こーてーさんのおしごと
帝都、帝城、謁見の間――
「陛下」
「なんだ」
「陛下は、人の成長を読む力をお持ちなのですか?」
「ん? 何を言っているのだ、お前は」
「いえ、以前言ってたじゃないですか、お前はもう十分に強い、って、あれは隣の国の勇者でしたか?」
「ああ、そんな事もあったな、それと成長を読む力とかいうのとどう関係あるのだ?」
「玉座に座る、一国の王には不思議な力が備わって、人の成長を読むことが出来ると聞きます。次のレベルまでいくつだとか」
(レベル? レベルってなんだ?)
「むしろ、この力がなければ王とすらいえないとも聞きます」
(えっ、そうなの?)
「当然、陛下もこの力お持ちですよね?」
「う、うむ……」
(初耳なんだけど、そんな力。 魔法? 魔法なの? )
「やはり、だからユウさんの力も即座に見抜いたというわけですね! 先代の皇帝陛下もユウさんの姿には最初驚いておられましたが、やはりすぐにその力量を見抜いて冷や汗を流したと聞きます」
(ええっ、そうだったの!?)
「人の力を見抜く能力、代々一国の主に備わる能力、時折宰相や大臣にも身につくといわれておりますが、不肖私めにはその才能は備わっておらず……」
「う、うむ、良いのだ、お前は政治的手腕に長けているから、助かっている」
「ありがたきお言葉に存じます。 しかしながら、やはり私めにもそういう能力があれば、陛下をさらに助ける事ができましょうに……時に、ユウさんはどれほどのものであったのですか?」
「え……」
「自分の伴侶になさりたい、というのはその力故とも思ったのですが」
「え、ええと……」
「そういえば、騎士団長や冒険者ギルドのマスターの力量等も気になりますね」
「そ、それはだな……」
「……ああ、やはり人のプライバシーにかかわる部分ですから、極秘、ということでしょうか?」
「う、うむ」
「流石ですね、でも私だけには教えてくれてもいいんじゃないでしょうか?」
「えっ」
「何せ、先ほど政治的手腕に助けられている、と陛下直々にお褒め下さったのですから、そういった情報をいただければよりよい国づくりを――」
「いやいやいやいやいや、ほ、ほら、国のトップシークレットだからね? おいそれと」
「私めもそのトップの一人という認識だったのですが、どうやら先ほどのお褒めの言葉はお世辞だったようですね」
「いやいやいやいやいや、違う、本当にお前には助けられている!」
「ならば!」
「いや、でも」
「いいじゃないですか、減るもんでも無いし」
「へ、減るよ! この能力は、人に言うと減るよ!」
「どのように?」
「どっ!? どのって、その、こうすぅーっと」
「すぅーっと、何が減るんです?」
「た、たましい!」
「魂! なるほど、陛下の魂が減っては私めも困ります。失礼いたしました」
「う、うむ、わかればいいのだ、わかれば」
「はい」
「………………」
「……………………」
「嘘だろ?」
「は? いや、能力を見る力、という部分は本当ですよ?」
「え、ほ、ほんと?」
「はい、そういう能力を持った人間はまれに現れます」
「はぁ……あ! お前謀ったな!?」
「ようやくお気づきですか」
「くそ……何故だ!」
「いや、暇なんで」
「は?」
「あと、陛下を弄ると丁度良い暇つぶしになるので」
「えー!?」
帝都は今日も平和です。




