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もしも鏡に、その映ったものすべてを記憶する能力があったとしたら、すべてはすぐ明るみに出てしまうのだろう。けれど、鏡にはその能力がない。
震えているのは恐怖にだろうか。まさか、この状況に興奮するはずがない。やはり恐れているのだ、そうとしか考えられない。次の一秒後にはわたしの命が失われてしまうのだろうが、なるほど、死の直前というのはそれまでの人生よりも長く長く引き伸ばされるというのは嘘ではないらしい。
けれど、走馬灯のように過去を思い出してくれたほうがまだ幸せというものだ。神様は無慈悲で、そしてよく見ていて下さる。つまりわたしにはそのような幸せな瞬間など必要がない、ということだ。
顔はやつれ、目も空ろだ。何にも、もはや抗う力も残されていない。無駄だということを認識している。
すべてが自分の意思のままに動くのであれば、わたしの死はより長く引き伸ばされるだろう。だが、そうであれば、この一秒がこれほどまで長く引き伸ばされることはない。わたしの死はもはや変えることができない。
やり忘れたことはないだろうか。
山のようにある。
否、この瞬間のために。
最も大切なことはすでに終わっている。
そう、終わってしまっている。
もう一度鏡を見る。
なんとも長い一秒だ。
わたしの、最後の瞬間をあざ笑うように、即頭部に当てられた一丁の汎用自動拳銃。わたしはこれを昔からよく知っていた。いつからか見なくなり、そしてそれがどこに隠されているのか、わたしには分かっていた。だからこそ……。
考えている時間は残されていない。鏡の中の、それを握る黒い皮手袋。夏だというのに、厚そうな服を着ていて、腕は見えない。その顔は恐ろしいほど青く、瞳の奥に悲しみが見える。この悲しみに抗えようはずもなく。
その黒い指の動きを、最後の瞬間まで観察している。
ああ、
避けられるはずもない。
何年にも感じられた最後の一秒は、実にあっけな




