今後の方針
あれから、一度会議を中断し、拗ねに拗ねまくるハルを2時間かけて宥めて、俺が今まで以上に働くと言うことで納得してもらった。
その後、ハズキ以外の3人を再度、会議室に集めた。
「ってなわけで報告を再開したいと思う」
俺は、包み隠さずに王都であったことを全て吐き出した。
「うーん…どこから突っ込むべきか」
ハルが神妙な顔で首を傾ける。
見回してみると残りの2人もまだ熟さず青臭い果実を食べた時のような渋い顔をしている。
「僕が言えるのは実際にネジってやつを早くみてみたいってことだけですかね。まぁ、政治的な話は僕よりも兄さんと姉さんの方が詳しいですし」
「そうか。ネジについては、ハズキとよく相談した上で検討してみてくれ。ハズキの件はいいとして次は政治的な話をしよう」
ジオンは深く頷いた後、目線を下げ顎に手を添え動かなくなった。
ネジの使い方でも早速考え込んでいるのだろう。
「今はもう、そこまで宰相と王の争いが露骨になって来たのか…」
「そして、それが今回の件で貴族達の前で暴かれました。これからは、貴族達も王権の争いに動きだしますね」
この件で野心のある貴族は積極的に動きだし、王も宰相も歯止めが効かなくなってしまうだろう。
「で、我がドレスコード家がこの政争に巻き込まれないようにするにはどうすればいいだろうか」
俺は皆に問いかけた。
「無理ですね」
「無理だな」
「えっ?」
俺は、即答で帰って来た二人の否定の言葉に驚き思わず情け無い声あげた。
「無理って。もう詰んでるってこと?」
「まあ、ほぼほぼ詰んでますね。というのもクリス様はピアゾン伯爵嬢に目をつけられたよな?これでもう声が掛からなくなるって事は無くなった訳だ」
そっか…… ええっそんなのあったの!?誰も教えてくれないからわかんなかったテヘペロ! という言い訳も声が掛かってしまうと使えなくなる訳だ。
くっそ、ミストに関わるんじゃなかった。
「じゃあ、戦が起きれば参加は確実という事?」
「そうなるでしょうね。まあ、今知れたばかりなので戦う準備が整うのに恐らく5年間あるのでその間に軍備を拡張しないといけませんね」
5年か。長くも短くもあるな。
「軍備の拡張の方は公務員の待遇を上げ子爵軍としても活用できるように軍事訓練の方を積ませることにしよう」
「わかりました。私の方から調練内容の方と指導をさせていただきます」
「後、私塾の塾生も同様に頼む」
「かしこまりました」
軍事の面ではこれくらいしか今のところできる事は無いか。あとは、質の高い武器、防具を揃えるくらいしかできない。
不安だなぁ。それに、またお金が無くなっていく。
「後は、どちらに与するか貴族の動きを見る必要があります。これが一番大切で戦に関わる以上、どちらにつけば勝てるか、それに、幾ら勝っても勝つ前に我が家が潰されぬように我が家に近い貴族の動きも見ないといけません」
ハルが顔をしかめて言った。戦は情報を制した方が勝つと聞いた事がある。ハルも情報の重要性を一番重視しているのだ。
「あぁそうだね。だが、しかしどうやって調べればいいかな?」
「それは、クリス様にしか出来ない仕事が一つあるんですよ。そこに行けば貴族の動きが良く分かるだろうよ」
「そうですね。自分の子を利用しようと来年は人がかなり増えるんじゃ無いでしょうか?」
「何の話だ?」
ユリスとハルの話が全くわからないんだが……
「王国学院ですよ」
「あぁ!ユリスが速攻で卒業したところか!」
「それですね。まあでも、クリス様に説明した事無いから教えますと…」
ユリスが言うには王国学院とは8〜18までの貴族の子弟が学ぶ所で初等部、中等部、高等部で単位制の学校である。そこで、貴族は勉強というよりも貴族同士の繋がりを作る為に存在するといえる。
そこで、バカ真面目に勉強だけして卒業したのがユリスである。他の2人は遊ぼうとしていたが、ハート子爵に単位の数を騙され、必要以上の単位を取ってしまいすぐに卒業させられたと嘆いていた。
設立当初は、貴族の子を人質に王都へ招集する口実として建てられたが現状では力は無くなり通うのも貴族の自由になってしまっている。
「なるほど。という事は今年で15歳になる俺は高等部に入学すればいいんだな?そして、そこで貴族の勢力図を見極めればいいんだな?」
「まあ、そういうことになりますね」
「クリス様。本当に重要なんだ。学園だからって遊んでばっかじゃいられねぇぞ。いや、俺が学園でいい思い出来なかったってのは関係ねぇからな。本当に関係ないからな」
いや、絶対僻んでるでしょ。まぁ、生死が掛かってるんだ。流石に遊ばんわなぁ。
「そういえばピアゾン伯爵嬢や王女に対してどう感じられましたか?」
あからさまにふと思い出したかの様にしてユリスは口を開いた。
「?」
俺がキョトンとするとユリスは早口で答えた。
「いえいえ、別に深い意味はありませんよ。2人ともクリス様と同い年で同級生になりますので。いえ、それだけですよ」
そういうユリスは何だか怖かった。





