人材と社交界の報せ
勢いよく開いたドアと共に銀髪の男が駆け寄ってきた。
「クリス様!もう限界だ!やってられねえ」
「いきなりどうしたんだハル?」
「日に日に仕事が増えていくじゃねえか!人を増やしてくれ!」
「この前、追加の文官を雇ったばっかじゃん。それに、これ以上僕に雇う伝手なんてないんだ」
この前もハルからのクレームによって細い伝手を辿ってなんとか採用できたのだが、ただでさえ希少な文官を採用することは非常に困難なのだ。
「クリス様。今はまだなんとかなってるかもしれませんがそのうち首が回らなくなってきますぜ」
たしかに。未だに人口は増え続けているため必然的に文官だけでなく様々な人材が足りなくなっている。
人材の育成が必要だな。
そうだ!私塾を開こう。孤児や従士を対象にして子爵家で働くことを代償に授業料をただにしよう!ということを伝えた。
「私塾か。学校を建てるんであれば面倒なしがらみがあるだろうがあくまで個人でやる私塾という形にすることで容易に運営できるし運営費の方はなんとか捻出できるにしても塾の先生はどうするんだよ」
「ああ。それは最近暇そうにしているユリスにして貰うとするよ。ハルが来てくれたおかげでユリスが暇になっているからね」
「いや、妹に仕事やらせてくれよ。文官足りないんだから。まあでも妹が適任っちゃ適任だろうな」
「ユリスはドレスコード子爵家の家庭教師をしてきていて実績があるからね。実際、兄貴達はユリスの教育のおかげで学者になったからね。間違ってもユリスの教育という名の拷問を他人にも味わって貰いたいとかそういうのじゃないからね」
「絶対そういうのだろ……まあでも妹には文官としての仕事もあるんだから妹が仕事しているあいだに教えられる代わりの人間を用意して置いてくれ」
「ああ。わかったよ。取り敢えず子爵家の従士の中で代わる代わるに派遣するとするよ」
その後、設立された私塾ではユリスのスパルタ教育と従士達のユリスの訓練に対する腹いせによるスパルタ訓練で優秀ではあるがひねた性格をもつ塾生が大量生産されたのはまた別の話。
「私塾の件はいいとして、俺は即戦力の文官が欲しいんだよ!」
唾を飛ばしながらまくしたてられてもなぁ。
実際あてがないんだし、寝ずに働けというしか……はっ!現代日本で自分がされて苦しんだことを人にさせようとしていた?
「すまなかったハル!俺が間違っていた!今すぐ文官を探そう!だが、あてがない!一緒に採用する方法を考えてくれ!」
「お、おぅ。急に熱くなったな……」
「ああ!俺は大きな間違いをしていた!俺はそういうのから逃げてスローライフを送りたいんだ!」
「そ、そうか。まあなんでもいいけどよ。俺だって考え無しに言ってる訳じゃねえんだ。こいつを見てくれ」
と言ってハルは1枚の手紙を差し出した。
やたら、高級そうな手紙だけどなんの手紙だろう?
「この手紙は?」
「開けたらわかると思うが恐らく社交界の手紙だ。しかも、王家の印がしてあるから王家主催だろう。腐っても王家だ。殆どの貴族が来ることになる。そこでコネをつくって紹介してもらうか文官を引き抜いてきてください」
手紙を開けると第2王女15歳の成人記念パーティーと書いてあった。





