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〇〇七

 友達は多いほうがいい。そのほうが、なにかあったときに役立つ。表面だけを見せ合う関係とはそのことで、女子勢がよく使う「友達でしょ?」が代表的な例だ。友達は多いほうがいい。使える。

 だから私も、友達に利用されることになった。茶髪の友達曰く、宿題を忘れたから見せてほしいそうだ。そんなのお安い御用。

 宿題は全て、出た日の休み時間や放課後に終わらせている。そのせいか、クラスメイトらの私に対する評価は、真面目だの、優等生だの、がり勉だのの、陰湿なものである。だがそれは、鞄が重くなるのを私が酷く嫌うことや、帰宅後の自由を宿題なんかに取られたくないという、そんな理由がある。いや、きっと今私の宿題を拝借していった友達にも、理由はあるはずだ。彼女は私の宿題を借りる常連だが、きっとそれにも、理由があるに違いない。彼女が自分を「ぼく」と称することにだって、理由があるはずだ。

 ふと、筆箱の中の毒もどきを、あの女に返すのを忘れていたのに気付いた。あの女が忘れる訳がないから、私が持っていてもいいということなのだろう。それとも、私への報酬が気持ちよすぎて、記憶が飛んでいったのかもしれない。

 情報型アンドロイド。組織が生み出した新たな人造人間だ。光の粒よりも質量が小さい「情報体」を集め、それで構成された人型の無機質的生物だ。無機質であるにもかかわらず、感触としては人の体となんら変わりない。体そのものが情報であり、その体が作用する物質を、情報化して処理することができる。人の感情も「情報体」であるので、未だ科学的に謎だらけである心なども理解することができる。また、情報型アンドロイド自身も、感情を生み出すことができる。体を構成する「情報体」の中にも、いくらかの心があるからだ。

 あの女は、情報型アンドロイドだ。型名「AF-117」。そして、私のパートナーだ。数ヶ月前の手柄が認められ、つい二ヶ月前に組織から貰ったのだ。仕事の共として。そして、友達として。

 友達は利用するものだ。今回、私が実験体として使われたように、私が彼女を性欲処理のために使っているように、互いに作用し合っているのである。だから私はその情報型アンドロイドを人と同様に「彼女」や「あの女」などと、人間らしく呼んでいる。無論、彼女といるとき私は言葉を発することができないので、直接として彼女に声をかける名称を、私は考えていないのだが。

 ああ、はやく、情報処理された空間でないところでも、彼女と一緒になれるようになってほしい。組織の仕事ぶりが楽しみだ。組織が今、なんの科学実験をしているのかは定かではないが、なんらかの科学実験をしていることは明らかなのだから。


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