その日の帰り道 sideひさし
基盤固め。これを基にひさしの台詞周りを修正する予定。
「で、なに話していたの?」
「なんの話だよ」
これゃバレてたかと、そう思いつつも肩をすくめて誤魔化す。
ゆうは「ふぅ~ん」と声を発して、ジト目を俺にむける。
「それで誤魔化せると思っての? 正直に言うのなら今のうちよ」
「こっわ。リーダーを脅すとか酷いと思わないか、ゆうじ?」
後ろを歩くゆうじに顔をむけて声をかければ、呆れたため息が返ってくる。
「僕たちの付き合いがどれぐらいになると思ってるの。ひさしが隠し事してることぐらい分かるからね?」
「そっかー」
気心が知れている仲というのは、良くも悪くも隠し事ができない。
まっ、それも分かってたんだけどさ。
だからこそ、
「だけど、教えるつもりはない」
はっきりとそう断言してやれば、2人は諦めるように肩をすくめる。
その動きがあまりにもピッタリなもので、俺は声をあげて笑ってしまう。
――そのお返しがひざ蹴りというのは笑えなかったけど。
俺達がはじめて出会ったのはもう10年以上まえになるか。
いろんな事情で孤児院へとやってきた俺達はてんでバラバラの年齢でありながら、同時期に入ったということでつるむことになった。その繋がりだけが俺達を支えてくれたと言ってもいい。
誰だってそうだろ、慣れない環境ってやつは過度なストレスになる。
それも、まともな暮らしをしていたかどうかもわからない子供だ。安堵よりもさきに、次に待ち受ける恐怖に怯えていた。
だから必然と俺達は肩を抱き合うように寝て、輪をつくって遊び、食卓を囲む。
もちろん、ちゃんと与えられた仕事はした。配膳係りとか掃除とか色々。それでも、自然と引き寄せられるように俺達は集まり、1人でするような仕事も4人でした。
それが居心地が良かったし、落ち着くし、ずっとこのままでも良いのかなっておもっていた。
だけど、これは共依存にすぎない。だれか1人でも欠けてしまえば崩れる関係だ。
俺はそのことをあの時、強く痛感した。
あるときのことだ、ゆうが熱を患った。熱は38度を越えて40度に届きかねないぐらい高くなった。
体は火照り、汗だくで、荒い息が止まない。
辛うじて意識はあったけど、その姿は痛々しくて、どこかに行ってしまいそうな儚さがあった。
薬は与えた。医師にも見てもらった。治ると太鼓判も押してもらった。それでも、俺達の不安は消えなかった。
少しでも早くよくなるようにぬるくなったタオルを替えて、体を拭いて、つくったお粥を手ずから食べさせたりもした。
それでも、俺達にできるのはそれが限界だった。
最後にできるのは手を握って、声をかけ続けて、神に祈ることだけ。
――ゆうを亡くすかもしれない。
その事実は想像以上に辛くて、苦しくて、心がグチャグチャになる。それは俺だけじゃなく、他の2人も同じだったとおもう。
それぐらいゆうの、俺達の仲は深く、重かった。
「みんな、心配かけてごめん。ありがと」
翌朝、病状の落ち着いたゆうが、そっぽをむきながら恥ずかしげにお礼を言った。
たぶん、心の中ではうれしさや申し訳なさでいっぱいだったと思う。
それがわかるぐらいには俺達の仲は深まっていた。
その時の安堵や嬉しさは今でも覚えている。
となりを歩くゆうの頭をなでる。
「ッ!! きゅ、急になにするのよ!?」
「いや、無事で良かったなと思ってさ」
あの時の頑張りは無駄だったかもしれない。
だけど、そのお陰で俺達の仲はいっそう深まることになった。
――それこそ、心中しかねないほどに。




