日常
「一二三四――初日にしてはまぁまぁの成果かな?」
風呂上がり、リビングでゆっくりしながら今日の報酬を確認。
コボルドを倒せた事もあり、初心者の1日の稼ぎとしては上々。
今日の様子を見る限り明日以降も3階層にて狩りをするのもありだろう。
もしくは他のダンジョンにするか。
この近辺で初心者でも挑めるダンジョンはあっただろうか?
気になりネットで調べると秩父、八王子等の電車で行けば通えるダンジョンがヒットした。
この中から次に行くダンジョンを決めようか?
「いや、今は取り敢えずダンジョンは替えずに行こう。行くにしても、もう少し経験を積んでからかな?」
明日の予定を考えつつ数え終えた金を封筒に仕舞う。
後の時間は酒でも飲みながら映画でも見よう。
二日酔いにだけは気を付けつたいと思いながら、楽しい一時はあっという間に過ぎさり朝。
眩しい光に目が覚めた俺を襲ったのは体の痛み。
原因を探すべく辺りを見回すとすぐに気が付いた。
「あ~――ソファーで寝落ちしたのか、俺」
そう言えば酒を飲んだ後の記憶がない。
酒に弱いつもりはなかったが、度数の高いお酒でも飲んだろうか?
気になりテーブルを見るが、そんな物は無さそうだ。
「頭をぶつけた衝撃で記憶が吹き飛んだとか?…………そんな訳ないか」
真相は闇の中。
痛む体を起こし、朝のルーティンを熟す。
昨日の残りで作った朝食、冒険者になるべく続けた鍛練、冒険者関連の最新情報など。
内容は変われど、その行動は会社員時代と変わらず。
そんな事にふと気付いた俺は思わず苦笑する。
「前は話題探しにその日の天気を調べていたっけか?懐かしいなぁ」
話題探しは会話を弾ませるのに大いに役立ち、契約を幾つも取ることが出来た。
その伝で今もやり取りするほど中の良い人も出来たし、同僚とも良い関係を築けたと思う。
懐かしい過去に暫し耽るが、出発の時間が迫っていた。
冒険者なのだから急ぐ事ではないのだが、時間通りに動かないというのは気持ち悪い。
乗車に間に合うように5分前に家を出れば、出発8分ほど前に駅に着くことが出来た。
場所の関係上、冒険者っぽい人達が多く、現代人らしくない格好が目立つ。
俺もその1人だと思うとなんとも言えない気恥ずかしさを感じてしまう。
到着を待つこと数分。到着を知らせるアナウンスと共に扉が開く。
電車内には既に人で一杯。押し込む形でなんとか入るが、装備品が押し付けられて地味に痛い。
駅を幾つも通り過ぎ、人が増えたり減ったりを繰り返す。
ダンジョンが近くなればなるほど冒険者は増え、到着する頃には見渡す限り冒険者一色。
扉が開くと共に津波のように一斉に流れ出し、巻き込まれるように俺は出口へと向かう。
流れが落ち着いた頃にはダンジョンは目と鼻の先。
あの苦労を乗り越えてやっと挑む事が出来るのだ。
ついつい重い溜め息を漏らす。
「はぁ~~――もう少し楽に行けるルート考えなくちゃな。このままじゃ、ダンジョン入る前に体力が尽きちまう」
それは帰った後にでも考えようと思いつつ、今日もダンジョンへと潜る。