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旅は道連れ世は情け  作者: sigumarun
11/12

第11歩:「……ふっ、やはり気が付かれましたか」

「二人共、まだ疲れてない? 大丈夫?」


「アー!」


「大丈夫です……」


「ん、それなら良かった! えーっと二人には見えないかもしれないんだけど、もうすぐ山に登る道があるからそこを行くよ」


 二時間ほど歩いたところでアルタエルは二人を振り返った。

 アヤメもリーズも明るい表情でアルタエルのジェスチャーを見つめている。


「えーっと、伝わってる?」


「伝わっているみたいです。しかし山道になりますと体力の消費は非にならないでしょうから、休みながら進みましょう」


「ん、そうだね。それよりリーズちゃん、あまり話さないけど大丈夫かな?」


「……どうやら景色を楽しんでいるみたいです。知らない国の景色なので驚きが多いのでしょう」


「あぁ、そっか。リーズちゃんからするとここら辺は冒険になるんだね」


 アルタエルはアヤメの顔色をじっと見つめた後、前を向いて歩みを少し早める。

 更に数分、アルタエルの言った通り山道に続く道が彼女達の左に現れた。木々に挟まれた緩やかな坂道が木漏れ日に照らされている。

 アルタエルは背後の二人を確認し、休憩の必要性を確認する。二人は首を横に振って歩行を続ける。


「……」


 アルタエルは喉まで出かけた言葉を無理やり飲み込み、山道へと足を踏み入れる。

 数十歩進んだところで、先程まで聞いていた波の音は無くなり、鳥の鳴き声や動物の動く音が彼女達の耳をくすぐった。リーズは目を輝かせながら周囲を楽しそうに見回している。

 

「あそこ、あそこにある三つの切り株で一旦休憩しよう」


 アルタエルが道の先を指さして提案した。


「……予定より少し早いのでは無いですか?」


 アヤメが肩で息をしながら彼女に問いかけるが、アルタエルはそれに応えようとせず早足で坂道を上る。二人は顔を見合わせた後、その背中を追って歩く。

 休憩用に加工された切り株のある空間に辿りついたアルタエルはアヤメとリーズに座るよう促した。


「アヤメ、ちょっと良いかな?」


「どうしました?」


「体調悪いよね? 最初、いつもみたいに寝起きだから元気が無いのかなって思ったけど違うよね? 普段、こんな距離疲れたりしないじゃん」


「……ふっ、やはり気が付かれましたか」


「熱があるの?」


 アルタエルは右手で自分の額に触れる。その後、左手をアヤメの額へと手を近づけた。アヤメは観念したようにその手から逃げようとはせず、前髪を軽く上げた。

 ゆっくりと指先で彼女の額に触れたアルタエルはすぐに手を引っ込めた。目を丸くしながら触れた指先とアヤメを交互に見る。


「ちょ、ちょっとアヤメ……た、体温がおかしいじゃん! ()()()()()()()()()()()!?」


「分かりません。出来ればこの山を越えてからと思ったのですが……ずっと体が冷えているのです」


「ま、待って、他に悪いところはある⁉」


「寒さによる手足の痙攣が多少。無理やり動かしていたので疲れてしまいました」


「なんでもっと早く体調が悪いって教えてくれなかったの⁉」


「リーズさんを家族の元へ連れて行く事を優先するべきと判断しまして……でもやはり、少し辛いですわね」


「え、えっとえっとちょっと待って!」


 アルタエルはリュックサックを切り株に立てかけると、それを背もたれにしてアヤメを座らせた。自分の上着を脱いで彼女の体にかける。が、手先の震えが治まる気配はない。


「どど、どうしよう、私には病気なんて分からないし……しかも、体温が上がってるんじゃなくて下がっているし、えっと、えっと……」


 二人の様子を見ていたリーズは立ち上がると足早にアヤメのそばへと近付いた。首元に手を当て、彼女の手に触れる。


「アヤメ、ヤムイ、ナカセネ?(アヤメさん、目を開けてもらえますか?)」


「えっ――」


「クィサティ、ヒムーツシイナ? タキチロ、ホロクツ……フゥ。(海風で体が冷えたのかな?でも初期症状だからまだ何とかなりそう)」


「リ、リーズちゃん、なんて?」


「ど、どうやらリーズ様は私の症状がわかるようです……」


「本当に!? あのあの、わ、私は何をすればいい!?」


アルタエルが自分を指さした事でリーズに意思が伝わった。リーズは彼女を真似て何とか伝えようと指を空中で踊らせる。


「ラ、ラスノク、モチキカコ、キマタシ!(葉先の青い薬草を探して貰えませんか!)」


「ラ、ラスノ……アヤメなんて!?」


「アル、落ち着いてくださいまし。どうやらそこまで焦るべき症状じゃないみたいです」


「ほ、本当?」


「えぇ。以前村の女性が体調不良を訴えた際、村長が用意していた葉先の青い薬草を覚えていますか?」


「あ、ミダク草とかいう薬草? 美味しくないやつだよね?」


「そうです。あの薬草が必要との事です。一応背負ったバッグに入っている植物図鑑で確認していただけますか?」


「え、えっと、今背負ってるのがアヤメのバッグだから……あった図鑑!ミダク草のページは……あ、これだこれだ。リーズちゃん、これで合ってるかな?」


「アー!」


「分かった! すぐ探してくる!」


「ミダク草といえば……アル、十分お気をつけて向かってくださいまし」


「勿論!」

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