第二の誕生日
「ほら、しっかり食べないと。お腹空いちゃうよ」
目の前の30代半ばぐらいのメイド服の者が言った。手にはスプーンを持っており、時間からして昼ごはんだろうか。
「しっかり食べて、大きくなってね。あなた様はこの国の未来を背負う救世主なんだから。」
目の前の女はそう呟いた。
高校2年。公立の高校に通っている。10月も後半に差し掛かり、文化祭の話題などで校内はにぎやかだった。
「文化祭か。文化祭は何で功利主義なのだろうか。」
少年は一人、疑問に思っていた。
俺の名前は音坂友人。図書委員をしており、一応生徒会にも入っている。
話は戻るが、なぜ文化祭は功利主義では無いのだろうか。と言うことについて、解説させてもらいたい。
※功利主義とは
より多くの幸福を求めよう!と言う考え方である。詳しくは、カント、または、ミルと調べて欲しい。
功利主義の考えからいくと、より多くの幸福を求めないといけない。それならば、販売する個数は調整しないといけない。私たちのクラスでは、ポップコーンを販売するのだが、一人一袋までとなっている。理由は、売り切れを防ぐためだ。私たちのポップコーンを目当てに来る人もいるかもしれない。だが、私たちの学校は広く、ここまで辿り着くのに時間がかかるだろう。ならばこその個数制限なのだろうが、流石に少なすぎる。いや、それ以前に、早い者勝ちにしてしまえばいい。個数制限がなければ何個も買う人はいるだろう。第一、売れ残るリスクが少なくなる。これを踏まえ、この、ポップコーンを買えないという不幸を減らし、幸福を増やそうとする功利主義に私は反対だ。俺は義務論の方がマシだと思う。結果てきにポップコーンを全て売った場合、幸福度は功利主義と変わらない。が、功利主義は売れ残りのリスクが高くなる。なら、好きな量買ってもらった方が幸福度が高くなるだろう。というよりも、俺は収益を優先したい。
※義務論
自分の行った結果を重視。幸福の多さなどでは無く、最終的な結果で判断する。
ポップコーンを出そうと言うところまでは良かった。若者にも人気があり、好む人も多いいだろう。が、先生が言い出した一人一個。流石に少ないと思う。(2回目。)
そうブツブツ呟きながら、駅に着いた。学校の最寄駅、徒歩15分ぐらいの近い駅である。文化祭に関する取り組みがあったため、今日は帰りが早く、2時過ぎには最寄駅に着いていた。電車の定期を改札にかざし、3番乗り場へと降りていく。もう10月と言っても、まだ、外気は暖かい。ふと、何かに気づいた。自分の足元に地面がないこと。そして、後ろから強く押されたこと。
「は?」
友人は線路に突き落とされた。そう、列車が迫っている線路の上に。
(ああ、死ぬんだな。)
そう確信した。すぐ目の前まで迫った電車。友人は生きることを諦めかけた。しかし、
(このままでいいのか?いや、言い訳がない!)
友人は力を振り絞り電車が来る前に登ってみせた。
「はぁ、はぁ、」
(俺の生存本能には驚いたな…)
喜びに浸るままなく、友人は背後から刺された。
「いって!…」
誰だ。誰がこんなことを…
考えてもわからない。でもせめて顔だけでも…
「誰?」
見たがわからなかった。友人は地面に倒れ込んだ。出血が激しい。死んだな…
気づけば、体の感覚が消えていた。頭は冴えているが、体が動かない。
「あれ…俺、死んだ?」
辺りはよく見えないが、暗いことはわかった。
「どこだ…ここ…。」
暗闇の中に突如一筋の光が差し込んだ。
「うっ、」
反射で閉じた目を開いた先には、知らない男が立っていた。
「だ、誰だ…」
そっと呟いたつもりだったが、しっかり聞こえていたようだ。
「私は君たちのところで言う…神てきな感じだ。」
「はぁ、神…」
私はこの世に神はいないと思っている。何故なら、神がいれば戦争は起こらないし、公平、平等な世界を作るだろう。だが、実際そうではないため、俺は神はいないと推測する。だが、この目の前の男が何者かは一切わからない。
「おい、人間。伝えたいことがある。しっかり聞くんだな。」
「はぁ。その伝えたいこととは?」
「あぁ。簡単だ。今からお前には転生してもらう。その世界で生きろ。」
「えーっと…転生特典とかは…」
「あぁ。もちろんあるとも。」
せめてチート能力が欲しい…
「お前に中隊を付けてやろう。」
「は?」
え、能力ではなく、物理てきなものを…
「あのー、転生特典の変更とかは…」
「ない。じゃ、送るからな。」
「え、ちょい待て!」
そして冒頭に至る。文化祭がどうなったかなど今はもうどうでもいい。それよりも今は…
「いや、どこだよここ。」
「何言ってるの?あなたのお家でしょ?」
目の前のメイドはそう答えた。
「へ?」
と疑問を浮かべたが、そのメイドには伝わらなかった。
「はい、お食事持ってきましたよー。」
些細なことだが、この部屋はやたら輝いていた。元からの素材とかではないを毎日欠かさず磨いてるんだろうな…
そんなことを思いながら周りを見渡していたらら、メイドからお叱りを受けた。
「ほら、ちゃんと食べないとお腹空いちゃうよ。」
フラム・アスラータ。二歳。転生してから二年目の男である。実際のところ、今俺はどう言う状況なのか分からない。これから俺はどうなるのだろうか。二年過ごしてきて分かったが、どうやら俺は転生したらしい。近くに鏡がないためどういう容姿なのかは分からないが、多分幼児だ。そして、俺が今いる部屋。まじでどこか分からない。二年間考え続けたが、見当もつかない。偉いとこの令息であることはわかっているが。
《数年後…》
「以上が報告となります。」
「あぁ。わかった。下がってよし」
アンティーク風の机と椅子。そこに座るのはこの俺、フラム・アスラータである。今、何をしているかというと、軍部に関する資料の作成及び参謀部への報告資料作成を行っている。俺は今、こうして軍部として働いているのだが、この国は植民地にある。その反乱を防ぎ、この国を植民地にしたガロ王国に報告しなければならない。
(所詮は敗北国だからな…)
そんな愚痴をこぼしながら俺は民間からの意見文及び報告書に目を通し始めた。
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