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教室にて

更新止まってすみません。

まだ病み上がりなので、いつもに増して短いです。

止まった分は、なんとか取り返します!

 

 白んで行く、早朝。冷たい空気。青白い廊下にミシンのような速い足音を響かせる。


 服についた鉄臭い匂いを振り切るように走る。息は荒く、口から白い煙が、短く溢れ出ている。しかし、肺の窮屈さは無く、頭はむしろ、明瞭。ただ教室までいち早く着きたい気持ちで自然と足が前に出てしまう。


 階段を駆け下り、踊り場からは、飛び降りた。足にズシリとした衝撃が走る。しかし、しゃがむ事すら、煩わしく、こけそうになりながらも前へと進む。


 渡り廊下の冷たい空気を断ち切り、最後の廊下を駆けると、立ち止まる。


 目の前には、埃で煤けた引扉。軽く開けられる扉。だが、重くて厚い鉄門に見えた。


 開けば、未来が決まる。生死を賭けた門と言っても過言ではないのだ。


 けれど、すぐに手を掛け、恐る恐る教室の扉を開く。


 ギシギシ、となる扉の隙間からは、窓の外の青い世界しか見えない。


 喉で、飲み込んだ唾がつまり、ぐっと胸を押さえた。しかし、一縷の望みを託して教室に一歩踏み入れる。


「だ、よな……」


 空虚だった。


 教室内は、ただ黒い机、椅子、教台が佇んでいるだけ。苛だたしいほどの静謐な空間。この場だけ、時間に忘れられたように空虚であった。


 認めたくないからか、必死になって、目を凝らす。だが、どこにもいない。


 いる訳が無い、そんな想いに頭を振りつつ、机の下、教台の裏、隅々まで探す。しかし、どこにも誰の姿はなかった。


 ふらふらと、倒れこむように、開きっぱなしの椅子へ座る。そして、歯をきしませて悔やんだ。


 思い返せば、ただ派閥に入ることに夢中で、不注意すぎた。


 まずは、出された課題。普通に考えれば、数週間分の食料、しかもご丁寧に持ち運べるようにして来い、と言われた時点で、遠征用だとわかる。

 それに、その程度のこと、アルフレッドなら簡単に用意できる。もっと言えば、貴族なら他の誰もが出来ると言ってもいいことだ。だが、それでも俺に頼んだのは、俺に使わせるからだと考えられる。


 また、時間を指定した所から、そもそも課題かどうか疑うべきだったのだ。一概には言えないが、この課題を条件とするならば、時間ではなく、期間を指定する方が多い。


 アルフレッドが派閥の人間たちに掛けた言葉もだ。アルフレッドは『俺に何があっても、ドレスコードの奴を信じろ』と言ったんだ。もう既に、アルフレッドの中では自分が自害してでも、俺を動かす事に決めていたんだと、わかる。


 悔しさに顎に力が入る。


 アルフレッドが自分の派閥を増やそうとする事に難色を示したのも、王族派閥から戦力が割かれるのを恐れたため。だが、そこで止めては俺に怪しまれてしまう。だから、『俺に何があっても、ドレスコードの奴を信じろ』という言葉を選んで、少しでも王族派閥にしようとしていたんだ。


 他に、ユスクの話では、模擬戦の頃から機嫌が悪くなった、と言っていた。アルフレッド、オラール家が模擬戦に関与したのはアリスの暗殺を狙った事だ。アルフレッドから誇りの話を聞いて、オラール家の暗殺はアルフレッドにとって許せる事ではないと理解する。


 事が起きてから全ての行動が繋がった。


 ハナっから、俺は掌の上。そして今も、上がる事のない手の平ですら踊らされている。


「くそっ! 俺の馬鹿!」


 そう言って、机に拳を叩きつけたその時。教室の扉が開いた。


「何……して?」


 猜疑の籠った声が聞こえる。だけど、それは澄んだ、美しい声。強く引かれたように、声の方へ顔が急ぐ。


 そこには、立ち竦んでいるクレアの姿があった。


活動報告あります

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コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
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