第二話
勇者召喚。
それを行えるのは王族のみと伝えられていて、王女様が行うこととなった。
流石に長男の王子様にやらせるわけにはいかないだろう。
そんな勇者召喚。
過去に行われたことが数回あったらしい。
現在と同じで魔物によって国が崩壊されそうになった状態だったそうだ。
勇者召喚によって現れるのは、勇者だけではない。
その従者も同時に召喚されるらしい。
実際に今、目の前には複数の人がいた。
男子は黒い学ランを、女子はブレザーを着ている。
懐かしいな、その制服。
勇者っぽいイケメン。
たしかその幼なじみだった気がする少女。
少し気が抜けている巨乳の少女。
無口で背が低い長く綺麗な髪を持っている少女。
一人、立ってクールに今の状況を確認している様子のイケメン。
イケメンの周りに少女たち。
クールなイケメンは少しだけ遠くにいる。
ああ、あれだな。
うん。
あいつ、巻き込まれたんだな。
テンプレ過ぎるぞ。
この五人。
その中で名前を覚えていたのは二人だけだ。
勇者っぽいイケメン──風早海人。
無口で背が低い長く綺麗な髪を持っている少女──西華凛。
海人とはよく話していた……気がする。
仲が良かった……気がする。
何か違和感かある。
結構年が経過したのもあるけど上手く思い出せない。
凛とも良く話していた。
俺の中学時代からの友人で、頭が良かったから教えてもらったりもしていた。
無口だけど良い奴、ってのは覚えている。
他の人は覚えていない。
名字もだ。
逆に海人と凛のことをフルネームで覚えていたのが自分でも凄いと思う。
さて、巻き込まれたクール君。
名前分かんないけど……まあいいや。
取り敢えず、想定内だ。
海人達はその後、少し広い部屋に案内された。
俺はそこで彼らと別れる。
きっとこの後、自己紹介やら説明やらがあるのだろう。
因みに言語は違うが通じる。
召還された時のチート補正だ。
……俺はなかったんだけどな。
俺は今日、この後は自由に行動しても良いことになっている。
と言うかそうしてくれるように団長に頼んだ。
俺は城内にある自室に戻って、準備を始める。
勇者召喚の話を聞いて、元々備えていた。
そんな時、ドアがノックされた。
「ユアン、いるか?」
男っぽい口調の女性の声。
彼女だ。
「入っていいぞ」
「分かった」
入ってきたのは予想通りの人物。
俺と共に騎士団に入団した女性──フィン・ミーティア。
赤髪のポニーテールで少しキツい目つき。
陸上部が似合いそうな彼女は、とてもスレンダーである。
因みに出ているべき所は出ていない。
背は、当然俺よりは低いものの女子にしては高い。
そんな彼女はいつも通り、無表情だった。
「勇者様は、どんな御方だった?」
「まあ、イケメンだったよ」
「外見なんてどうでもいい」
そもそも、勇者があの中の誰なのか、正確には分かっていないのだが。
勇者は絶対に男らしいから、どっちかのイケメンなことは確かである。
まあ、海人だろうな。
「優しそうな感じだし、大丈夫なんじゃないのか?」
「なら良いが……心配だ」
フィンが心配しているのは、勇者たちに剣術を教えるのが彼女だからだ。
剣術の腕は、騎士団長をも超えるものだからな。
「ま、そんな心配するなよ。いざとなったら俺が手助けするからさ」
「あ、あぁ……」
「ってことで俺、少し行くとこあるから」
俺はフィンと別れる。
行くとこ。
フィンに訊かれたが秘密だ。
と言うか絶対に言えない。
俺はまず、情報を集めた。
勇者たちの行方だ。
時間的にはたぶん、王様に会いに行って、誰が勇者か判明した頃だろう。
勇者かどうか。
それは手元に聖剣が現れるかどうかで決まる。
勇者が念じれば急に現れるらしいけど、本当なのだろうか。
でだ。
恐らく、あのクール君は勇者ではない。
かと言って、勇者のお供でもないだろう。
そしてあの性格。
テンプレな展開なら、彼はこの城から出るだろう。
魔王討伐が完了するまで好きにやらせてくれ、とか、日本へ帰る方法は自分で探す、とか言って。
「有り難う御座います!」
情報が入った。
教えてくれたのは、王様がいる部屋を守っている騎士団の人。
地位で見れば俺の方が上だが、年齢はあちらが上なので敬語で話している。
さて、情報によると、やはり勇者は海人らしい。
そしてクール君はこんなようなことを言ったそうだ。
俺は勇者じゃないから手伝う気などない。
自力で帰る手段を見つけて日本に帰る。
ははっ。
テンプレ過ぎだ。
面白い。
んでそのクール君はこの城から出るつもりらしい。
きっと裏門だろうな。
「……やっぱり」
思わず呟いた。
裏門に行くと、やはりと言うか何と言うか……クール君がいた。
どこから取ってきたのか知らないが、腰には剣があった。
「おーい。少し待ってくれないか?」
何処かへ向かうクール君を呼び止める。
幸いここは誰もいない。
「……なんだ?」
「騎士団の副団長だけど……まあそんなことはどうでもいい。君……帰りたいんでしょ?」
「……知っているのか? 方法を」
思ったよりも食いついてこない。
帰りたいんじゃないのか?
「勿論知っているよ」
自分の中の最高の笑顔で言う。
だが、クール君は喜ぶどころか「お、おう、そうか」と引きつった笑みを浮かべているだけだ。
「だから帰らせてあげるね」
何故、俺が帰る方法を知っているか。
それは、帰るための魔法が書かれた本が、日本語で書かれていたからである。
なんでも、先代の勇者が書いた物らしい。
それによると、召喚魔法もこの魔法も、別に王族じゃなくても出来るらしい。
マジかよ。
「んじゃ行くぞ」
「お、おい」
「まあまあまあまあ、落ち着いて。今から唱えるから」
「人の話を──」
「我、神に願う……」
俺は詠唱し始める。
さっきからクール君がクールしてない気がするけど気にしない。
集中しなきゃいけないからな。
そしてとても長い詠唱を終える。
「──飛ばせ『ディスパーチ』」
すると、さっきまで聞こえていた声が消えた。
どうやら、行ったらしい。
……ふう。
いい仕事をした。
この後はどうしようか。
この後は……。
あれ?
どうしよー……。
「……」
考えてなかったぜ。