着実なる成長
TS好き作者としては、主人公をTSさせたくて仕方ない。
あれから8日ほど。現状は安定して3階での狩りが行えている。収入も安定しており、もうしばらくはここで戦闘を続けて、立ち回りが安定した段階で次に進もうと考えている。
「まぁ、もう充分だと思うけど」
下を見れば、心臓を貫かれて絶命するコボルドの姿が。背後からの刺突による殺害だ。
刺した状態では消えないのか、今も血を垂れ流しているコボルドから剣を引き抜けば、アイテムと化す。
まるで暗殺者紛いだな、と自分でも思う。
この方が汚れも少ないし、苦しめずに倒せるから、重宝している。
ただ、それだけだと他の技が鈍るのも分かっているため、刺突以外にも技を積極的に使用するようにしている。
「これの扱いにも慣れてきたことだし、そろそろ次の階層に行くか」
手で優しく撫でるのはスモールシールドと呼ばれる盾だ。
実戦用なためお値段は高いが、その分の価値があると、ここしばらく使用して感じていた。
小型で持ち運びやすく、取り付けも楽であり、現代の技術で軽量化もされている。
ただ1つ、難点を挙げるとすれば防御範囲の狭さ。
スモールと名の付いたとおり、持ち運びやすさを優先した分、他の盾よりも防御面で劣ってしまうのだ。
上手く扱い熟すには、装備者の技量が求められる。
移動する位置や角度に注意を払い、なるべく腕に負担がかからないように力を分散するのが鍵だ。
これらの知識は、有料の訓練場にて元冒険者に手解きしてもらった際に教わった知識だ。
その際に盾での防御を試してみたが、予想以上の威力に押し負け、バランスを崩しかけた。
相手の攻撃力が上がった訳じゃない。剣で受けた時と同じ威力なはずだ。なのに押し負けたのはきっと、両手と片手の違いだ。両手で分散する力を片手で防ごうとすれば掛かる負担も、必要な力も異なるために結果として押し負けたのだ。
それからは色々と試して最適な動きを導きだし、いまは実戦で鍛えていたところだが、それもだいぶ安定してきたので、進むことを考え始めた、という訳だ。
「さすがに今日は無しだな」
準備も整っていない状態で行くのは無謀すぎる。それに、時間も時間だしな。
愛用している時計をみれば、夜の7時を指していた。
そんなに潜っていたつもりはないが、ダンジョンにいるとどうしても時間感覚があやふやになってしまう。
気がついたら1日経っていた、なんてことにもいずれなるかも知れない。
そうなったらいよいよ中毒だ。ダンジョン中毒。実際、何日も帰ってこない者もいるようだし、彼らはきっと中毒になっているのだろう。
俺もいずれそうなるのかと考えるだけで、思わず苦笑してしまう。
「それでも悪くない、て思ってるあたり、俺もいよいよか」
もし、そうなった時の俺はなにをして、どんな表情をしているのか。予想もつかない未来に、少しばかり思いを馳せ、今日の探索を終えた。