干拓地と手紙
王都から帰ってから俺は学園に行くことに決まったのとハルとの約束によって常に仕事をしており風呂の時以外は、執務室から出れなくなってしまった。
はあぁ…日本でやってた事とあまり変わらないんではないか。
そんなネガティブな考えをしている時に速いノック音が聞こえたあとバンと音を鳴らして扉が開いた。
「クリス様、無事干拓の方が終了しました!」
ジオンが執務室に来て喜色満面の笑みで言い放った。
「本当に良くやった!ジオン!」
「はい!」
俺も思わず立ち上がりジオンに労いの言葉を掛けた。
干拓事業はジオンが夜も寝ずに必死に計画を立て、実際に、工事を行っている際も様々なトラブルに見舞われ非常に苦労しているのを近くで見て来た。
それを思い浮かべると自分の目にも涙が浮かんで来たのを感じた。
ジオンの目にも涙が浮かんでいる。
「今日は疲れただろう。早めに仕事を終わらせてこいつを使って労働者を労ってやってくれ!」
「ありがとうございます!皆も絶対喜びます!」
俺は、小袋に金貨を詰めジオンに渡すとジオンは、深く頭を下げ、軽い足取りで執務室を出ていった。
ジオンが浮かれるあまり閉めきれてていなかった扉を閉めるのにのそりと歩を進めて、干拓が完成したのもいい機会だから収穫祭と俺の成人の日も兼ねて祭りを開いてみるのもいいかもしれないなとふと思った。
まあ、祭はともかくこれで次から事前に用意しておいた干拓地の農地化が進められる。
干拓地の塩分を抜いて水田化するために綿を栽培することに話し合って決め、綿の栽培の専門家をサザビー商会を通してよびよせ、それと規模に見合った農民をユリスに選出してもらっておいた。
早速俺は、事業計画の打ち合わせで農民の代表をよびよせた。
2日後、俺は選出された農民の中の代表が待つ部屋に入るとそこには俺のよく知った男がいた。
「前よりまた大きくなってないか?村長」
「がははは!ジャガイモを作れば作るほど売れますゆえ畑仕事にも精が出るってもんじゃ!」
色が黒く前よりも筋肉がより肥大した老人が腕を曲げながら大きく明るい声で答えた。
また、隠し畑を作ってるんじゃないだろうな。
一度検地でもしてやろうか。
それにしても村長が来るなんて意外だったな。何故来たのか俺は聞いてみることにした。
「村長は村で村長をして安定な生活をしているじゃないか。何で新たにリスクのある綿農家に転職したんだ?」
「それは、面白そうだからじゃ!」
「面白そうって……」
「サザビー殿が言うには綿なんて栽培しているのはごく僅かと言うではないか!これで一山あててやろうと思ってのう」
相変わらずの強欲爺さんだ。
「それにドレスコード領の新たな政策はなんやかんやで今まで上手くいっておる。そこに絡めると言うんじゃ!即決で動かん奴に未来は無いじゃろ!」
村長はどこか確信めいたように言い放った。
そんなに期待されてもなぁ…
「いや、そう言う風に考えるのは村長だけだと思うけど…」
「そんな事は有りませんぞクリス様!儂の倅や村の衆もユリス殿からお声を掛けられた際に皆我が先にと立候補しましたのじゃ。まあ、儂が黙らせてやりましたがな!がははは!」
なんて、傲慢なジジイだ。
「そうか。まあリスクがあるということだけは覚悟して置いてくれ」
「もちろんですじゃ!」
本当にわかっているのかどうか不安だが意思確認は出来た。
後は綿の専門家に任せて村長と事業計画を練って貰うことにした。
部屋から出るとそこにはユリスが澄ました表情であるが、どこか困ったような声で俺に話しかけた。
「クリス様あての手紙が届いております」
「うん?俺宛の手紙?」
「はい。ヤクトワルト様からのお手紙が来ております」
ヤクトワルトって誰?





