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閑話 女性陣2

 

 クリス君が部屋から出ていった後、私はベッドに入って毛布にくるまった。


 身体はいまだに病み上がりで怠く、精神的にも疲れた。すんなりと眠れるだろう、と思ったが、全然眠りにつけずに笑ってしまう。


 ほんと、わかんないや。


 振って尚、恋に落ちている。幻滅しても仕方のないことをされたというのにだ。いや、いつもふやふやしているクリス君が、真面目に自分の意志を貫く強さを見せた所に、格好良さを見出したのかも。まあそれなら、私の脳内は想像以上にお花畑らしい。嫌ではないけどねえ。


 わからない事を考えて、わからない、と一人で笑っていると、ノックの音がした。私が返事する間も無く、扉が開かれる。


「ミスト元気?」


「大丈夫か?」


 クレアとアリスが入ってきた。雰囲気と、私の返事もなく病人の部屋に押しかけてきた所から、結末がどうなったか気になってきたのだろう。


 まあ、クリス君が部屋を出たところを知っているなら、姿は見ている。だとすると、私が叩いた頬が赤くなっているのにも気づいているはずだ。だから結末もわかっている。


 にも関わらず、聞きにきたのだから、相当意地が悪い、なんて性格でもないので、それでも気になってしょうがないんだと思う。馬鹿だなあ、二人も。それに、気持ちをわかっちゃう私も。


「大丈夫だよ。それで、何しに来たんだい?」


「え、えっとお見舞いに」


 しどろもどろに言ったアリスに、悪戯心が芽生える。


「こほっ、こほっ。実はまだ、病気を拗らせてて」


「え!? 大丈夫ミスト!?」


「あれ? 君たちは心配しに来てくれたのに、何故意外そうに驚いたんだい? もしかして、他の意図があるのかなあ?」


 私がそう言うと、アリスはバツの悪そうな顔をし、クレアは呆れて溜め息を吐いた。


「からかうのは止めろ」


「あ、バレた?」


「ミスト!!」


 からかわれた事にアリスは顔を赤くした。可愛い反応をするお姫様だ。


「ごめん、ごめん。で、熱々のイチャラブのドキドキの胸キュンの姿を真っ先に見せてくれる約束だったけど、まだ見れないのかい?」


「見れないに決まってるでしょ! 意地悪!」


 顔を真っ赤に染めた顔を、ぷいと背けてしまった。私は笑いながらも、本当に謝る。


「からかって悪かったよ。機嫌を直してよ」


「……じゃあ、どうなったか教えてよ」


 尖らせた唇からぽつりと溢した姿が可愛らしくて、またもや笑いが漏れそうになる。からかいたい欲求に駆られたが、クッと耐える。


 そろそろ素直に話そうか、と思った時、どうやら二人に対して気を許している事に気づいた。なんだか恥ずかしくなってくる。


「あれ? ミスト照れてる? おっとめー!」


「くくく、乙女だなあ。可愛い、可愛い」


 別種の羞恥心が込み上げて来て、顔に血が登って行くのを感じる。


 そんな私を見てか、二人は口をにんまりとして、お腹を抱えて笑い出した。


「だ、駄目だ。思い出してきた。で、でもどうしようもなく話したい。く、くくっ」


「ちょ、クレアやめてよ。そ、そんな、はひっ。ああ、そうか。だから私は君が好きなんだ、か、かひゅ」


「……クリス君から聞いたのかい?」


「ち、違うぞミスト。その部分だけ、お前は声が、こへが大きく、ぶはっ」


「……ッ!!!!」


 こ、この、二人どうしてくれようか! ここまで恥ずかしくなるなんて初めてだよ!!


 駄目だ、私らしくない感情にわれを失った。初めての感情に意外すぎるほど取り乱した。凄く面白くない。


「ミストかあいいよ〜」


「ああ、かあいいなあ」


「ああ、鬱陶しい! 君たちは何がしたいんだい!?」


 ウザさに耐えきれずにそう言うと、二人は互いに顔を見合わせてまた吹き出した。


「ええ、ミストがそれ言うの? あはは、照れ隠し、きゃあいいね〜」


「そうだぞ、お前はついさっき、からかったばかりじゃないか? 照れ隠しに言葉も選べないほどとは、きゅ、きゅはは」


 落ち着け。怒っても仕方のない事だ。ここはいつもの私らしく行こう。


「わかったよ、認めるよ。でも、クリス君と自分の恋愛小説、いや官能小説を山ほど書いていたのは誰だったかなあ?」


「うっ」


「それに、触れ合っただけでドキドキして胸が痛くなるのは誰だったっけ? 心臓が馬鹿弱いのかなあ?」


「ううっ」


 沈黙の時間が流れ、全員で頷きあう。


「ま、まあ。あまりそう言うことはすべきではないな。これから共に戦って行く仲間だ」


「そ、そうね。仲良くいこう、仲良く」


「私もこれからは我慢するよ」


 妙な一体感が生まれ、またも静寂に包まれる。ひと段落ついたのだが、尚も帰ってくれないので、私はため息を吐いた。


「言ったら、帰ってくれるかい?」


 頷きが返ってきたので、私は渋々話し始めた。


「というわけさ……」


 話終えて二人の顔を伺う。二人とも精一杯真面目な顔をしていたが、赤くなって今にも吹き出しそうな様子を見ていると、凄く面白くない。


 自然に唇が尖るのを感じると、二人は結局噴き出した。


「ミ、ミスト、乙女すぎるのか、拗らせてるのかわかんないけど、クソめんどくさいね」


「そうだな。告白だと言うのに、情緒もへったくれもない。恋物語としては0点だぞ。あはは」


 一瞬で取り決めが破られたことに、私はため息を吐いた。


 だがまあ、なんとなくこんな関係も悪くないような気がした。


3巻よろしくお願いいたします!

月曜日20時です。

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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
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