社交会へ
ついに、社交会の日がやってきた。
社交会の会場は街の中でも最も目立つ建物、王城であり、街の中に居れば嫌でも目に付き目に付く度に胃が痛かった。
跳ね橋を歩き水を張った堀の上を渡り。鉄で出来た堅固な城門をくぐり抜け、そこから案内人に従い広間へと通されるとそこにはちらほらと数人の貴族がいた。ここが会場となるのであろう。
ちらほらと見えた貴族は全員男爵家や子爵家。格下又は同格の貴族である。というのも高位の貴族の後に入場するというのが失礼にあたるそうだ。
そして、現在の人数を見る限り子爵や男爵の中でも早く到着したようだ。
俺は、所在なさげに立ち竦んでいると切れ長の目に銀髪で髭を上品に整えた50代から60代位の男性に話しかけられた。
「ドレスコード子爵とお見受けしましたが少し宜しいですかな?」
誰だこの人は…でも何処かで見たことがあるような。
「ええ。暇をしておりましたのでお声かけ頂いて助かりました。私のような者をご存知とは慧眼痛み入ります」
「ははははっ!ウチの娘と息子達が世話になっているんだ。知らなくてどうする」
なるほど。この人がハート子爵か。
「いつも、御息女、御子息には大変世話になっております」
「ああ。ウチの子達は優秀だが癖が強すぎて扱いきれんじゃろうがなんとか使ってやってくれ!」
ありがたいがハート家の子息達がたかが子爵家に勤める事をどう思ってるのだろう。
「ありがとうございます。まあ、むしろ慣れましたので最近は好感も持ててきましたよ」
「はははは!そうか!では、うちのユリスと婚姻してはどうだ?」
突然何を言いだすんだこのジジイは。
「そんなまた、御冗談を。私がハート家と釣り合うわけじゃないですか」
「いや、儂は大真面目ですぞ。貴公が子爵になってから莫大な財を築き領内の食料事情も改善され今現在は私塾や公務員といった人材の育成にも力を入れておられる。コレは優良物件と言っても差し支えないのではないか?」
「よくご存知で……」
「はははは!ユリスは別として下調べもせずに田舎の子爵家に息子を2人も送っとらんわい」
「確かに…」
「まぁ息子を2人も送っとるんじゃ。これから関係は深になっていくから別に無理に婚姻してくれとは言わん。老いゆく娘を心配した親心じゃて」
まぁ、ユリスの性格を受け入れて貰ってくれるような男なんて想像出来ないからな。心配するのも仕方ないだろう。
「優しいんですね」
「親なら当然の事じゃて。それよりドレスコード子爵よ。お主は貴族の知り合いが少ないだろう。儂が他の貴族に顔繋ぎしてやろう」
「いいのですか!?」
「ああ。勿論!それでは参ろうか」
これで俺の大手の取り引き先が増えると思うと笑いをこらえるのが難しかった。





