〇九五
ここに来るのは、中三と高一の狭間のとき以来だ。
組織の一員になるとき、組織のルールや、任の受け方などの手解きを受ける。その場所がここ、いわゆる拠点地だ。
それほどセキュリティは高くない。ただ拠点地であるだけで、研究や実験は他所で行っているからだ。そちらのほうが警備は固い。
だからといって、侵入が容易いものであったかというと、そうでもなかった。それもそうだ。「裏」は「表」に知られてはならないのだ。
歪んだ道を進んで、拠点地の一帯を散策した。彼女がどこにいるのかは分からない。当てずっぽうで探すしかなかった。
各棟を周る。
たくさんの人間、皆「裏」の人間。拠点地で仕事をする人間は、「表」を装う必要もない。私のように、表面状の高校生を担う必要もない。たぶん、戸籍にも載っていない人たちだ。
ここにもいない。
ここにもいない。
棟を部屋を駆け回る。
白衣の彼とは別行動だ。彼は上層部に直接掛け合いに行くそうだ。
中三と高一の狭間、そのときは、多少なりとも胸を躍らせていた。これからの人生を、これからの生活を楽しみにしていた。全くもってして馬鹿だ。馬鹿としか言いようがない。……だがそれと同時に、確かに組織の仕事は楽しかったと思ってしまう。馬鹿なりに、楽しんでいた。今もきっと、組織の仕事は楽しめるだろう。科学の発展をこれほどまでに近くで見られるのは、それに自分が関与できるのは、それだけで楽しいものなのだ。
そして、やっと見つけた。
全面真っ白の部屋に、彼女は一人座り込んでいた。体育座りをして、顔をうずめている。手解きを待たされているのだろう。
空間の歪みを解除する。ふわりと体が浮かんで、私は彼女の目の前に現れた。
彼女が、人の気配に気付いて顔を上げる。
私は笑ってみせた。
彼女はぽかぁんと、口を開ける。茶髪が白い光を撥ねて、薄くなっている。
「逃げよう」
もう少しちゃんと、事態を説明してあげられないのかと、発言した直後に思った。こんな単刀直入に言っては、彼女が分かってくれない。
「イヤ」




