第六話 希望のバトン(最終話)
画面の向こうで、透は深呼吸した。
「俺は自分の弱さを隠すことでしか、生きられなかったことは紛れもない事実だ」
声は震えていた。けれど、その瞳は堂々としていた。
コメント欄は、しばらく沈黙していた。やがて一通のメッセージが届く。
"それでも、透の動画に救われた自分もいる"・"嘘でも、ホントでも、笑えた日々は事実"・"笑えた時間、前進できたきっかけをもらったのも事実"・・・。
コメント数は少ないけど、確かに残ってくれてる人たちがいた。透の目に涙を滲ませていた。
配信を終えた直後、スマホが振動した。美咲からのメッセージ。
「透、それがほんとのあんただね」
その一言が暗闇の中で小さな灯を付けたように思えた。
窓を開けると、朝の風がカーテンを優しく揺らした。再生回数は、バズるまで、ほど遠いけど、透は心から微笑んだ。
自分のコンプレックスを誰かの希望に替える、それは数字よりもずっと、ずっと、価値があり、大切なものだった。
透は、新たな自分で、小さな動画を撮る。
今度はありのままの微笑と一緒に。
人が抱える劣等感、弱さただの欠点として、隠すのではなく、"生きるエネルギー"や、人と繋がるきっかけとして捉えたくて着想しました。
透が創りたい笑顔の裏で孤独を抱えていたように、私たちも誰かに見せる自分を整えすぎてしまうことがあるのではないでしょうか?
本当に人の心を動かすものは台本ではなく、"弱さ"を含めたありのままなのかもしれません。
「バズ・数字」よりも、小さな希望をつないでいく力。
一人の視聴者の心を救うことが少しだけ世界を変える力になる、その奇跡を信じたいという思いを込めました。
もしあなたが自分のコンプレックスにため息をついているのなら、それは誰かにとっての光の種になるかもしれません。
最後まで拝読いただきまして、誠にありがとうございます。
♧♧♧♧♧ じゅラン 椿 ♧♧♧♧♧




