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新しい目標

 

 今日は久しぶりの登校。怪我のダメージは全く残っていないとうのに、足が重くてしょうがない。


 だが、これからの学園生活での方針は決まった。これからは、それを達成するために学園に行かなければならない。


 方針は、結局ユリスと話した時から、家を出るギリギリまで悩んだ。ピアゾン家、アルカーラ家、オラール家、どの派閥がこれから優位になるのかを昼夜問わず会議したのだ。


 会議は、まず模擬戦までで得た情報を下に各家の評価を決めた。


 ピアゾン家は、あのミストが当主になっている。ミストは今までの経験からして、とんでもなく強い。それは、武力とかじゃなくて、頭の回転だとか、知力といったもの。凡人には見えない世界が見えているように思う。


 加えて、あのチート魔法。五感の強化ってだけでも、とんでもないのに、ミストが使うと、第六感すら強化されてるんじゃないか、と度々感じた。


 アルカーラ家についてはあまりわからないが、クレアを育て上げた家だ。模擬戦でのクレアの戦闘能力は並外れていた。子供の頃、ユリスに嬲られていた時と同じくらい歯が立たなかったと思いだす。


 だから、クレアだけじゃなくて、アルカーラ家全体としても戦闘能力が高い、と考えても、そうは的外れじゃないだろう。


 そして、何よりオラール家だ。アリスを暗殺しにきた集団は、隣国のトーポ帝国の刺客である事は間違いなく、オラール家にも関係しているのは間違いない。


 そこから、俺たちが立てた仮説は、隣国のトーポ帝国がこの国の王位を狙っているというものだ。


 昔戦争していた相手だし、当然といえば当然なのであるが、この情報は大きい。


 もし、内乱の最中に王位を狙って攻め込んで来れば、この国は滅ぼされる。


 さらに、内乱をオラール家に肩入れすることにより、オラール家が覇権をとったする。オラール公爵の妻は、帝国の皇女であり、その子供アルフレッドが王になれば、王家に帝国の血が入ることになる。


 この意味として、帝国側は、皇帝の血筋でも王族が死すれば継承権を主張出来るようになるのだ。そうすることにより、帝国側は攻める口実が出来、尚且つ、侵略ではないので、国民に不満のない形で統治することができる。


 まあ、これらのことは仮説にすぎないし、他にも考えられる事は山ほどあるので、あまり気にしない。ただ一つ重要なのは、オラール家に帝国のバックがあるという事だ。


 その情報を踏まえて、導き出された結論は、オラール家が優位であるという事だった。


 アルカーラ侯爵家は、今回の件により、クレアは婚姻に対して、消極的になったであろう。よって、家内の継承争いはゴタゴタとしていくに違いない。


 ピアゾン家もミストの能力は高いが、流石に帝国とは、戦力が違いすぎる。それに、帝国に対して最も近い大貴族はピアゾン家であるので、対処に追われるだろう。


 結果として、オラール家について行く事が一番だという結論に至ったのであった。


 だが、まだ行動に移すのは早計であるので、今まで通り評価を上げつつ、情報を集めること。加えて、ちょっとずつオラール家に擦り寄って行く事が方針なのだ。


 よし!これからも頑張ろう!


 決意を新たにして、教室の扉を開いた。


 教室に入ると、いつも通りにガヤガヤと次の授業を待つクラスメイト達で沸き返っていた。が、クラスメイトの一人が俺の姿を捉えると、口をぽかんと開けた。そして、その驚愕は俺を見る人が増えて行くたびに伝染していく。


 遂には、静寂に包まれたかと思えば地鳴りするような歓声が沸き起こった。


 え!? なに!? なんなの!?


 訳もわからず、呆然と立ち尽くしていると、クラスメイト達に囲まれる。まるで、金八先生のワンシーンかのようである。


 普段なら気を良くして、ニヘラと口元を崩す状況ではあるが、訳の分からなさが強すぎて、焦りが勝つ。


 戸惑っていると、生徒達が口々に話し始める。


「クリス君だ! あのクリス君が帰ってきたぞ!」「模擬戦の英雄だ!」「模擬戦で大怪我をしてまで守るなんて本当に凄いわ!」


 クラスメイトの言葉に薄々状況を理解する。


 あぁ。そう言えば、模擬戦での傷は名誉とか、クソくだらない話があったなぁ。


 この、様子を見ると、当初の目的、評価を上げるということは達成したのだろうけど。なんだろう。何故か全く嬉しくない。


 俺は、クラスメイト達に適当に言葉を返して、群れを散らした。


 そして、席についた。すると、隣から声をかけられる。


「ありがとう」


 その声は何処と無く、か細く、それでいてぶっきらぼうだった。あまりにも普段とは違う物言いに驚き、首を勢いよく回した。


 そこには、前を向いたまま、頰をほんのりと髪と同じ桜色に染めたミストがいた。


「なんだい? クリス君?」


 ちょっと、不機嫌そうに呟いたミストに、なんだか可愛いく思えたが、追求するのはやめておいた。


「ねぇ、あれからどうなったか聞いていい?」


 俺がそう尋ねると、ミストは普段の調子に戻って話し始めた。


 あれから、黒衣の男達は捕まった後に自害したのだと言った。そして、今は身辺を調査中なのだという。


 そして、話しはアリスとクレアの話になる。


「姫さまはね、後々事情を知ってさ、罪悪感から一時不登校になってたよ。それでさ、もう一人は……」


 そう言って、ミストは指差した。


 そこには、頭を抱えて机に突っ伏している、クレアの姿があった。


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hsub8z5zdno020cehytofvvfdchw_iga_9s_dw_2
コミックス2巻6・26日に発売ですよろしくお願いします>
― 新着の感想 ―
[気になる点] オラール家が公爵だったり侯爵だったりします どっちかよくわからんです
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