第四話
「では、始めますね」
翌日の午後、その時間が来た。
凛はブレザー姿から、白い服に変わっていた。
高そうだなー、汚さないようにしないとな。
対して俺はいつもの銀色の鎧を着ている。
「……敬語」
「え?」
「……敬語、止めて」
「で、ですが……」
まあ正直、嬉しいんだけどね。
それに凛に敬語使うの違和感ありまくりだし。
因みに、1日考えた結果、凛には……勇者たちには正体を明かさないようにした。
もしかしたら、向こうでは俺はいない存在かもしれないし、それに、言って忘れられてたら立ち直れそうにない。
まず、信じてもらえるかどうか怪しいし。
変な人とは思われたくないからな。
「……わ、分かりました」
「分かって、ない」
「あ、わ、分かっ……た」
凛の奴、本当に変わんないな。
強引なところとか。
「その前に、この世界について説明しま……説明する」
なんか敬語が身に染み付いてしまってるな。
てか凛、無言で見つめないで。
無表情だからめっちゃ怖い。
「えっと、この国が、魔王がいる魔大陸に一番近い国ってことは……聞いたん、だよな?」
「ん」
「で、その魔王はとても強いが、聖剣には弱い、その聖剣は勇者しか扱えない」
「ん」
どうやらそこら辺は話したらしい。
まあ、めっちゃ重要なとこだもんな。
「で、魔王を倒す前に、まずはこの国を安全なものにしなきゃいけない。つまりこの大陸に侵入してきた魔族を倒すわけだ」
「……」
「その為には強くならなきゃいけない。幸い、召喚された勇者様たちにはち……特別な補正がかかっていて、簡単にとは言わないが、他の人より早く成長する」
危ない危ない。
今チート補正って言おうとしちゃったよ。
この世界にはチートなんて言葉はないからな。
気をつけないと。
その後も、軽く説明する。
何回か、敬語で言ってしまって訂正させられたりしたけど。
「さて、剣術の修行を……と言いたいどころだけど、まずは体づくりからだな」
「……?」
凛は首を傾げた。
「体づくりは基礎中の基礎。まずそこがしっかりしてないといけないからな」
「……分かった」
今日は剣を振らない。
ひたすら走るんだ。
女の子には少しキツいかもしれないけど、ここが出来なきゃ魔王討伐なんて夢のまた夢だ。
「じゃ、走るか」
「ん」
そして俺たちは、走り出した。
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「……はあ」
「フィン、どうした?」
翌日の午前、俺はフィンと町の警備をしていた。
「いや、なんて言うか……大変だ」
「そ、そうか」
話を聞くと、どうやら海人のハーレムメンバー──俺がそう名付けた──の一人、巨乳の少女が色々と言ったそうだ。
走りたくない、とか。
早く剣を振りたい、とか。
仕方なく、体づくりは止め、素振りをしようとしたのだけれど、そこでまた。
フィンと勝負がしたい。
そう言い出したそうだ。
勇者の仲間相手に本気は出せず、しかし手加減すると拗ねり……もう大変だったらしい。
海人とその幼なじみも乗ってきたらしく、止めることは出来なかったそうだ。
……うん、フィン、マジでドンマイ。
「俺たちの方は順調だったぞ。楽しかった位だ」
クール君の件がバレてるか心配だったのは秘密だ。
だが楽しかったのは紛れもない事実だ。
俺がそう言うと、フィンは少し不機嫌オーラを出した。
「あの子、可愛かったからな」
「いやそれとこれとは関係ないんじゃない?」
「どうだかな」
どうやら、俺の方が順調に進んでるのが気にくわなかったらしい。
確かに今の言い方はまずかったな。
「それにあの子が可愛いのは否定しないんだろう?」
「いや、それは……」
否定できない。
俺が言葉に詰まると、フィンの不機嫌オーラは更に増した。
どうやら知らない内にやってしまったようだ。
「だ、だが、なんでそれで怒るんだ?」
「別に私は怒ってないぞ」
いや、怒ってるでしょ。
でもこれ以上訊いても話してくれないだろう。
……はぁ。
どうしよう。
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剣術の指南が始まって、二週間が経った。
一番成長したのはやはり勇者である海人だった。
だが、それは魔法も合わせた総合的な話。
剣術のみなら、海人の幼なじみだろう。
でも俺は、凛が一番強いと思っている。
理由はその頭の良さだ。
魔法は適正が良かったらしく、一番上手く操れるらしい。
何回か見せて貰ったことがあるが、とても綺麗だった。
魔力が安定していて無駄がなかったのだ。
これなら、レベルの高いものも使えるだろう。
だが俺は、初歩的な魔法を完璧に、無詠唱で唱えられるようになることをお勧めしておいた。
あくまでお勧め。
別にそうしなくてもいいのだ。
そして剣術。
才能は余りなかったが、そんなことはどうでも良い。
最初こそ、出遅れてしまったものの、俺の話を真面目に聞いて直ぐに実践するから、吸収は早かった。
それだけじゃない。
卑怯だと言われるかもしれないと思いながら、騙し討ち等の奇襲攻撃を教えてみたところ、それを更に改善し、実践したのだ。
闘いに華は持ち込まない。
大事なのは、生き残ることだ。
海人辺りは卑怯だとか言いそうだけどな。
その海人。
俺はどうやら、彼に嫌われているようだ。
行動には出ていないが、そう感じる。
俺も俺で、何となく海人とは合わない気がするのだ。
つまり、生理的に受け付けない、という奴だ。
でもおかしい。
前世では普通に話していたような気がする。
と言うかよく話す奴だった気がする。
と、言うことは、『ユアン』としての俺が、海人を受け付けてないのだろう。
理由は分からない。
候補として上がるのは、ハーレム野郎ふざけんな! だが。
……それか。
俺って器小さいな~。