクレアが優しい声色で俺に話しかけた。
「まぁ、ドレスコード子爵よ。龍と犬と猫の中でどれを友にするのかという話だ。龍にはどう足掻いても犬猫じゃ歯が立たん」
いやでも、そう言って仕舞えば犬か猫だよ。だって可愛いじゃん……
「流石は、女の身で武名が高いクレア殿だ!自信家だな!虎も狼も可愛く見えてしまうようだ!」
「犬、猫だと思われてるのはラッキーだねぇ。流石龍だ。地に足ついていないとはこの事を言うんだね」
「可哀想な奴等だ。正しい実力差を認識できないなんてな」
また、熱を帯びていく罵倒のし合いに、俺は黙り込むしか無かった。
誰かまじで助けてくれ……
「さて、話は変わるが子爵よ。私はお祝いさせて頂いたが返事を聞かせて貰ってないのだが?」
クレアが急に俺に矢印を向けてきた。
俺は確か言ったはずだったが聞き取られていなければ意味は無いので、面倒ではあるが答えた。
「それは失礼しました。この度は私ごときの成人の儀にいらっしゃってくださって誠にありがとうございました」
「そうか。で?」
……で?
「お忙しい中、ご足労をお掛けしてすみませんでした」
「気にするな。で?」
………で?
「いや、もう何も無いです」
「わかった。で?」
…………………で!?
いや、言うまでこれ続ける気だろう!?
「おい!流石に汚すぎるぞ!」
アルフレッドが直ぐ様、俺とクレアの間に分け入り、吠えた。
「はあ?何処が汚いと言うのだ?言って見ろ。私よりも会話の邪魔をする貴様のが汚いと思うのだが?」
「あれの何処が会話だ!ドレスコード子爵!早く結論を出せ!このまま長引くほど貴様の立場は悪くなるぞ!」
あ、ありがてえ。
アルフレッドさん。めっちゃ優しいやん。
だが、この状況如何するのが正解なのか…
もう、いっそのこと何処の傘下か決めてしまおうか。
いや、流石に、ここで傘下になるのはまずい。
第一に一家の傘下に入ると他の二家に攻められるかもしれないし、今ここで決めてしまえば、王家の争いに巻き込まれた時に、主家が何処に所属するか分からず、負けそうな側についてしまい、そのまま負けて滅ぼされるかもしれない。
取り敢えず誤魔化して、帰ってもらうしかないか。
一芝居うってやる!
「分かりました!結論を出しましょう!」
俺がそう言うと3人は真剣な表情になり、空気が張り詰めたように感じた。
感じたのは、俺だけでなく、段々と周りの人間に真剣な表情が伝染していた。
全員の顔が引き締まったのを確認し、機を見計らって叫んだ。
「オッパーーーーーーイ!!」
その時、あたりが静まり返った。
それから、数秒後、皆同一だった張り詰めた表情が様々な表情に変化した。
怒りで 顔まで真っ赤にしている者や、顔が青ざめている者、腹から笑っている者など様々な表情で溢れかえりどっと地鳴りする様に湧いた。
「これは、どういうことだ!ドレスコード子爵!」
アルフレッドが怒鳴った。
「今、天からオッパイの神が私に憑依したのです。オッパイ最高!うっひゃひゃひゃ!」
「……ドレスコード子爵。私を馬鹿にしているのか?」
クレアがコメカミに青筋を立て尋ねてくる。
「いやいや!全くバカになんてしてませんよ!クレア様はオッパイは大きくありません!だけどスタイルを見る限り美乳です!紛う事なき美乳です!あゝ素晴らしき美乳よアーメン!」
「…なっ!?」
クレアは、顔をリンゴのように真っ赤にしてしまった。
「ドレスコード子爵。君がそんな人だったとはね……」
ミストが顔を痙攣らせて言った。
「これはこれは!ミスト様!間違えた!オッパイ神様!あなたのその大地に包まれるような母性溢れる双丘は、オッパイ教にとっての偶像そのもの!ありがたやありがたや!」
「……」
ミストは顔を痙攣らせるどころか無表情になってしまった。
無表情では、あるが、そこはかとなく冷たい目で俺を睨みつけた後、取り巻きを連れて無言で帰ってしまった。
それを見たアルフレッドは、怒鳴り散らしながら我が先にと帰って行き、慌てて取り巻きは追って行った。
「この、屈辱覚えておくからな!」
クレアが顔を真っ赤にして、取り巻きに囲まれるようにして帰って行った。
場には、笑い転げる子爵家の者と見る者を凍りつかせるような瞳のユリスが残った。
上手くは行ったけど……うわああああああああ!





