からあげ食いてえ
マクベス達と別れてから俺は宿屋を回ったがどこも満室で断わられ続けたが繁華街から少し離れた寂れた宿屋をとることができた。
そして、今は約束の時間までメインストリートの屋台を回って暇を潰しているところだ。
「おい、坊主!王都は始めてか?あんまフラフラしてっとぶつかっちまうぞー」
俺がいい匂いにつられあちこちとフラフラしていると屋台のおっさんが軽い口調で話しかけてきた。
「いや〜あちこちに美味そうなもんばっかり並んでるもんだから目移りしちゃってさ!」
「ハハハハッ!王都の屋台は競争相手が多いからみんな美味い店以外は潰れちまうからな!」
おっさんは大声で笑った。
辺りには、串焼きや揚げ物など様々な屋台が並んでおり、屋台の裏では大きな長机と長椅子が並んでおり昼間にもかかわらず屋台の食べ物を食べながら酒を飲んでる人がいて楽しそうに騒いでいる。
「おっさんは何売ってるんだ?」
「うん?俺か?唐揚げを売ってんだが、今日はもう品切れだ!姫様の誕生日効果で姫様々だ!ガハハハ!」
唐揚げか。あの、一口頬張ると肉汁が溢れて衣もサクサクでめちゃくちゃ美味い唐揚げか。前世ではおれの大好物だった唐揚げか。
くっそ……食べたかった……
「お、おい坊主そんなしんきくせえ面すんなって。ほら、まだまだ他の屋台もやってることだしな」
「他の屋台に唐揚げはあるのですか?」
「それはねぇけどよ……」
「ですよねぇ……」
2人の間に気まずい空気が流れた。
すると、意を決したようにおっさんが口を開いた。
「わかった!俺がお前の分の唐揚げも作ってやる!」
「本当にいいんですか!?」
「ああ。男に二言はねえよ!」
「うぉっしゃああああ!」
これで唐揚が食えるヒヤッホー!ありがとうおっさん!
「ただし条件がある!」
「条件?」
「ああ!これからお前に作ってやる唐揚げはいつも良くしてくださる方がいつ来てもいいように残しておいたものなんだ」
「そんなのを俺にくれてもいいのか?」
「ああ。絶対に来るとは限らないしな。でも、もし今日来たらすまないが俺と一緒に謝ってくれ」
なるほど、まあ常連さんの為に残しておいたってことか。謝るだけで唐揚げが食えるならいくらでも頭を下げてやる。
「わかったよ!じゃあ僕はあそこの椅子で座って待ってるよ」
と俺はおっさんに代金を渡してから座った。
ああ。何年ぶりの唐揚げだろうか。めちゃくちゃ楽しみだ。
とまだ見ぬ唐揚げに恋い焦がれていると女の子の高い声が聞こえた。
「どうして今日は無いのよ!」
「ちょっ、声が大きいですって!」
ふと、見ると唐揚げのおっさんがなんか、フードを被った小柄な少女と揉めていた。
何してるんだろ?とぼーっと見ているとおっさんに手招きされた。
「おい坊主ちょっと来てくれ!」
呼ばれるがままにおっさんのところに行くとフードの少女の美しいブルーの瞳に睨まれた。
「悪いな坊主。常連さんが来ちまってよう。今日に限ってどうしても食べたいらしくて引いてくれねえんだ。俺は唐揚げがそろそろあげなきゃなんねえから話あって決めておいてくれ」
おっさんは言い放つと屋台に入っていってしまった。
「唐揚げを食べたいガキってあんたのことね!残念だけど今日のところは引き下がってちょうだい」
なんだこの高慢なガキわ。俺は26プラス13の39でガキではない。
「いや、すまないが引き下がってやる事は出来ない。今日を逃すといつ食べれるかわからないんでな」
「なんでよ!ほぼ毎日やってるんだから別の日に来なさいよ!私は今日食べたいんだから!」
「そう、キャンキャン吠えるな少女よ」
「吠えてないわよ!」
とグルグルうなり始めた。
なんか、チワワっぽいやつだな。
「わかった。じゃあ半分こにしよう」
「いやよ。もとも私の為に用意してあったのよ!なんで半分もあなたにあげないといけないわけ?」
くそうぜえなマジで。
その後も話は平行線をたどった。





