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〇六一

 駅を出て、私が彷徨いながらも辿りついたところは、名も知らぬ神社の前だった。家でもなく学校でもなく、こんな、行ったことも聞いたこともないところだった。参詣、しにきたのだ。

掠れた思考のまま、手を合わせる。

 …………。

 彼女の保護者、あの老婆は、全ての責任を私に任せていた。冴えない男子高校生のせいで、自分の可愛い可愛い孫娘が死んだ。自殺した。首をつった。老婆は逆上して、老婆心ながらも孫娘の仇討ちをとった。私をめった刺しにした。体のそこらじゅうに穴をあけた。それでも私が死なないものだから、いいや私が死んだとしても、老婆は可愛い女の子を追って自殺した。

 彼女の保護者、あの翁は、目の前の惨劇を受け入れられなかった。竹を切ったら、中から妖怪の屍が飛び出てきたような。翁は自分の胸を掴んだ。そして血を吐いて死んだ。心臓が弱かった。

 彼女。オレンジジュースを飲む直前に、私を好きになった理由を教えてくれた。それは本当に些細なことで、特にきっかけというきっかけではなくて、目に付いただけ。AF-117を精神リンクで操っていて、反組織団体のスパイとして私に接触してきていた。私はそんなことに気付きもしないで、どうせアンドロイドなのだからと、何度かやったりもした。いつのまにかAF-117は――彼女は私のかけがえのない存在になっていた。彼女のことを心の奥底から信頼していた。信頼、それは「情報体」によるものだ。「情報体」で構成された空間で私は、私はなにも話さずに。私は、私は彼女とずっと一緒にいたかった。蚕が繭を作ってしまうのなら、それを剥いででも一緒に離していたかった。ファーストキスをした。とてもやわらかかった。それからは電車内で景色を見なくなった。彼女を見た。見るだけでは飽き足りず、話したりもした。笑ったりもした。彼女の笑顔は可愛かった。それから、家に送った。それで今日はバイバイ、そう思っていたけど、AF-117としての彼女と、その後約束があった。その約束の場所で、彼女と話しているとき、襲撃があった。私は薙ぎ倒された。彼女は殺された、いや、AF-117としてでない彼女は生きていた。だけど、AF-117としての彼女は死んだ。へし折れるほどに蹴られて、首を拳銃で貫かれた。その痛みを感じ取ってしまう前に、彼女は精神を断っていたけど。でもさすがに、死に近い痛みは彼女を苦しめていて、その二日後の月曜日、彼女は学校を休んでいた。と、私は思っていたけど、予想よりは彼女の体は正常だった。ただ、学校に行きたくなかっただけ。学校に行く自身がなかっただけ。その後、私と彼女は罪を愉しんだ。そして死んだ。

 担任。事故のようになにもせず死んだ。

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