第7歩:「ソエソ、ソソノエソ!?(ここはどこ!?)」
アルタエルが燃料になりそうな木材と枯葉等を持ってアヤメの元へと戻る。
彼女は少女の服を脱がした後、カバンから取りだしたタオルをその体へと巻き付けている最中だった。よく見ると自分の上着も脱いで彼女へと被せている。
「ちょちょ、アヤメ何しているの!?」
「言ってる場合ではありません。急いでそちらに掘った穴へそれらを入れて火を起こしてくださいませ。燃料になりそうな布はその石を乗せている物です」
「あ、う、うん分かった!」
「とりあえずタオルで巻くようにしたけれど……全身を覆うには小さすぎる……」
アヤメは少女の手首を握りしめて小さく独り言を呟いている。アルタエルはその様子を横目に、村で習ったように布へと火をつけた。すぐに持ってきた枝や木材を追加して炎を安定させる。
「ありがとうございますアル」
「あ、うん。だ、大丈夫なのその子……?」
「触れただけでは言い切る事は出来ませんが、低体温症になっているようです。溺れて流されてきた可能性も否定できません。ですが呼吸はしていますし、肺に水が入っているという訳ではないかと。心臓は動いており、脈も安定しております」
「本当? あぁ良かった……」
「濡れた衣服のままでは体温が下がる為、一旦タオルを巻いたのですが丈が全然足りておりません。一応私の上着も合わせて包んでいますが、まぁ衣服が早く乾く事を祈りましょう」
「うーん困ったね。それにしても綺麗な銀色の髪、何処の国の子なんだろう?」
「予想にはなりますが東大陸かと思われます。地殻変動により比較的最近現れた大陸で、新種の動植物が溢れている自然豊かな大陸だったかと。このような髪色を写真で見た覚えがあります」
「流石アヤメ。でもそんな遠い大陸からどうやって来たんだろう? 浮き輪も無いまま流されるなんて有り得ないよね」
「うーむ、情報が足りなすぎて憶測の域を出ませんね」
「う、うぅん……」
「あ! 起きたんじゃない!?」
二人の話し声を聞いてか、少女は唸り声を発して目を覚ました。見た事の無い二人の姿を見て固まる事三秒、周囲の景色を見て異常事態に気が付く事五秒、何故か自分が下着姿になっている状況に気が付いて真っ赤な顔になる事二秒。実に十秒をかけて少女は状況を把握した。
「ソエソ、ソソノエソ!?(ここはどこ!?)」
「そ、そえ……?」
少女の言葉が理解出来ないアルタエルは目を丸くして聞き返す事しか出来ない。
「やはり東大陸の方みたいです。言語が東大陸のものですわ」
「ムへ! インハ! マイマイマ!?(船は、皆は、お父さんはどこに行ったの!?)」
「どど、どうしよう、凄い混乱してるよ……?」
「ふむ……ヤネノヤーアーワイサナ(落ち着いてくださいませ。私達は味方ですよ)」
「イ、イサナ……?(味方なの?)」
「お?」
アヤメが東大陸の言語を使って語りかけると、少女は少し落ち着きを取り戻した。
「アー。クイネイ、ナコーネナジ(はい、あなたは海岸で気を失っていたのです)」
「ナコー……アナチサイ?(気絶……ですか?)」
「アー、シコスカウ?(はい。何か覚えていませんか?)」
「ウー……」
少女は少し顔をしかめた。二人の喋っている内容が分からないアルタエルは呆然と見守るしかない。
「カーチコトク、ムへ、カーサソク、カノスアキトア……(船が嵐に襲われて、私は泡に包まれたの。その先はあまり覚えていない)」
「……泡?」
「はいストップ、待つですますアヤメ先生……彼女は何と? 泡とはなんですます?」
「あ、あぁすみません。どうやら彼女は船に乗っていたところ、運悪く嵐に襲われてしまったそうです。そのまま泡に包まれて気を失ったと……」
「んん? え、東大陸って船で行っても三日くらいかかるよね?」
「足の速い船なら二日程度ですね。しかしながら人間だと……考えた事もありません」
「よく大怪我せずに流されて来れたね……。あ、ごめん二人の邪魔しちゃって。ちなみに名前を名乗る時はなんて言えばいいのかな?」
「ん……チームインハヤケと言った後に名前を言ってください。あぁ、ついでにキハナ、セインソムレイと付け加えると良いかと」
「ち、ちーむいんそむれいだっけ?」
「混ざってます混ざってます」
「チームインリーズ。セインソムレイ、ネイッサ?(私はリーズです。言葉が分からないのですか?)」
「あ、えっと……凄い心配そうな顔されてるんだけど?」
「自己紹介をしてくれました。リーズさんとおっしゃるそうです。チームインキハナ、アヤメ(私はアヤメと申します)」
「あ、えっと、ちーむいんきはな? アルタエル!」
「アヤメ、アルタエル、サンチラ!(アヤメさん、アルタエルさん、ありがとう!)」
「お、伝わったのかな?」
「そうですね。サンチラは東大陸のありがとうですので感謝しているみたいです」
「えぇ? 全然気にしないで良いのに……あ、それと言った方が良いっていったのはなんだっけ?」
「セインソムレイ。私は言葉が分からないという意味です」
「リーズちゃん、せいんそむれい!」
「そ、そんな堂々と言う言葉ではありませんけどね!?」




