初戦
――スライム。
某ゲームにおいて最弱のモンスターとして知られている。
その認識はダンジョン発生以降も変わることはなく。
その球体状のボディは澄んだ水色をしており、中心には小さな紫色をした魔石――人で言う心臓が見える。
特徴としては防御力の高さ及び、その無害さ。
基本的に人を襲う事はなく、攻撃しても反撃して来ない。
防御力の高さもカボチャを切るよりも少し手こずる程度と、特出するほど高い訳ではない。
そんなスライムの弱点は魔石。
そこを攻撃すれば一撃で倒すことが出来るが、代わりにそれ以外の攻撃は意味を成さない。
どれだけ体を削っても魔石が無事な限り時間を掛けて再生する。
「初心者には持ってこいだな」
最初に戦うのがスライムで良かった。
講座でも倒したことのあるモンスターだ。
弱点も把握している。
鞘から抜いた剣を上段に構え、魔石に狙いを澄まし振り下ろす。
スライムは自身を狙う刃に気付く事なく暢気に揺れていたが、接触した瞬間ピクリと反応。
ようやっと攻撃された事に気付くが既に遅し。
剣は止まる事なく両断するように突き進み魔石を切り裂く。
声を発せないスライムは悲鳴を上げる事なく空気中に溶け消える。
消失した後に残るは真っ二つに割けた魔石のみ。
「初戦は問題なし、か。次はゴブリンと戦ってみるか?スライムだけだと利益が少なすぎるしな」
魔石を回収しつつ、今後の予定を考える。
安全第一ではあるが、スライムだけ倒していては割に合わない。
ゴブリンやその他のモンスターも狙って行くべきだ。
「とは言え、そもそも出会えるかどうか」
1階の様子を思い返し、苦笑する。
最悪、3階に潜る必要があるかも知れない。
なるべくそうなって欲しく無いと考えながら探索を続けるのだった。