食料問題
「よろしいですか。」
「ああ。」
「失礼します。上官からの通達で、食料問題に対する打開案を考えるようにと。」
「分かった。資料は机に置いたとてくれ。」
「それにしても…食料問題か…」
俺は一旦資料に目を通すことにした。
「ん?」
ふと気づいた。資料には書かれていない数値が見えていることに。
資料には土地と納めている米の量が書かれている。が、俺の目には、土地の広さと人口、それを元にした納めている割合が見える。そうか…これが転生した時に付いている特典か…。名前つけた方がいいよな…〇〇者とかよく言うよな…そうだ、このスキルの名前は、『独裁者』でいこう。今日、フラム・アスラータはスキルを手に入れた。
「さてと、」
食料問題に挑む。どうするか…
人が1番真剣に取り組む時は、恐怖を与えている時だ。ならば恐怖を与えればいい。
「おい、打開案が思いついた。」
「おお、さすが、アスラータ様。」
俺はアンティークの椅子から立ち上がる。そこまでま広くない部屋で、部屋にいるのは俺と目の前の従者ガルロである。
「で、その打開案とは…」
「ああ、農民の家を焼く。」
「は?…それはどう言う…」
「言葉の通りだ。去年の米の生産量が村で1番低い場所を燃やす。そうすれば農民たちは恐れ、必死に働くだろう?」
まさに悪魔のような、独裁者の発言。しかし、一理ある。
「分かりました。一応報告しておきます。」
「おっと、一つ付け加えることがあった。絶対に農民は巻き込むなよ。」
「はっ!」
その日は何やら外が騒がしかった。
「なんだ?」
部屋の外に出てみると、そこには、この国の王がいた。
「え?」
俺はすぐに片膝をついた。
「よい。」
「はっ、」
「今日は貴殿に用があってきた。貴殿を第零大隊の隊長にする。」
「零…?」
「ああ。これから起こりうる戦争を未然に防ぐ大隊だ。」
「ガロ王国からの許可は…」
「ない。完全機密だ。」
「なるほど。承知しました。」
俺がそう言うと、俺に背を向け部屋を出て行った。
「未然に防ぐ…」
俺はこれから何をしたらいいのだろうか。
翌日、俺はこの地方参謀本部通会所を後にした。
ついた。ここで合ってるのかな…
そこは、広いアスファルトの地面が広がっていた。
「どこに行ったらいいんだろう…」
すると、目の前から30人ほどの軍服に身を包む兵士が現れた。
(何だ…?)
「敬礼!」
兵士たちは俺を挟むように二列に並び、一番端の男が言った。
「我々、第十九部隊。総員32名であります。」
あ、俺の部隊か。などと呑気なことを考えているアスラータである。
「了解した。下がってよし。」
「「「失礼します!」」」
隊員達の声が響き渡った。
(ああ、揃った声とは何と気持ちいいものなのだろうか。)
「さてと。行くか。」
こうして俺の独裁人生が始まった。
軍部の登録上、ガロ帝国には、ただの新規の軍として登録するしかなかった。その為、零ではなく、十九となった。
次回「植民地」