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閑話 アルフレッド1

長くなったので2話に分けます。

 

 父は下らない人間だ。そう気づいたのはいつの頃だったのか。


 わからない。物心ついた時にはもう気づいていた気もするし、つい最近気づいたのかもしれない。


 子を放置して酒に溺れたり、無能だったり、女に弱い訳でもない。特段おかしな態度を取っている訳でもない。むしろ、世間の評判では優秀であるとの評判だ。


 家庭を蔑ろにしているということもなく、母を無下に扱っていない。当然、俺も無下には扱われていない。


 普通の人間。普通の子供なら、尊敬すべき父親。そんな所だろう。


 だが、俺は父を下らない人間だと断言する。


 自分が間違っているとは思わない。何万人が俺を否定しようとこの考えが変わることはないだろう。


 それが、目の前にいる父への印象だ。


 夕食の席。テーブル奥に座る父は、ハリネズミみたいに黒と白が入り混じった髪をかき上げて呟く。


「オラール公爵家の悲願、この国の王となる」


 いつもの父の口癖だ。


 オラール家にはこんな話が伝わっている。


 公爵家の陰謀により、4人の子供を守って、王は暗殺されたと。


 昔、グモド家に王権が移る前の出来事である。


 この国が小国だった時からオラール家は存在しており、公爵家として権勢をふるってきた。しかし、暗殺された王の誕生により一転する。


 才気に溢れた王が周辺諸国を併呑していき、元々敵であった人間も家臣に組み込んでいった。そして王は、全ての家臣を平等に扱った。詰まる所、公爵家は古参だからといって重用されなかったわけだ。


 今も、公爵家として残っているくらいだから、別に重用されなかったわけではない。だが、当時の公爵は自分と他が同じ扱いだということに納得がいかなかった。ただそれだけの理由が、王に反意を持つ根本である。


 それから、オラール公爵家は、代々王家になることを目標とするようになった。しかし、王は隙がなく、冷静で、武にも智にも恵まれている。おまけに美形であったらしく、多くの人を魅了して止まなかった。数十年も虎視眈眈と狙っていたが、オラール公爵家が取って代わる隙などなかった。


 当然、焦る。王がいる限り、王にはなれないと。


 そこで、当時戦争をしていた隣国と手を組み暗殺することを企てた。


 結果、暗殺者を招き入れ、家臣達の子供を人質にとり、暗殺することに成功した。だが、王が亡くなった後、公爵家が王家に代われはしなかった。


 グモド家に権力闘争で負けたのだ。敗因としては、人質に取られた子供、王の腹心の家がグモド家を援助したからだ。中でも、一つの家は落ちぶれてしまう程、援助をしたのである。王を途轍もなく慕っており、オラール家が暗殺に加担したことに気づいていたのかもしれない。


 だが、国家の安定を考えてか、何か時間を稼ぎたかったのか、どういった意図があるのかはわからないが、オラール家は咎められることはなかった。


 そういった経緯があり、現在のオラール家がある。


 だからこそ、言いたい。下らないと。


「ご馳走様でした」


 食事を終え立ち上がり、その場を後にする。そして、自室に戻り、思いっきりソファーを蹴り飛ばした。


 家の悲願? 馬鹿馬鹿しい!


 その話の中のどこに、この国の民が存在したというのだ! 戦争に赴くのは民で、貴族に巻き込まれるも民!


 俺は許せない。王に優遇されなかったからという理由も、家の悲願という欲からくる欲も。実のところ、父が家の悲願だけではなく、誰もが持つ権力欲から王になろうとしていることも気づいている。


 だが、そんな欲から王になる資格なんてない! 王が持っていい欲は、民への保護欲だけだ!


「糞っ!!」


 再びソファーを蹴りつけ、湧き上がる怒りを抑える。それでも、怒りは収まりそうにない。


 俺の考えが異端であることは理解している。


 こういった思考をする要因は、貴族らしい選民主義、貴族の誇りといったものがある。だがどれもしっくりとは来ない。ある日突然理解した、それが一番しっくりくる。


 我ながら、何を適当な、理由がない、と思うが、そうなのだから仕方ない。そして、貴族として俺の考えが間違っているとは思わない。


 だから、俺は苛立ちが収まらない。父への怒りだけでなく、何の力もない自分への苛立ちからだ。


 父に計画を聞かされたのだ。卒業式の日、王と宰相、そして王女を殺す計画だ。


 国を揺らがす宰相と王は許せず、いつか殺してやろうとは思っていた。だが、その計画は隙がなく、実行されてしまえば、父が王になってしまうのは目に見えていた。こんな男を王にするなんて、しかも他国に魂を売ってまで行うなんて、絶対に許せない。


 だからといって、俺に止める力はない。父を殺そうにも、疑ぐり深い性格で、さらには公爵家の宝具がある。暗殺は不可能と言えた。


 止める術がなく、何もできないもどかしさ、卒業式が刻一刻と迫る焦燥感に駆られ、脳が焼き切れてしまいそうである。


 だが、何としてでも見つけなければいけない。俺が死んででも止める方法を。


 燭台に灯された、弱々しく揺れる橙色の火を眺め、考えに耽った。

修正プロット完成しました!読み返して、皆さんの意見をしっかり理解しました!自分は面白くなると思います!

出来事自体は変わらないので、修正したところを読まなくても大丈夫です!

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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
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