秘密の一時
自ら生み出した矛盾に首をしめられることになるなんて!
無事に外へとでた俺達は待機組と換金組で別れた。
待機組はゆうじとゆう。換金組は俺とひさしだ。
もちろん、これは意図的な分断だ。話す機会がほしいという俺の要望に応える形でひさしがそうした。
俺達が連れだっていくのはダンジョン近くに作られた複合施設――冒険者ギルドと呼ばれる建物だ。
中には買取所の他に、飲食スペースや交番、武器・アイテムを販売する店などがある。
とくに買取所は利用者が多いため、入ってすぐの場所に設置されている。
俺は買取所に並ぶひさしと別れてある場所にむかった。
たどり着いたそこの看板に書かれていた店名は『個室貸し』。とてもシンプルな、ド直球な名前ではあるが、とてもわかりやすい。
カウンターへとやってきた俺は、受付に声をかける。
「すみません。個室お借りしたいんですが」
「はいはい。どのぐらい利用されますか?」
「とりあえず10分ほど」
「では、料金は1000円ほどとなります」
「これでお願いします」
料金ぴったり支払い、部屋番号付きのキーを受け取った俺は、タイミングよくやってきたひさしと合流して部屋を目指す。
「戻ってくるの早かったな」
「急いがないとバレるんで。まっ、バレてそうだけど」
「すまん。無理をいって」
「べつに謝んなくて良いですよ。気になることは誰にでもあると思うんで」
「助かる。っと、部屋に着いた」
一応あらためて番号を確認してから、ロックを解除して部屋の扉を開ける。
パッとつく灯り、どうやら人を検知して自動でつくようになってるらしい。
初めて見た部屋の中にはテーブル・イス・テレビ・ベットといったホテル思わせる設備が揃っていた。
さっそくイスに腰かけた俺は、対面に座るひさしに顔をむける。
「時間がないから単刀直入に聞くが、ただの仲間集めじゃないだろ」
「バレちゃいました?」
「の割には焦りがなさそうだけどな」
「まっ、実際その通りなんで。話がしたい、なんて言われた時点で察しないほうが難しいですよ」
「それもそうだな。で、それを俺に教えることって可能か?」
ひさしは「うーーん」と声を上げながら天井を見上げる。
「べつに深い理由のない、なんてことのない理由ですよ。隠すことでもないからぶっちゃけると俺達、孤児院出なんです」
「思ったより重いのきたな」
もっと軽いのからくると思ってたと返せば、笑いが返ってくる。
「俺らからしたら軽い話でも、他人から見たらそう見えますか」
「まぁ、それが普通だと思う」
「普通かぁ……」
伏し目がちに呟かれた言葉に、俺は地雷を踏んだかと焦る。
とっさに言葉を発しようとして、苦笑したひさしが先に口をひらく。
「ああ、気にしないでください、ふと思うことがあっただけなんで。だから――」
続く言葉は、ひさしの口元に添えられた人差し指によって語られた。
“これ以上は聞かないでほしい”
言外に語られた言葉に俺が応じるようにうなずけば、ひさしの口元から人差し指が離される。
「いやー、とっさにやっちゃったけど、気持ち悪くなかったですか?」
「まあ、気持ち悪くはなかったかな?」
かといって格好いいとも思わなかったが。
続く言葉を心のなかで吐露する。
それでも、気休めの言葉にひさしは頬をぽりぽりと掻きながら「恥ずいなー」と心情をこぼす。
「まっ、そんな訳で俺達は幼馴染みってやつなんですよ。4人だけの……だからかな、交友関係があまり広がらなくて。ちょっとばかし閉鎖的になってる。それが悪いとは思わないけど、それが良いとも思わない。だから俺は、この機会に思いきって新たに人をいれたんです。まっ、前途多難だけど」
困り顔で締めくくられた話に、俺は息を吐く。
「事情はわかった。俺に求められているのは戦力じゃなく、交友関係の切っ掛けづくりってわけだ」
「もちろん、戦力としても期待してるのは本当ですよ? うちのパーティー、前衛で偏ったとしても後衛のほうが強いんで」
「どれだけ強いんだよ、その後衛……」
思わず呆れのこもった声をもらす。
それも仕方ないとも思う。前衛が3人もいて、それに引けを取らないどころか上をいくなんて普通じゃない。
いったいどれだけの強さを持つのかと、出会うまえから体が震えそうだ。
「わかった。俺にもそれを手伝わせてくれ」
「助かります。具体的にどうするかはまた後で話しません?」
「時間も迫ってるしな」
時計をチラリと見てそう返し、互いに立ち上がる。
ひさしは何を言うでもなく手を差し出した。
俺もそれに応えるように手を伸ばし、手を結ぶ。
「これからよろしくお願いします」
「お互いにな」
難産やった……。ひさしのキャラが安定せいへん。後でテコ入れするかも。




