ボツ
気がついたら2週間近くも経っていたというね……。ほんと、遅れてすいやせん。
今日も引き続き、ひさし達とダンジョンに潜る。
向かう場所は4階層、そこで俺のポジションを決めるそうだ。
っても、俺に務まる場所があるかどうか……。
前衛のひさし、遊撃のゆうじ、防衛のゆう。すでに役割が充分揃ってるなかで俺に出来ることはなにか、決まる前から悩む俺の袖がクイクイっと引っ張られる。
振り向けば、そこにいたのはゆうじだった。
「無理なら教えて」
「なにを?」とは問わない。これでも少しは理解したつもりだ。主語がなくても、なにが言いたいのかぐらいわかる。
だからこそ、俺は笑った。心配しなくても大丈夫だと言うように。
「この程度で怖じ気づいていたら冒険者なんてやってられないからな。だけどもし、辛くなるようなら教える。心配してくれてありがとう」
「そっ。なら良いけど」
ゆうじはそっぽを向いてそう言うと、俺を置いて前へと進む。その姿を見送りながら俺は頭を掻いた。
昨日の一件以来、態度が軟化してくれたのは嬉しいんだけど、なんというか……ツンデレっぽくなってないか?
態度こそ刺々しさを感じるものの、心配しているのが丸分かりだ。
そんなに心配されるような顔してたか?
その時のことを思い返すも、自分がどんな表情をしていたかなんて、鏡を見ていないため分かるはずもない。
もしくは、似たような経験をしたことがあるのか。
ひさしとの会話を思い起こし、そんな無遠慮なことを考えてしまった。
「紳二郎さーん。置いていきますよー」
「ああ悪い。すぐ行く」
考えを振り払うように頭を降り、ひさし達の後を追う。
「手筈通り。最初は1人でお願いします」
「了解。もし危険そうなら手助け頼む」
「任せてください」
無事、4階層へと辿り着いた俺達は、さっそく敵を見つけたため戦うことにした。
3人を置いて、1人、前へと進みでる。
前方からやってくるのはチビゴブリンの群れ。今回はコボルドはいないみたいだ。
俺は腰に身につけた剣を抜き、腕の力を抜く。真下へと向けられる切先、グリップを何度も握りしめる。
「ふぅ」
思わず漏れるため息、脳裏を過るのは昨日の出来事。
二度目の戦闘時、共に戦うことになった俺は敵を倒したのは良いものの、力加減を見誤り壁に衝突した。
数日ぶりの戦闘だったからではない。たかが数日していないだけで力加減を見誤るようなら、まともな生活なんて出来やしない。
これは偏に、俺のレベルが上がったからだ。
どうにも、あの犯罪者との戦闘が原因らしい。
人を倒して上がったなんて話は聞いたことがなかったが、“殺す”ことが大事なんだと思う。
憶測に過ぎないが、もしそうなら、わかっていても発表なんて出来ないはずだ。
もしかしたら、あいつが人を狙う一端にこういった理由があったのかもな。
今や聞くこともできないし、知ったところで真似をしたいとも思わない。
正直、そんな理由で得た力に嫌悪感を抱きさえする。
もはや手放すこともできず、一生を共にすることになった力に苦々しく思いながらも俺は走り出す。
「Gya?」
体感で2秒もしないで敵の目の前に辿り着いた俺に、敵は呆けた声をもらす。
その隙だらけな首めがけて剣を振り――両断。
呆けた顔のまま宙を舞う首、落下するのを見届けずに近い敵から次々と切り殺していく。
斜めから、横から、頭から、様々な切り口で血飛沫を上げて消えていくチビゴブリンたち。
前はもう少し苦労していた気もするが、もはや戦略なんて不要。攻撃が届くよりも先に、俺の剣のほうが速く届く。気がついてから反撃に移ったとしても、それは変わらない。
あっという間に敵を倒しきった俺に、拍手が送られる。
「いやー、圧倒的でしたね。これならボス戦も問題なくできるレベルですよ」
「たしか、ゴブリンスライダーだったか……」
――“ゴブリンスライダー”
ゴブリンがスライムにライドする、略してゴブリンスライダー。
スライムの特性を生かした柔軟な動き、攻撃力の低さを補うゴブリンと、バランスに優れている魔物だ。
それが5体、ボス部屋にて待ち構えている。
「それです。そのレベルなら問題なく倒せると思うんで、このまま向かいません?」
「べつに構わないが、2人は納得してるのか?」
2人に顔を向けて問いかける。
ゆうは肩をすくめて「あたしは良いと思う。低層をうろちょろしていても稼ぎも悪いし」と返し、ゆうじは「僕も構わない」とあっさりとした返事が返ってくる。
「てな訳なんで、さっそく行きましょう」
なんともウキウキとした様子で言うもんだと、そう思いながらも、背中を向けるひさしに俺は問いを投げつける。
「で、俺のポジションは決まったのか?」
「――――あっ」
今日、ポケモンの新作が発売する日ですよ!




