憧れの空
「将来の夢はパイロットです!」
帰宅途中、ふと思い出した。
小学生の頃の将来の夢だ。
いつからだったか、
夢を諦めるようになったのは。
「駅まで」
タクシーの中、座席に座りながら少し思い返してみる。
私はずっと昔に本で読んだパイロットに憧れていた。
レバーを握って大空を駆け回る。
パイロットのそんなところに惹かれたのだろう。
中学に入り、周りは皆進路のことを考え始めた。
私は勉強もせず怠けていた。
そのくせ、パイロットになるんだと浮かしていた。
「現実を見ろ」
頭の中で母の怒号が響く。
この頃からだ。
夢を諦めたのは。
私は高校受験に失敗した。
怠けさえしなければきっと受かっていた。
どっと後悔が押し寄せる。
過去のことだ。
もうどうしようもない。
寝息に包まれた車内。
タクシーは柵を突き破り、流星のように宙を舞う。
私は憧れの空に飛び立つことができた。