王女1
今回の話は短いですが、1話分が3話に伸びたせいなので許してください。
「話を戻していただけますか?」
ユリスから冷たい言葉をかけられた。
真剣な場で話を脱線させすぎた、と反省する。
「ごめん、それで今後のことだけど、どうするべきだと思う?」
皆にそう問いかけておきながら、内心では一つしかないと考えていた。
何をしてもしなくても、公爵家とは戦いになる。だったら、アリスを旗として戦うしかない。それを前提として、行動することだけだ。
ちらりとアリスの顔を窺う。会議が始まってからずっと黙っており、平然とした顔も変わっていない。どんな心境でいるのだろうか。心配と不安の気持ちが大きくなる。
「アリス、大丈夫?」
声を掛けると、アリスはけろっとして「何が?」と尋ねてきた。そしてすぐに「あ〜」と思い出したかのようにして話し始める。
「私が旗頭として戦うこと? 全然大丈夫だよ。だって、それしかないじゃん。公爵にとって私は邪魔になるんだから、公爵についたとしても、いずれは殺されちゃうし」
「いや……うん、まあそれはそうなんだけど」
「あれ、何か違った?」
こう平然としている所も違和感がある。けれど、何が違うとは言えないし、本当にアリスが気にしていないのなら、わざわざ何か言っても野暮でしかない。
俺は「ごめん、何もない」と言って、話を戻す。
「俺たちの方針としては、アリスを旗頭に据えて公爵と戦う為に動く、ということでいい?」
全員が頷くと、ユリスが口を開く。
「それではまず、王女の生存と公爵の暗殺を諸侯に伝えなければいけませんね」
「でもさあ、タイミングも大事じゃないかい? 公爵だって私達を誘拐って決めてるんだ。伝えるとすぐに攻めてくるんじゃないかなあ?」
ミストの言葉に考えさせられる。伝えた瞬間に両者が宣戦布告した状態になる。旗の存在を示してからじゃないと、諸侯を味方に引き込めないが、すぐに攻め寄せてくる可能性もある。
公爵家側の貴族が連携してすぐ、ということはないが、公爵家単独では直ぐにくる可能性がある。帝国に以前から話を通していたのならば、ピアゾン家は動けないので、対するはアルカーラ家、ドレスコード家連合対公爵家だ。
アルカーラ家の動向は不明であるし、戦力的に考えてもドレスコード家は微力にしかならないので、結局1対1。直ぐに攻められることも、ありえない話ではない。
と、すれば、旗を掲げる前に、オラール家との戦争の準備、他の貴族への工作など、やるべきことは山ほどある。
「大丈夫!?」
その時、ミストがふらりと椅子から落ちそうになったが、隣にいるアリスが支えてなんとか受け止める。直ぐにミストは体勢を持ち直し、椅子にしっかりと腰掛ける。
「大丈夫だよ。ちょっとまだ病み上がりだからね」
「会議はここまでにしようか」
「大丈夫だって。それに、私が抜けたとしても会議までやめることないんじゃない?」
ミストはまだ会議を続けようとしていたが、これ以上は厳しい。それに、アリスを旗頭として戦うことが決まったのだ。今後どうしていくかを考えるための情報も必要となる。
「いや方針は決まったから今日はもう良いと思う。今後その為にどうするかは、情報をまとめる時間が欲しいし」
俺がそう言うと、ハルもユリスも頷いた。





