表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

第三話

「失礼します」


 俺は勇者と、その仲間たちがいる部屋に入る。

 そこには騎士団の団長と、フィン、そして王女様もいた。

 彼等は全員、長方形の机を囲むように座っていた。

 入ってきて正面、前方には王女様がいる。

 向かって右には勇者メンバー。

 左には団長と、フィンだ。

 恐らく、今後について話していたのだろう。


「城の外を歩いていたところ、勇者様と共に召喚された男性に声をかけられ、これを渡して欲しい、と」


 そう言って一つの紙を出す。

 そこには日本語でメッセージが書かれていた。


「見たことがない文字なので、恐らく異世界の文字でしょう」


 王女様にその手紙を渡す。


「う~ん。……カイト様、宜しければ、読んでくれませんか?」

「分かりました」


 王女様は海人に手紙を渡す。


「では、読みます『俺は簡単に帰る為の方法を見つけることが出来た。だから帰らせて貰うことにした。魔王討伐など知らん。俺は帰る。それだけ伝えたかった。ま、魔王討伐頑張るんだな』」

「……」


 あ、やばい。

 やりすぎた。


 その手紙。

 書いたのは当然俺だ。


 クール君の性格を考えて書いたのだけれど……改めて読まれるとマズいと思った。

 ……王女様、本当にすいません。

 あれでも改善した方なんです。

 最後の一文は性格からして言わなそうだけど付け足さないとヤバいから……。

 とにかく、バレなければいいだろう。

 うん。


「……見せて」


 何かが気になったのか、凛が言う。

 ……凛の奴、頭良いからな、ば、バレないよな?

 まさか俺が日本語を書くことが出来るなんて思わないよな?


「……」


 凛はそれを見て、考え始める。

 その様子を他のメンバーが無言で見つめている。

 なんか気まずい。

 って言うか胃が痛いです。


 数秒後、凛は口を開いた。

 ……俺を見て。

 え?


「……名前」

「え、わ、私の、ですか?」


 凛は頷く。


 いきなりふられて少し戸惑う。

 怖いな。


「私はルニス王国騎士団副団長、ユアン・トーレスです」

「……」


 凛は何も応えず、また何かを考えて始める。

 そしてその後、とんでもないことを言った。


「……剣術、ユアンから習う」

「なっ!!」


 思わず声が出てしまった。

 しまったと思ったが、どうやら俺以外の人たちも発していたようだった。

 フィンや海人等々。


「な、何故でしょうか?」


 俺が問う。

 平常心平常心。

 ば、バレたわけじゃないよな?

 いや、もしかしてあの手紙で怪しい部分があってそれを確かめようと……?


 駄目だ駄目だ。

 落ち着け、落ち着くんだ。

 頑張れ、俺。


「……駄目?」

「サイカ様、彼は」

「凛」

「……リン様。彼は騎士団副団長でして、余りそのような時間は」

「ユアンは?」


 王女様の言葉を二度も遮るとは。

 凛、相変わらずだな。

 だが、俺は胃に穴が開きそうだ。

 止めて欲しい。


 因みにユアンは? とは、俺はどう考えてるかってことだろう。

 それだけじゃ分からないと思うんだけどなぁ。

 まあそれが凛だけど。


「私は、良いですよ」

「……決まり」


 断れない。

 断れるわけない。


 絶対疑われてる。

 凛の奴、勘が良すぎなんだよ。

 くそっ。


「む、ユアン、何故だ」


 そこでフィンが入って来た。

 やっぱり、自分が教える予定だったのに急に俺がってなったら怒るよな。

 例え一人でも。


「俺はまだ副団長。余裕はある。それに、優先順位は此方だ」

「ぅぐ……確かに、そうだが……」


 フィンはそれ以上言ってこなかった。

 すまない、フィン。

 後で謝るから。


「……楽しみ」


 そんな俺の心を知ってか知らずか、凛は呟いた。

 無表情のままだが、嬉しそうに見える。

 ああ、もう、嫌な予感しかしない。

 だって海人、めっちゃ俺んとこ疑いの目で見てくるもん。

 俺、敵キャラと思われてないよな?

 ないよな?




 ----




「ユアン」

「ハイ、ナンデショウ」


 俺は今、自室にいる。

 にも関わらず、正座している。

 目の前にはいつも通り無表情で立っているフィン。

 でもいつもより怖いよその表情。


「勇者様の仲間に手を出したらどうなるか分かるよな?」

「ハイ、勿論デス」


 手を出すわけがないだろう。

 そんなことをしたら副団長解任どころじゃない、牢に入れられるぞ。

 しかも凛に、かつての友達に手を出すわけがない。


 フィンの奴、嬉しいけど心配し過ぎだ。

 それにそんな脅迫みたいなことしなくても良いのに。


「と、ところでフィン。剣術、上手く教えられそうか?」


 怖いので話を逸らす。


「ん? まあ大丈夫そうだな」


 成功。

 楽勝流石フィン。

 全く疑ってない。


「勇者様、イケメンだっただろう?」

「そんなのはどうでもいい」

「……やっぱり。そろそろお前、恋愛のことも考えたらどうだ?」

「わ、私は考えてるぞ!」


 フィンの顔は真っ赤だ。

 恋愛の話題を振るだけでこれだ。

 恋出来んのか? こいつ。


「なら恋したことあるのか?」

「っ……いや、それは……これから」


 これからって。

 もう十七歳だぞ。

 ま、俺も彼女出来たことないんだけどね。

 ……あれ? 目から汗が。


「と、とにかく、今は明日のことだ」


 あ、話逸らした。

 ってあれ?

 なんかさっきは俺が慌ててた気がするけど……。

 まあ、いいか。


 剣術の指南。

 それは明日から始まる。

 午前中は魔術についてやるらしく、剣術は午後だ。

 この世界についての勉強は、しないらしい。

 最低限のことはもう王女様が言ったらしいから大丈夫だそうだ。

 でも少し、俺も剣術の指南のついでに教えておこうかな。

 じゃあその為の準備もしとかないとな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ