〇七七
私の体の中で、弾丸が疼く。
彼女が悲鳴を上げた。
私の胸から、血液が流れる。
彼女が顔を覆った。
胸が熱い。
だがそれは、すぐしたら冷めていった。
徐々に、徐々に。
弾丸が、胸から出てくる。
治癒した体が、弾丸を押し出しているのだ。
ニルが感嘆の声を上げていた。
医師も、溜息のような、安堵のような息を漏らす。
彼女は未だに、顔を両手で覆っている。
ニルがまた銃弾を発した。
銃口から弾丸が、見えないほどの速さで私の体に打ち込まれる。
私は彼女の盾になる。
彼女は顔を覆ったままだ。
医師が眼鏡を掛け直した。
病室は白かった。
されど血液は紅かった。
茶髪の彼女に、彼女の頬に、私の血がこびりついた。
至近距離の銃弾の威力に耐えかねて、私の体が後方に傾いたからだ。
自然、彼女が私を抱きしめる。
すぐに彼女は私を突き放した。
私はなされるがまま、今度は前方へ傾く。
だが、ふと思い出したように、彼女はまた私を引き寄せた。
引き寄せてどう、ということもなく。
処理にあぐねている人形のように。
茶髪が目にかかっている。
彼女は私の瞳を凝視した。
ニルが笑った。
――そんな一行ごとの記憶が蘇る。私は瞼を持ち上げた。周りは薄暗い。
「大丈夫?」と、茶髪の少女の声がした。