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現代ダンジョン冒険譚  作者: 冬空
パーティー編*名前変わるかも?
30/31

やり直し

「じゃ、今日も張り切ってやってきますか」


ひさしのそんな一言からはじまった今日の探索。

先頭のゆうとひさしから3メートルほどの距離を空けて、俺はゆうじに声をかける。


「なあ、今日戦う敵のこと教えてもらっても良いか?」

「もしかしてひさしから話を聞かされてない?」

「聞かされてない。今日になって知ったばかりだ」


ゆうじからデカイため息が漏れる。


「ごめん。うちのリーダー、早合点するところがあるんだ。本人は話してたつもりなんだろうけど……。これは後でゆうに報告かな。あれほど確認はしてって言い聞かせたのに」


苦労が垣間見える発言が聞こえてきたぞ。絶対、過去になにかしらやらかしてるだろ。

それでいえば昨夜、連絡がなかったのも忘れたというよりは、話したものだと勘違いしてる可能性があるのか。

急ぎじゃないし、べつに明日でも良いかと気にもしなかったが。たしかにそれは問題だな、と他人事のように思う。


「今日戦う相手はゴブリンスライダー。名前ぐらいは聞いたことあるよね?」

「初のボスモンスターだからな。たしか、スライムに騎乗したゴブリンだったよな?」

「そう。ドラクエに出てくるあのモンスターに似た魔物だね。スライムの柔軟性と、低い攻撃力を補うゴブリンの組み合わせは中々厄介だよ」

「それが5体居るんだろ?」

「その通り。これ、僕が教える必要なかったんじゃない?」

「経験者の意見を知りたかったんだよ。ほら、現場を知らぬはなんたらって言うだろ」

「たしかにそうかもね」


このダンジョンが日本初であるように、ボスモンスターの“日本初”もまたここだ。

初めて発見されたのがダンジョン初期。多くの命知らずたちが突貫し続けたことで早期に発見されたボスだ。

出現場所は10階層。閉ざされた扉を守護するように、ドーム状のフィールドに5体のゴブリンスライダーたちが待ち構えている。

発見当時、その光景を写し撮った1枚の写真は瞬く間に話題となった。

閉ざされた先にはなにが待っているのか、ゴブリンスライダーたちの強さは、そんな考察やら熱気はそれはもう凄まじかった。

そんな時に名前が付けられた。スライムに騎乗する姿からドラクエを想起した人が数多く、それに近しい名前を付けようと考えられたのが今の名前だ。

一応、発見者が名前を付ける権利があったりするんだが、その当時は法整備とか間に合ってなかったし、気がつけばその名前で定着していたから主張するのも難しかったとおもう。


「でも、それ以前の階層で魔物にやられるようじゃ話しにならないからね?」

「わかってるよ」

「なら良いけど。じゃ、さっそくやってもらおうかな。ゆう、ひさし、止まって。敵が来るよ」


その一言に2人の足が止まり、素早く武器を構える。

曲がり角の先から姿をあらわす1匹の魔物。

灰色の毛並みを持ち、狼そっくりのその魔物は俺達に気がつくや否や背を低くし、うなり声をあげて威嚇する。


――グレーウルフ。


8階層から出現する魔物だ。

狼に似てるだけあり、素早い動きからの爪や牙での攻撃を得意とする。


「この程度、倒せるよね?」


2人同様に武器を構える俺に、ゆうじが笑みを浮かべながらそんな言葉をかけてくる。

俺は思わず笑った。わかりやすい挑発だ。この程度の魔物でビビると思っているのかよ。

誇れることでも、自慢できる話しでもないが、これより恐ろしい相手を倒したばかりだ。

それに比べたらグレーウルフぐらい大したことはない。

俺はその挑発に応えるように獰猛な笑みを象る。


「当たり前だろ」

「そう? なら期待してるよ。ゆう、ひさし、紳二郎さんが戦いたいみたいだから防御に専念して。じゃ、頑張ってね」


自分から誘導したくせに、なんて言葉を飲み込み。ゆうとひさしの間を抜けて前へと進みでる。

全体を警戒していたグレーウルフの眼差しは俺へと固定され、唸り声をあげながら前足で地面をひっかく。

すぐにでも襲いかからん気迫をまえに、俺は盾を構える。

それが合図だった。

グレーウルフは吠え、俺目掛けて駆け出した。

フェイントもなにもない愚直な走り。だが、そのスピードが脅威的だ。

今までの敵とは比べものにならない速さ。あっという間に至近距離へと迫ったグレーウルフは、俺を喰い殺さんと(あぎと)を大きくひらく。


「ッ!!」


判断は一瞬。反射的に盾を顎のあいだに差し込む。

金属を削る鈍い音。思わぬ衝撃にたたらを踏みそうになる足を意思の力でグッと堪え、衝撃を受け止める。

とっさに閉じた目を開けて下を見下ろせば、ふがふがと間抜けな声をあげて抜け出せなくなったグレーウルフの顔があった。

判断はすぐだった。

腹にむけて蹴りを一発。鳴き声をあげて飛びあがり、まともに受け身もとれずに落ちたところで剣で一太刀。

首目掛けて放たれたその一撃は見事に首を両断し、地飛沫をあげてグレーウルフは息絶える。

それを見届けた俺は緊張ほぐすように一吐きして、剣についた血を振り払い納刀。

危なかった。

油断していた訳じゃかった。だけど、どこか甘えがあったんだと痛感させられた。

今までは余裕をもって戦えた戦闘が多く、どこかで今回の戦闘も同じだと考えていた。

階層が深くなれば強さも上がるというのに、なにを勘違いしてたんだか。

自分のことながら、初歩的なミスに呆れる。

そのとき、ポンっと肩を叩かれた。

そちらへと顔をむければ、そこにいたのはゆうじだった。


「で、どうだった?」

「油断してたのを痛感させられた……。どこかでいつもと同じだと思ってたんだよ……」

「じゃあ、いい勉強になったね。怖じ気づいちゃった?」


にまっと笑って当たり前のように煽ってくる。

こちとら、少し落ち込んでるんだぞ?

もう少し手加減というか、手心を加えても良いと思うんだが。というか、して欲しい。


「こらこら、ゆうじ。煽るんじゃない。険悪になったらどうするんだよ」

「僕はただ発破をかけてるだけだよ」

「俺が言いたいのはそうじゃなくてだな……」

「はいはい。説教はまた後でにして。時間が限られてるんだから。紳二郎さん、ゆうじが迷惑をかけてごめんなさい。後でキツく言っておくので」

「程々にな……」


キツくのあたりで声がワントーン下がったのを感じて、このあと待ち構える未来を案じてつい、そんな一言が口を衝く。

それがどれだけ効果があるかわからないが、元はといえば自らの身から出た錆。もしそうなったとしても自業自得というわけで。

どうか俺を恨まないでくれと、心のなかでゆうじにそう声をかける。

お久しぶりです。ポケモンのラクマに潜ったら訳のわからないままボッコボコにされた作者です。

納得いかなくてやり直したけど、結局どっちもどっちな気がしてきた。

まぁ、こっちの方が色々とキャライメージに合ってる気がするので、こっちで話を進めていくつもり。

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