酒宴とポッドインポッド
無事酒場に着いた俺たちは早速酒を飲み始めた。
「「「「カンパーイ!」」」」
「かんぱい……」
流れに流され酒場まで来てしまった俺の気分は完敗である。
他の4人はジョッキいっぱいのエールをゴクゴクと一気に飲み干していった。
「くぁー!おかわり!」
「いい飲みっぷりだねぇこりゃ俺も負けられねえな!おかわり!」
4人がハイペースで飲み続ける中俺はコップ一杯のミルクをちびちびと飲んでいた。
「そういや、名前を聞いていなかったな。にーちゃん名前は?」
「ああ、僕はクリスだ」
昼間から酒場に入り浸るのは外聞が悪いので貴族であることは明かさないでおこう。
「よろしくなぁ!クリス!俺の名前はヤクトって言うんだ」
「ヤクトかよろしく。ヤクトは多分、外国の人だろ。何でこんなとこにいるんだ?」
するとヤクトは照れ臭そうに答えた。
「いやー、自分で言うのも何だけど俺の親父がそこそこ偉い人なんだよ。んで、俺が遊んでばっかいたら、放り出されちまってな」
まだ、会って1日も経っていないがヤクトらしいな。
おそらくええとこの商会かなんかの次男以降なんだろう。
「なるほどな。まあ、頑張れよ」
「冷めてるなぁ。まあいいや!お前もミルクなんか飲んでねえと酒でも飲め!」
「いや、俺は未成年だから……」
「何馬鹿言ってんだよ。酒飲むのに歳なんて関係ねえよ」
この国では飲酒について年齢制限は法律で決まっていないが日本の法律ではアウトな年齢である。
「いやいや、俺は飲まないんだって!」
「そうか、じゃあミルクでも飲めよ。おっさんカルアミルクひとつ!」
ヤクトは、ニヤニヤとして店主に注文をした。
すると、すぐ様カルアミルク?と呼ばれる白が混じった茶色いの液体が机の上に運ばれてきた。
「クリス、ミルクだ飲めよ」
「坊ちゃんの好きなミルクですぜ」
「クリス様めっちゃ美味いっすから」
「いやー羨ましいな」
4人がニヤニヤ顔で飲まそうとしてくる。
ふふっ、こいつら俺がカルアミルクを知らないと思ってるな。おそらく、カルアとはこの世界のコーヒーの呼び方だろう。コーヒーミルクなんて前世でアホ程飲んできているのだ。一気飲みして驚かせてやろう。
「おおっ!いい呑みっぷりですね!」
「さすがクリス様ですね!」
「いよっ王国一っ!」
……
数時間経った。
「もう一杯カルアミルク!」
「うひゃークリス様もう何杯めれすか?」
すでに2人の従士は潰れて寝込んでしまっていた。
「ンなの知らねーよ!マクベスものめのめ!」
「もう、無理てすって」
「この、ドレスコード子爵様のゆうころがきけないってゆうのか?」
「そうだ、そうだ!ひゃひゃひゃ!それ、いっき、いっき、いっき!」
マクベスは、嫌々ながらもコップを受け取り、一気飲みしおえると顔を青くして店の外へ出ていった。
その後、外から液体の地面を鳴らす音と人の汚い声から何をしているのか察した。
「だらしねえなぁ。また、ユリスに鍛えなおしてもらわなきゃ」
「それよりクリスって貴族だったのかよ!ひゃひゃひゃ!」
「ウヒャヒャ!貴族以外にしか見えねえか!」
「俺なんか、王子だぜ?ひゃひゃひゃ」
「ウヒャヒャ!ベッドの下で挟まる王子なんかいるわけねえだろ!」
店の店員や客が酷く冷めた目で見ているのにも気づかず2人は大声で汚い笑い声をあげた。
「マジだって!おらん国は、暑さで食いもんがすぐダメになんから食糧の奪い合いで争いが耐えねえから争いが嫌いな俺は争いにでんくなったら放り出されちまったんだよ!あひゃひゃひゃ!」
「まじかよ!ははははっ!そんなん、ポッドインポッド作れば少し改善すんかもな!」
「なんだそれ?」
男は急に真面目な顔になったが俺はその表情の変化を読み取れず同じ調子で語った。
「気化熱っつってな水は蒸発すん時に大量の熱やエネルギーを奪ってくんだけどそいつを利用したもんだよ」
「?」
「大きな壺の中にひと回り小さな壺を重ねて壺と壺の間に濡れた砂を詰め、さらに湿らせた布を壺の口にかぶせる。砂の水分が外側の壺からゆっくりと蒸発するにつれ、内部が冷やされて農産物の腐敗が防止できるって仕組みなんだよ」
「そんなん物があるのかよ!」
「ああ!特別にただで教えといてやるよ!あははは!」
男はふと立ち上がると机に金貨を2枚置いて口を開いた。
「用事ができた!これは酒代だ、恩にきる」
と言ってスッと酒場から出ていってしまった。
「おう、またな!あははは!」
その後、俺は1人で何杯か飲んだ後、記憶を失い、目覚めた時には従士達と一緒に道端に捨てられていた。





